2006年に公開されたジブリ映画「ゲド戦記」の挿入歌
静かな歌声で孤独を抱える心を歌った「テルーの唄」。
少し前にはなりますが、テレビやメディアで聞いた記憶をお持ちの方も多いでしょう。
「ゲド戦記」は同じ名前の小説の第三巻「さいはての島へ」を原作としたジブリ映画です。
この映画も「テルーの唄」も当時とても話題になりました。
「テルーの唄」自体もCMでよく起用されていたことから、毎日のように聞いた人も多いでしょう。
主題歌「時の歌」よりも印象に残っている人も多いかもしれませんね。
同作のエンディングになったこの「時の歌」も手嶌葵さんが歌われています。
テルーについて
この唄を歌うテルーはこの映画のヒロインで顔にやけどの痕がある少女です。
両親に虐待され捨てられたという辛い過去を持っており、劇中ではテナーという女性の元で暮らしています。
この過去の経験からかなかなか他人に心を開こうとはしません。
心に闇を抱える主人公・アレンのことも最初は嫌っていました。
ですが彼にも辛い過去があったことを知り、少しずつ距離を縮めていきます。
彼女は人間ですが竜の化身という一面を持ち映画でも終盤その正体を現しました。
この曲を歌う手嶌葵さんはテルーの声優さんを務めています。
空から見る孤独
一人ぼっちの空
夕闇迫る雲の上
いつも一羽で飛んでいる
鷹はきっと悲しかろう
音も途絶えた風の中
空を掴んだその翼
休めることはできなくて
出典: テルーの唄/作詞:宮崎吾郎 作曲:谷山浩子
鷹や鷲は普段一羽で生活する鳥。
大空を悠々と舞っている姿は自由で雄大なイメージでしょう。
しかし、この唄は逆にたった一羽で飛んでいる姿から孤独を映し出しています。
しかも場面は夕暮れというのがより一層寂しさを際立たせているのでしょう。
夕日は美しくもありますが、これから夜が来るという寂しさを感じさせるものです。
この鷹は両親に愛されず孤独に生きてきたテルーと重なっているようにも思えますね。
鷹の気持ち
心を何にたとえよう
鷹のようなこの心
心を何にたとえよう
空を舞うよな悲しさを
出典: テルーの唄/作詞:宮崎吾郎 作曲:谷山浩子
誰からも愛してもらえなかったテルーの心。
それを一羽で空を駆ける鷹が抱く心と似たようなものがあると感じたのでしょう。
実際鷹が本当に「孤独で寂しい」と思っているかどうかは分かりません。
しかし、自分の抱える空虚な思いを具体的に表すとこうなるということなのですね。
人間は孤独や悩みを抱えると、周りにあるものから共通点や解消する答えを見つけようとするものです。
この歌詞もふと空を見上げた時に飛んでいた鷹から、自分との共通点を見出そうとしたのではないでしょうか。
雨の中孤独に咲く花
花も一人ぼっち
雨のそぼ降る岩陰に
いつも小さく咲いている
花はきっと切なかろう
色も霞んだ雨の中
薄桃色の花びらを
愛でてくれる手もなくて
出典: テルーの唄/作詞:宮崎吾郎 作曲:谷山浩子
二番では岩陰にひっそりと咲く花を歌っています。
緑や土、無骨な岩の色に淡いピンク色の花というのは小さくてもとても目立ちますね。
情景としてはその花がぽつんと寂しげに咲いている様を表しているのでしょう。
そのうえ視界も霞んでしまう雨は冷たくて物悲しい雰囲気です。
そんな寂しげに佇んでいるこの花を、やはり自分のいる立ち位置にたとえている様子。
自分の頭を優しく撫でてくれる手もなく、冷たい雨の中にいるしかないという状況なのでしょう。