自由とは何なのか
15の夜を生んだ事件
「15の夜」は尾崎豊14歳の時のあるエピソードを元にしています。
「I LOVE YOU」「卒業」と並んで、尾崎豊の代名詞とも呼べるこの曲は、
友人の一人が、髪が長いという理由で教師から髪を刈られるという“事件”をきっかけに生まれました。
この“事件”に反発して、歌詞にもあるように「仲間たちと家出の計画を立てる」ことになったのです。
歌詞については後ほどご紹介していきますが、とても14歳の少年が作った歌とは思えない、強烈な印象を残す曲です。
多くの思春期の少年の心には何かに反発する気持ちが強いと思います。
その気持ちを14歳当時の尾崎豊という少年が的確に表現していることに驚かされます。
尾崎豊が音楽活動を通してメッセージテーマとしてきたのは「自由」です。
何にも縛られずに自由になりたい。でも自由というものが一体何なのかわからない。
だけど、暗い夜にバイクで疾走した時に自由になれた気がしたのではないでしょうか。
届かない空と届かない夢
何があるのかはわからない
落書きの教科書と外ばかり見てる俺
超高層ビルの上の空 届かない夢を見てる
出典: 15の夜/作詞:尾崎豊 作曲:尾崎豊
勉強をやる気もなく、落書きだらけの教科書の前で外ばかり見ている。
映像が思い浮かべられます。
こんな状況を経験したことがあるという方も多いのではないでしょうか。
小学生と違って、中学生になると“勉強”というものの義務感が強くなっていきます。同時に親や教師からの強制力も強くなり、これにやる気をなくすという気持ちはよくわかります。
超高層ビルに広がる空にいろいろな思いや夢を見ていたのでしょう。
そこに何があるのかはわからないけど、ここから飛び出したいという気持ちが伝わってきます。
気持ちのやり場も逃げ場もない
校舎の裏という逃げ場
やりばのない気持の扉破りたい
校舎の裏 煙草をふかして見つかれば逃げ場もない
出典: 15の夜/作詞:尾崎豊 作曲:尾崎豊
“やりばのない気持ち”とは、自由になりたい。何にも縛られたくない。という気持ちはあっても、それに対して具体的にどんなことをすればいいのかわからない。
仕方がないから校舎の裏で煙草をふかしてみるものの、見つかればまた逃げ場のない状況に追い込まれる。
とにかく自由になりたい。でも、中学生のできることというのは限られていますね。
自由になりたいという気持ちだけで自由になることはできないことには気が付いていたんだと思います。
そもそも自由というものがわからない状態ですから、「何かはわからないけど、逃げ出したい」そんな気持ちだったんだと思います。
自分という存在
心通わない大人たち
しゃがんでかたまり背を向けながら
心のひとつも解りあえない大人達をにらむ
そして仲間達は今夜家出の計画をたてる
とにかくもう学校や家には帰りたくない
自分の存在が何なのかさえ解らず震えている15の夜
出典: 15の夜/作詞:尾崎豊 作曲:尾崎豊
これは教師による“断髪事件”の前後なのでしょう。
路上でかたまり全身から敵意をむき出しにする尾崎豊と仲間たち。大人たちと心を通わせることができない。
そもそも、心を通わせることを拒否しているかのように思えます。
学校や家に帰ればまた縛られる日々が続いていく、だから家出の計画を立てて自由になろうとする。
でも、学校や家から逃げ出してはみたものの、学校や家からいなくなれば自分の存在そのものについて疑問が出てきます。
“自分の存在って何なのか?”