aiko【透明ドロップ】歌詞を徹底解釈！世界の色が変わるほどの恋を失ったら…？こぼれ落ちる涙が切ない

忘れようとしても忘れられないのは、失恋から間もないからという理由だけではありません。

強いショックと彼の笑顔が結びつき、頭から離れなかったのです。

様々な記憶を呼び起こしてしまっている今、ひとりでいるはずの部屋に彼の気配を感じるのでしょう。

いつもと同じリズムで、いつもと同じ床の軋みを聴いたのかもしれません。

しかし彼の姿はないのです。

この歌詞の「誰」は彼ではなく、別の女性の存在としてとらえることもできます。

2人きりの時間に忍び寄る不穏な気配に気づいたのではないでしょうか。

「もう嫌い！」と言って様子を窺ったり、「私だけを見て」と泣きついて反応を待ってみたり。

自分だけを愛してくれていると分かるまで、確認をしていたのでしょう。

今は彼がどこを見ていようが、誰を見ていようが、彼女には咎める権利がありません。

彼の体温や声、言葉、息遣いは彼女の記憶の箱にしまってあります。

大切に閉じ込めておかなければならないということは、もう決して手に入らないのでしょう。

彼を忘れようとすればするほどその記憶は蘇り、現実ではなく「記憶」なのだと実感します。

こみ上げた感情は涙となって落ち、彼女の新しい一歩を妨げるかのように視界を歪ませました。

彼と見た景色と今見える景色の差に気づいた、という歌詞が繰り返されます。

思い出した鮮やかな景色と連動するように、彼の表情が浮かびました。

前の歌詞では、彼がここにいないのだということを痛感して涙を流しましたが、このセクションは違います。

彼女は彼の優しさを疑わず、ひたむきに愛していました。

それなのに、彼に裏切られたのです。

「手を繋いだ」相手は、別の女性なのでしょう。

その女性に向けた優しい表情を思い出して、泣いているのではないでしょうか。

2人が別れた原因が分かったのは曲の最後。

それまでは、彼を忘れようとする彼女の姿がひたすら描かれていました。

「時間が忘れさせてくれるよ」と肩を叩き、なだめてあげたい気分で聴いていましたが……。

最後の最後でまさかの結末。

「いつか忘れられるよ」という慰めがあまりにも軽く感じます。

時間が経っても決して透明にならない記憶もあるのかもしれない。

『透明ドロップ』は切なく、苦しい失恋ソングでした。

恋愛が成就しても、いつか訪れるかもしれない別れを想像して苦しくなってしまう。

そんな不安を吹き飛ばすほど強く愛することを歌った『愛の病』です。

親に、周囲に愛されて育ち、そしていつしか……。

『瞳』の歌詞は優しくて深くて心が暖かくなります。