新しいジャンルを生んだ名盤『ひこうき雲』

フォークソングでもロックでも歌謡曲でもない音楽

松任谷由実「ベルベット・イースター」の意味とは?歌詞と共に解説!日曜日、いつもとは違う理由とはの画像

荒井由実の『ひこうき雲』がリリースされたのは1973年ですから、かなり昔のことです。

当時は制作者側もレコード店のどの棚に置いてもらえばよいのか困ったとか。

フォークソングでもなければ歌謡曲でもロックでもない新しい音楽をカテゴライズするのが難しかったのです。

そこで生まれたのが”ニュー・ミュージック”というジャンルで、それほど当時は新鮮な音楽だったのですね。

タイトル曲の「ひこうき雲」や「雨の街を」などと並んでこのアルバムの雰囲気を決定づける曲があります。

それが今回ご紹介する「ベルベット・イースター」なのです。

浮遊感のあるピアノのイントロ

少女の心情を描くユーミンのセンス

松任谷由実「ベルベット・イースター」の意味とは?歌詞と共に解説!日曜日、いつもとは違う理由とはの画像

この曲は浮遊感のあるピアノのイントロと出だしのメロディーですぐに歌の世界に引き込まれてしまいます。

窓辺で頬杖をつきながら、どこか憂鬱な曇り空を眺めている少女の姿が目に浮かぶようですね。

タイトルの「ベルベット・イースター」について考えてみましょう。

ベルベットとは柔らかくて肌触りの良い織物のことです。

ベルベット(英: velvet)は、平織か綾織の経糸にパイルを織り出したパイル織物の一種である。 ビロード(ポルトガル語: veludo、スペイン語: velludo)や天鵞絨(てんがじゅう)、とも呼ばれる。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/ベルベット

イースターとはキリストの復活を祝う復活祭のことで”日曜日”というキーワードはここからきています。

日本ではクリスマスハロウィンほど馴染みのあるお祭りではありませんね。

復活祭
基本的に「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」に祝われるため、年によって日付が変わる移動祝日である。日付は変わるものの、必ず日曜日に祝われる。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/復活祭

春分が過ぎた頃といえばまだ肌寒くぼんやりとした天気も多い季節です。

季節の変わり目のはっきりとしない天気は気分もどこかすっきりしないところがあります。

「ベルベット・イースター」はもちろんイースターというお祭りについて歌っているわけではありません。

ぼんやりとしたイースターの季節にまだ大人になりきれていない少女の心情を重ね合わせて歌っているのです。

曇り空も憂鬱なものではなく、彼女にとってはベルベットのような優しい手触りに感じられるのでしょう。

もしかしたらそうあってほしいと願っているだけなのかもしれませんね。

少女の心をイースターの季節の曇り空やベルベットという言葉を使って表現するセンス。

「イースター」に「ベルベット」をくっつけようとは普通は思いつかないでしょうね。

ところが曲名とメロディーは見事に結びつき、歌い出した瞬間にユーミンの世界が広がります。

こういうところにも彼女の才能を感じますね。

ベッドで目覚めた少女の想い

朝の訪れを知らせる雨のしずく

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ベルベット・イースター
小雨の朝
光るしずく 窓にいっぱい
ベルベット・イースター
むかえに来て
まだ眠いけどドアをたたいて

出典: ベルベット・イースター/作詞:荒井由実 作曲:荒井由実

雨は小雨でなくてはいけません。

それもしとしと降り続くのではなくて窓にしずくが残るくらいほんの少し降った雨でしょうね。

ベッドから見える朝の柔らかい光に照らされた雨のしずくがまどろむ彼女に朝の訪れを知らせるのです。

朝になったら元気にベッドから起き上がって背伸びをする女の子だと、この柔らかい世界には似合いません。

ゆっくりと目覚めた少女はもう少しベッドの中で物思いに沈んでいたいのです。

想像にふけるといったほうがいいかもしれません。

むかえに来てほしいのはいったい誰なのでしょう

まだ始まってもいない恋愛に登場する彼なのでしょうか。

夢見る彼女は恋をするにも少し早いような気がします。

空へ駆け上がるようなメロディー

イースターとどこか寂しい少女の心

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