時折、英語が顔を出すので大事なところは訳出しましょう。
文句はいわないでまずは「オレについて来い」と歌います。
湘南乃風の魅力を知る人は彼らのあとに続くでしょう。
リスナー自身が社会から逸脱することは難しいかもしれません。
それでも自由に生きる湘南乃風に勇気付けられるところが多いはずです。
自分には成し得ないことを軽々とやってのける彼らへの憧れ。
「オリジナル」「テロリスト」「メロディ」「テクニック」などはカタカナに置き換えるだけで十分です。
「ホットでナンバーワン」というのも語感だけでフィーリングを掴めるはずでしょう。
それにしても「テロリスト」というのは怖ろしい響きです。
しかし湘南乃風にテロ準備罪の容疑はかけられません。
何せ音楽の「テロリスト」であるからです。
人命を奪ってでも自分の意見を押し通すと歌っている訳ではありません。
音楽に自分の信念を投影してそれをリスナー相手にぶつけてみる。
それが音楽の「テロリスト」の姿です。
イカした「テクニック」はおそらくダブル・ミーニングでしょう。
OTOKAKEは上品なサイトですので深い解釈は書けません。
リスナーの想像力の羽ばたきにお任せいたします。
現代の「カミナリ族」
爆音鳴らすTuff Riders
破壊力まるで落雷だ
今宵もどっかで危ないDance
Tun Up!! Tun Up!! 4人の侍が
出典: WICKED & WILD/作詞:湘南乃風 作曲:湘南乃風
最後の「tun up」は超やばい、または最高にクールなどの意味を持つスラングです。
排気量の多いバイクは爆音がするもの。
リーダーのRED RICEのいかついバイクは彼のInstagramから覗くことができます。
こうしたバイク乗りたちを「カミナリ族」と呼んでいた時代もありました。
今は遠い昭和のお話です。
落雷とライダーをかけているところは指摘する方が野暮かもしれません。
湘南乃風の音楽はヒップホップやスカ、レゲエ、パンクがベースです。
しかしこれほどミクスチャーな音楽は珍しいです。
唯一無二といってもいいでしょう。
「ダンス」という要素にもこだわりがあるようです。
湘南乃風の音楽は自由に身体を揺すられる魔力があります。
危険思想に誘われて
不寛容な社会で窒息死
さぁ走れ ガチでマジなダチは段違いな危ない奴
あちらこちら始まりだす 恥じらいない乱痴気
パンチラインは間違いない 足りないなら掻っ食らいな
町々をアチアチ どっちみち上がりっ放し
出典: WICKED & WILD/作詞:湘南乃風 作曲:湘南乃風
かなり感覚に頼って作詞していますので自由速記法のような勢いがあります。
どこまでも「ライダー」であることのこだわりが歌詞に貫かれていることに気付くでしょう。
社会の周縁部にいる「ライダー」たちの姿が描かれます。
常識の枠内に囚われない仲間たちの姿。
本人たちも「危険思想」を抱くのですが、友だちまでもヤバい連中が揃っています。
爆音で街を走ってパーティーするスタイルは常識のタガを外さないとできないことでしょう。
この音は寝ている人に迷惑かななどと考えていたら音楽家はやってられません。
多少の迷惑には目を瞑ってもらうのですから、少し他人に甘えた側面もあることを指摘しておきます。
それでもこうした人々が繰り広げてくれる祝祭がなければ社会は息苦しいままです。
幼稚園や保育園の子どもたちが騒ぐことさえ許されない不寛容な社会では自由が窒息死します。
社会の周縁にいる人々こそがこの社会の基本的なテーマである自由を支えている姿は異様かもしれません。
「Fワード」より強烈な一言
オリジナル 超癖になる スタミナは無限だ
無敵な捨て身なステージは ノンブレーキの挑戦者
Sister & Brother行くぞ このまま
ブロックラー 湘南止まるか まだまだ
出典: WICKED & WILD/作詞:湘南乃風 作曲:湘南乃風
音楽活動とバイカーとしての生活をかけ合わせて湘南乃風の魅力を表現します。
「ブロックラー」とは「Blood Claat」という綴りです。
レゲエ・シーンでよく使われる言葉ですが英語でいう「Fワード」よりも強烈なもの。
糞ったれ野郎くらいの意味だと思っていただけるといいでしょう。
ただし侮蔑的な意味が鮮明な言葉ですので使うシーンを間違えると大変なことになります。
ブレーキをかけずに全力で走る姿とステージでのやんちゃぶりを同時に描いているのです。
バイカーでありミュージシャンであること。
どちらも社会の規範の中で生きることも可能です。
むしろそうした品行方正な方が圧倒的でしょう。
しかし湘南乃風はこうした風潮にも逆らって生きてゆきます。
社会の規範を疑え
一人でマジになって熱くなって
イライラしてたら嫌われた
ギラギラしてても笑われた
白々しくしれっとなんか出来ねぇ 不器用な生き方
他人は言う『イカれたわがままな奴』
でも暑苦しく 俺は俺らしく生きる
出典: WICKED & WILD/作詞:湘南乃風 作曲:湘南乃風
間にリフレインが挟まっています。
繰り返しになりますので掲載は割愛いたしました。
日本社会は熱意に対して冷酷です。
予定調和を壊されるのを何よりも気にしている社会でしょう。
集団行動に合わない人間は教育現場の段階で爪弾きにされます。
一度、外へ弾き出されると集団内に復帰することは難しいです。
爪弾きにされる方は社会そのものの規範を疑うようになります。
元々、社会規範というものは歴史によって揺れるような相対的なものです。
疑い出すとキリがなくなります。
そうした疑わしい基準に従うよりも自分の価値観を大切にして生きたい。
「WICKED & WILD」を貫くテーマはこうしたものです。
社会的な評価やレッテル貼りにも負けないで生きられる強い自分がいる。
熱意をもって生きる人を小馬鹿にする社会は復讐されて然るべきでしょう。
今ある社会に疑問を感じないで生きる人の方が「イカれてはいないか」。
狂人と呼ばれた側から果敢な反撃を開始するのです。