『No Sleep feat. G-k.i.d, YZERR & Tiji Jojo』
今回はBAD HOPの『No Sleep』という楽曲にスポットライトを当ててみます。
正式な名称は『No Sleep feat. G-k.i.d, YZERR & Tiji Jojo』です。
BAD HOPリスナーには常識かもしれませんが彼らの楽曲では参加するメンバーをこのように表記します。
つまり『No Sleep』はG-K.i.dとYZERR、そしてTiji Jojoの3名のマイクリレーで構成されているのです。
ミックステープアルバム『BAD HOP All Day Vol 2』に収録
『No Sleep feat. G-k.i.d, YZERR & Tiji Jojo』は2018年に発表された楽曲です。
ミックステープ形式のアルバム『BAD HOP All Day Vol 2』の最後に収録されています。
そう、BAD HOPの伝説の一夜、初の武道館公演の来場者に無料で配布されたアルバムです。
あまりの問い合わせの多さに急遽サブスク配信が解禁されたこの作品。
その際のキッズたちのはしゃぐ姿は感動的ですらありました。
ここから注目するのは『No Sleep feat. G-k.i.d, YZERR & Tiji Jojo』の歌詞です。
そこにはどのようなメッセージが込められているのでしょう?
一緒に彼らのディープな世界観を覗いてみようと思います。
動画サイトに公開されたシンプルすぎるMV
川崎の象徴としての池上町

No Sleep feat. G-k.i.d, YZERR & Tiji Jojo/BAD HOP
『No Sleep feat. G-k.i.d, YZERR & Tiji Jojo』にはYouTubeで公開されているMVがあります。
公開されたのは2018年10月29日。
BAD HOP初の武道館公演まで残り2週間というタイミングでした。
彼らの地元である川崎の産業道路に面して広がる池上町は多国籍住民が暮らす街として知られています。
その入り口が映し出されるのみのシンプルな画面構成はMVと呼ぶにはあまりにもシンプルです。
トラップビートに乗せられるのは抒情的なアコースティックギターのループ音。
3人はそのビートにシンクロするように寂しげな内面を吐露していくのです。
G-k.i.dのフックパート
休まずに毎日働くのはなぜ?
俺ら休まない
毎日働く
理想は霞まない
まだ夢の途中
欲しいものに手が
今は届く気が
疲れ目を擦る
だけど諦めない No Sleep
出典: No Sleep feat. G-k.i.d, YZERR & Tiji Jojo/作詞:G-k.i.d,YZERR,Tiji Jojo 作曲:不明
『No Sleep feat. G-k.i.d, YZERR & Tiji Jojo』の主題は「悔いのない人生」です。
まずはG-k.i.dによるフックパートの歌詞から見てみましょう。
フックとはポピュラーソングでいうところのサビにあたる部分です。
ここでは個性豊かなBAD HOPクルーに共通する価値観が表現されています。
曲名にもなっている、彼らが「眠れない日々」を過ごす動機についてです。
「悔いのない人生」を送るために彼らは休まずに働き続けます。
表現者という道を選択した彼らに労働時間という概念がないのです。
楽しいからやる、つまり仕事が遊びで遊びが仕事。
しかし楽しいこととラクなことは同義ではありません。
ゆっくりと眠りたいという欲求に耐え忍び、彼らは夜通し戦略を練り続けるのです。
暗い日々を超えて...
暗い日々を超えて
今は浴びるLight
自分が決めた道に弱音吐く気ない
掴むまでは俺らもがき眠れない 眠れない
出典: No Sleep feat. G-k.i.d, YZERR & Tiji Jojo/作詞:G-k.i.d,YZERR,Tiji Jojo 作曲:不明
ここでG-k.i.dが表現しているのは黒歴史ともいえる彼らの過去の体験です。
その暮らしぶりは彼らの過去の楽曲をお聴きいただければと思います。
日本のゲットーともいえる街での壮絶な少年時代を送ってきたBAD HOP。
今では武道館公演のチケットを即時完売させるほど大きな存在となっています。
しかし幼少時のトラウマのような生育環境は今も彼らを束縛するのです。
「そこから抜け出したい」
彼らを突き動かす原動力はそんな普通の暮らしへの憧れなのでしょう。