ここでアルバムタイトルの意味を考えてみましょう。リロードとは日本語で「更新、読み直し」を意味する言葉です。
本作は、これまでにリリースされた二つのアルバムの行間を埋めるような内容になっています。
それぞれの歌詞は、これまで描かれなかったキャラクターの内面をあらためて明かすかのよう。
しばらくカゲロウプロジェクトから遠ざかっていたファンは、これを機に前作を復習してみては?
より深く世界観にハマって楽しめるかもしれませんよ。
リード曲『アディショナルメモリー』に広がる情念の世界
こちらも先行公開されています。
この曲は、これまで曲としては表現されていなかったアヤノの恋心を描写しているようです。
アヤノの想い
彼女は、同級生のシンタローに好意を抱いており、想いを告げないまま自殺してしまいます。
少女らしい淡い想いと、もう決して叶わないと炎のような情念が入り混じり、なんとも言えない熱のこもった世界を作り出しています。
冒頭のピアノの演出とボーカロイドの声の軽妙さが、必要以上に重い印象を与えないのかもしれませんね。
想いを告げずにこの世を去ったことを、彼女はどのように思っていたのでしょうか。
アヤノの最期を思うと切なさで胸が締めつけられるようです。
『マイファニーウィークエンド』でヒヨリの魅力を再認識
こちらも今作の注目曲のひとつ。ヒロインでありながら曲でフォーカスされることの少なかった、ヒヨリを描いた楽曲も収録されています。
歌詞には彼女らしいワガママと年齢不相応な大人びた雰囲気がよく表れています。
思いつくままに 予定狂わせて
実際問題 ちょっと大胆なくらいが 正解ね
出典: マイファニーウィークエンド/作詞:じん(自然の敵P)作曲:じん(自然の敵P)
ヒヨリは評判の美少女ということもあって怖いものなし!
強気な言葉の数々がリズミカルに響き、ナマイキでもなんだかかわいく思えてきますね。
独創的なアレンジ
また、この曲はボーカロイドプロデューサーとして名高いsasakure.UKが編曲を担当していることもポイント。
sasakure.UKは打ち込みや変調、変拍子を得意としているプロデューサー。
近年では矢野顕子のツアーへの参加やジャズ・フュージョンプレイヤーとのバンド結成など、ボーカロイドに止まらない幅広く活躍しています。
素晴らしいアレンジにより、ボーカロイドならではの無機質さとサウンドの柔らかさなどが溶け合いクオリティの高い一曲に仕上がっています。
また、どことなく90年代を思わせるようなところがあり、ボーカロイドをあまり聞いたことがない方でも聴きやすい一曲に仕上がっていると思います。
ボーカロイド出身プロデューサーの活躍のめざましさ
ところで、最近ではレコード大賞アルバム賞を受賞した米津玄師はじめ、ボーカロイド出身プロデューサーのロックシーンでの活躍が目立ちます。
無機質かつ金属を思わせる音質とは裏腹に、内省的で重みのある歌詞が展開されているのも幅広い支持を集める理由の一つではないでしょうか。
間違いなく、ボーカロイド作品のヒットは今後の音楽会を引っ張るビッグウェーブといえます。
まだまだボーカロイドに偏見のある方もいるかもしれませんが、試しにこのアルバムを聴いてみてはいかがでしょうか?
傷をおった少年少女たちが壁にぶつかりながら生きて行く様が描かれ、ジュブナイルのような世界が広がります。
もちろん漫画やアニメを知らなくても、これまでの2作よりも特に悩みや怒りが濃く描かれ、楽曲単独で十分じんの世界を堪能できます。
「初回限定版A/B」のどちらを買う?
ファンなら初回限定特典も気になるところ。「初回限定版A版」はじん書き下ろしストーリーのオリジナル漫画が封入されています。
九ノ瀬遥というキャラクターがメカクシ団という仲間たちに対し、「友達とは何か」と尋ねて回るストーリーになっているんだとか。
作画は月刊コミックジーンにて「NIRVANA」を連載中の沙雪先生が担当しています。
こちらも見逃せない内容です!
「初回限定版B版」はなんと、じん自身の弾き語りによるアコースティックバージョン4曲入り。
「失想ワアド」「ロストデイアワー」「リマインドブルー」「忘れてしまった夏の終わりに」が収録されています。
曲はじん本人が相性を考えて選んだそう。
作者ご本人の歌声、気になりませんか?もしかしたら、よりダイレクトにキャラクターの心情やメッセージが伝わるかもしれませんね。
どちらを購入するか、ファンにとっては悩ましいところです。