主人公って誰?
どうだっていい言を 嘘って吐いて戻れない
時効なんてやってこない 奪ったように奪われて
今日だって叶わない 思ったように騙せない
腐っている僕には 腐ったものが理解らない
出典: ゴーストルール/作詞:DECO*27 作曲:DECO*27
まずは冒頭の歌詞から。主人公が一体どんな人物なのか綴られています。
…が、全く掴みどころがありません。非常に不思議な人物なのです。
ただ1つ言えるのは、あまり「いい奴」ではなさそう、ということ。
きっと主人公はつまらないことで嘘をつき続けてきたのでしょう。
しかしついてしまった嘘は、犯罪のように時効が存在していません。
つまり自分がしたこと=つまらない嘘は、いつまでも過去の過ちとして自分自身の首を絞め続ける、というわけです。
主人公は嘘をつくことにあまり抵抗感がないようです。
その証拠に、引用部分3文目のとおりいつだって相手を騙そうとしているのですから。
しかしこれは少し見方を変えると、主人公自身の苦しい胸の内が明かされた1文、とも考えられるのです。
嘘をつき続けて、もはやそれが当たり前になってしまった主人公。
罪の意識すらないように思えますが、実は嘘をつくたびに、自分自身の心を削っていたのでしょう。
それが限界を突破したとき。主人公は自分自身の心を騙すことができなくなってしまった。
つまり、嘘をつくという罪の重さに耐えられなくなってしまった、というわけです。
完全に出口を見失った主人公。フラフラと路頭に迷っている様子が描かれています。
そこにやってくる「誰か」
おいでココまで 捨てい
「隠して仕舞ったんだ」
出典: ゴーストルール/作詞:DECO*27 作曲:DECO*27
誰かを近くに呼び寄せていますね。一体誰なのか、ここでは詳しく述べられていません。
しかし呼び出しておきながら、「STAY」とその場に踏みとどまらせているのです。
おそらくこれも、主人公の心の内を描いた比喩表現なのではないでしょうか。
主人公はきっと、嘘を重ねて傷つけ過ぎた自分の心を、誰かに救ってほしかった。
だから「おいで」と近くへ呼び出したのです。
しかし直前になって、それをやめてしまった。
積み重ねた嘘の重さでいまにも潰れそうな、傷だらけの心を曝け出すことへの抵抗感。
ズタボロの格好悪い姿を見せることへの恥じらい。
そんな気持ちが、主人公が抱える本当の感情を心の奥底へと隠してしまいました。
抵抗感や恥じらいを感じる相手。
ここから推察すると、1度近くに呼び寄せた相手は主人公の好きな人、ではないでしょうか。
だからこそわかってほしかった。だからこそ隠しておきたかった。
どうにかしたいと願いながら、やはり出口が見つからない様子が描かれていますね。
そんな相手に課すルール
助けてほしいのに…
メーデー 僕と判っても
もう抱き締めなくて易々んだよ
メーデー 僕が解ったら
もう一度嘲笑ってくれるかな
出典: ゴーストルール/作詞:DECO*27 作曲:DECO*27
ここで繰り返し登場する「メーデー」という言葉。
一般的には5月1日の、労働者の祭典を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかしここでの意味は、「遭難信号」。つまり、「助けてくれ!」ということです。
おそらくこれ以前の歌詞で綴られていた相手に向けた、心の叫びがこの言葉なのでしょう。
さて、ここでその相手に訴えかけていることこそ、タイトルにある『ゴーストルール』。
ここでは2つのルールが述べられていますね。
そしてそのルールに共通しているのが、「わかる」という言葉。
しかし1つ目と2つ目で、使われている漢字は異なっています。
もちろんこれには、きちんと意味の違いがありますよ。
まず1つ目の「判る」。これは「判別」なんて熟語があるように、物事がそうだと判断されることを表します。
続けて2つ目の「解る」。こちらは「解明」なんて熟語から連想できるとおり、内容や意味を理解することを表すのです。
つまり、主人公の存在を認識しても抱き締めないでほしいこと。
そして、そうしてほしい理由に気がついたらバカにしてほしいことが『ゴーストルール』というわけです。
なんだか矛盾したルールですね…。
主人公には好きな人がいて、その人に心を曝け出そうとしていた。
しかし直前になってそれを取りやめ、こんなネガティブなルールまで課した…。
一体どんな理由があってこんな行動に及んだのでしょうか。
謎を解くカギは主人公の存在
この楽曲タイトルと合わせて想像するに、主人公自身の存在がすでに「マボロシ」なのでしょう。
つまり、彼はすでに死んでいるのではないでしょうか。
そして自分の死によって現世に取り残してしまった、大切な相手に申し訳なさを感じている。
どんなに好きな人のことを想っても、永遠に結ばれることがない悲劇。
それならいっそ、嫌いになりたい。嫌いになってほしい。そう願ったのではないでしょうか。
主人公がついてきた嘘の真実
これがわかると、最初に紹介した歌詞で主人公が積み重ねた嘘の内容も、なんとなく想像ができますね。
「ずっと一緒にいるよ」「この先も君を守るからね」「いつか結婚しようね」
実現できると信じてやまなかったこれらの言葉はすべて、いまでは嘘の塊になってしまった。
何度この言葉を言っただろう。なんど君にこの言葉を伝えただろう。
積み重ねすぎた愛の言葉が、死んだ主人公を今もなお苦しめていたのです。