優しさと悲しみを詰め込んだ命の歌「りんどう」

人気ロックバンドWANIMA「りんどう」が、2019年の秋についに音源化!

2ndアルバム「COMINATCHA!!」の収録曲になっています。

2018年のライブで初披露されてから、CDリリースされないままライブ限定曲となっていました。

優しくて、かつ心に染みるようなちょっぴり切ない曲です。

MVも、自然の中で歌うボーカルのKENTAさんが印象的な仕上がりになっています。

そもそもタイトルの「りんどう」は、聞き慣れない人も多いのではないでしょうか。

「りんどう」とは花の名前で、熊本県の県花にも指定されています。

熊本県といえば、WANIMAの3人の出身地。

故郷の花を歌っているのですね。

りんどうは一見可愛らしいお花なのですが、ちょっと切なく強い一面を持つ花でもあります。

その姿は、人の人生と重ね合わせることすらできるでしょう。

その一面こそが、「りんどう」という曲のテーマなのです。

りんどうの花を中心とした、優しくて儚い歌詞を見てみましょう。

ライブ限定で大切に歌われてきた理由が、この歌詞から少しづつ見えてきます。

幅広い人気を集めるWANIMAが、世間でいう少数派の人に向けたメッセージです。

彼らの人柄そのままに、まっすぐな思いの言葉がたくさん散りばめられています。

辛かった日々を乗り越えた経験があったからこそ、この名曲が生み出されたのでしょう。

多くの人たちの心を揺さぶったワンフレーズに注目してみてください。

野に咲く花のように

「りんどう」の歌詞は、少し物悲しい雰囲気があります。

しかしそんな孤独な環境の中で、必死に生きているのです。

人は誰でも、一人で生きていかなければならない時は人生で必ず来ます。

孤独な人生の先で、人は何を手に入れるのでしょうか。

時に流されながら

流れる時の早さに
身体を委ね 眺めてる
代わりの無い物語
引き返す事も出来ずに

出典: りんどう/作詞:KENTA 作曲:KENTA

冒頭は生きるとはどういうことなのか、自然を比喩にして表現しています。

川のように止まることのない時間の中を生きる。

その様を「身を委ねている」としているのでしょう。

時間という川の中では、誰一人として逆らうことはできないのです。

流れに身を任せながらその時々にあるモノを見ることが、生きるということなのかもしれません。

4行目の歌詞は、時間は戻らないということを表しているように思われます。

さらに自分の人生は自分だけのものであり、代わりはありません。

同時に川に流されながら見た景色は、自分だけにしか見えないもの。

同じ時間の中を流れていたとしても、そこで何を眺めていたのかは人それぞれです。

苦しいのをひたすら耐えて

込み上げる熱い想いも
胸に仕舞う凍り付いた夜も
指をくわえ 繋ぎ合わせ
過ぎるのを待っていた

出典: りんどう/作詞:KENTA 作曲:KENTA

人生色々な感情を感じる場面は必ずあります。

燃えるように熱くなる時もあれば、凍り付くくらい冷たくて辛い思いをした日もあるでしょう。

そうしたあまり心地良くない場面に出くわした時、どうしますか?

おそらく、内心は「早く終わらないかな」とひたすら終わるのを待っているのではないでしょうか。

自分で時間をいじって早く終わらせる、なんてことはできませんからね。

3行目の「繋ぎ合わせ」は、その場の対応を意味しているのかもしれません。

誠実な対応だったとしても、言い逃れだったとしても。

早く終ってほしいという気持ちに変わりはないでしょう。

この歌詞の部分は具体的な例を出さないことで、多くの人に共感できる内容になっています。 

学校での辛さ、仕事での辛さ、家庭での辛さなど、苦しい時は人それぞれです。

どうにもならず、ひたすら耐えるしかないときもあるでしょう。

こういう時の時間は、楽しい時の時間よりずっと何倍にも長く感じてしまいます。

そのままで良い

底知れない深い谷で
ぼんやり光ってる
祈りを削り刻んで
一つだけ… あともう少しだけ
弱いままで強くなれ

出典: りんどう/作詞:KENTA 作曲:KENTA

世間は底が見えない、真っ暗な谷のように暗いものです。

その中に、ほのかに輝くがあります。

自分が抱いている願いか希望か…はたまた命そのものでしょうか。

胸に自らの祈りを刻み込むことで、暗闇に紛れず輝き続けることができる。

今の自分はなんて弱い存在なんだと思うかもしれません。

弱いなら強くならなくちゃいけない、と思うでしょう。

ですが歌詞では、「弱いままで良い」と歌っています。

そう、弱い状態で強くなれば良いのです。

これだけだとあまりにも矛盾していて、「どういうこと?」と感じるかもしれません。

つまり「自分の弱みや短所を持ったまま、誇れる何かを持ちなさい」ということではないでしょうか。

単純に強くなると聞くと、短所なんかない完璧な人間とか、誰にも負けない人間を思い浮かべるでしょう。

しかしながら、そのような人は他人の気持ちを理解することなんてできません。

本当に強い人は、他人の弱さや辛さを分かってあげられる人のことです。

強くなるのは生き抜く上で大切なこと。

ですがそれ以上に弱い部分を無理に消そうとせず、そのまま他の部分で強くなる方がもっと重要です。

自然の中で美しく咲く花は、まさに弱いままで確かな強さを持っています。

風雨には逆らえずに翻弄されてしまいますが、地下ではしっかり根を張っているのです。

他からは見えなくても自分の中に誇れる何かがあれば、自分を失うことはありません。

足元が揺るがなければ、きっと内に秘めた思いは実を結びます。

そして弱い部分があったからこそ、しなやかで美しい花を咲かせることができるのです。

ひたすら生き抜く