「ハジマリノウタ~遠い空澄んで~」の言葉
いきものがかりの泣ける青春ソング
2009年12月23日発表、いきものがかりのメジャー通算4作目のアルバム「ハジマリノウタ」。
この曲の冒頭に据えられたタイトル・チューン「ハジマリノウタ~遠い空澄んで~」。
ピアノのコードストロークが印象的な楽曲でいきものがかりの泣ける名曲です。
山下穂尊による作品で1曲目に採用されたのは初めてのことでもあり感慨深い楽曲でしょう。
アルバム「ハジマリノウタ」はオリコン・アルバム・ランキングでは3週連続で1位を獲得しました。
いきものがかりの勢いが全開であふれだすアルバムですが、この楽曲はしっとりとして泣けます。
僕と君の風景。
青春の1ページの中で君が僕に贈ってくれたものは何なのか。
泣ける歌詞をゆっくり丁寧に紐解いていきましょう。
それでは実際の歌詞を見てください。
君から贈られた言葉とは
自分の人生を歩みたい僕
遠くに見えた街並み いつの日にか誓った景色と同じ
怯えて立てなくなっても 涙に滲む明日を教えてくれる
君からもらった言葉 僕の生きる意味を照らしてくれた
「もう少し強くなれたら…」なんて思ってみても仕方ないよ
出典: ハジマリノウタ~遠い空澄んで~/作詞:山下穂尊 作曲:山下穂尊
しっとりとしたピアノのコードストロークが切ない歌いだしです。
人生に悩んでいる頃に見た心象風景を丁寧に描いてゆきます。
語り手と今は遠い存在の街。
この光景は以前見た風景と同じと歌われます。
何かを誓って新しい生活を過ごしてきたのだけれども、悩み傷つき一周していたことに気付く瞬間です。
心の淵では何がしかの不安が到来してくることもあるよう。
そうした日々には将来も霧がかった世界にあります。
迷いというものが深いときにどんなものに語り手は頼るのでしょうか。
それが君の言葉だったようです。
かつて季節をともにした君から贈られた言葉と自分の人生を照らし合わせます。
今さら自分の弱さというものを変える必要はないと結論するのです。
それはできない約束でもあるからでしょう。
いつもの自分でないフリをしたところで語り手の僕が自身の人生を歩んだとはいえません。
とにかく僕らしい生き方をしてゆく中で人生の意義を捉えられたらいい。
語り手の僕の人生の向かい方は非常に正直なものなのです。
すべては「夢の途中」のこと
自分のペースで生きたい
「夢の途中」そう気付いたら なんだかちょっと楽になって
答えなど無くていいんだよ 僕の頬は少し朱に染まる
出典: ハジマリノウタ~遠い空澄んで~/作詞:山下穂尊 作曲:山下穂尊
どんな人も生きているうちは「夢の途中」を生きています。
山下穂尊の歌詞での夢は音楽家としていかに生きるかというテーマが多いです。
しかしこの曲では夢の内容は明示されません。
自分の歌を創るよりも多くの人とシェアできる歌を書こうとした結果でしょう。
リスナーである私たちは自分の夢をこの歌に投影することができます。
夢を叶えようと必死過ぎる日々では理想ばかり追い掛けて息苦しくなるばかりでしょう。
もっと長いスパンで理想と向かい合えるようになること。
ああ、今の人生は「夢の途中」なのだなと認識することで僕は自分のペースで生きられるようになります。
人生には最適解などない
これまでの僕はどこか人生に対して完璧主義的な側面があったのかもしれません。
人生というものに「答え」などの最適解があると信じ込んでいたようです。
理想主義・完璧主義で人生を送っていたらいつか破綻することは必至でしょう。
人生というものは僕ひとりで何とかできるものでもありません。
人生は社会というものと関わらずには成り立ちませんから、絶えず他者からの干渉で揺れます。
その揺れを楽しむことができるようになる人もいれば、自分の理想が崩れることに我慢できない人もいる。
これまでの僕はそのことに気付かずに潔白なほどに理想主義を貫いてきました。
しかしおそらくここで君から贈られた言葉の意味に気付いたのです。
人は皆「夢の途中」で人生には最適解などない。
君からの言葉にはっとさせられて僕は生きる希望を新たにします。
このラインの僕の頬に紅みが差すとは、生きる精気を取り戻したことを表しているのです。
余分な重荷を捨てることができた僕は新しい人生を歩んでいきます。