I keep my love for you to myself...
眠りは麻薬
途方にくれた 心を静かに溶かす
舞い上がる 愛を踊らせて
震える身体を 記憶の薔薇に包む
I keep my love for you to myself
出典: ENDLESS RAIN/作詞:YOSHIKI 作曲:YOSHIKI
ここで冒頭に出てきた歌詞を思い浮かべてみましょう。
『ENDLESS RAIN』の主人公は傷ついた身体を降り注ぐ雨に晒していました。
そもそも彼の身体はなぜ傷だらけだったのでしょう?
そのキーワードは「薔薇の花」です。
花言葉が「愛」を表す反面、薔薇の花には鋭く尖った棘が隠されています。
心地よい眠りの中で愛する人の存在を感じてしまった主人公はその想いを断ち切ろうとするのです。
“俺は自分自身のために君を愛し続ける”
愛を断ち切ることで生じるのは負のエネルギー。
その苦しみを薔薇の棘に切り裂かれることに例えているのです。
主人公は自らを傷つけることでしか信念を貫くことができないと考えたのでしょう。
自身を傷つけるためだけに主人公は君を愛そうと考えました。
それは愛を使い捨ての道具のように扱う行為です。
利用された相手に生じる心の傷の深さまで主人公は考えていなかったのでしょうか?
つまり自分の体を棘のある薔薇で縛り付けることによって、彼は自分で自分を痛めつけているのです。
とんでもない自傷行為です。
その為ならば愛する人すらも巻き込んでしまうという凄い人であるのが分かるのでしょう。
因みに上記の“俺は自分自身のために君を愛し続ける”はかなりの意訳。
直訳は「俺は君への愛を胸に秘める」となります。
ここで用いられているのはkeep A to oneself (Aを口外しない、Aを胸に秘めておく)という意味のイディオムです。
主人公はこうやってどんどん自分の殻を作って現実世界との関わりを持たないようにしていきます。
そうしなければ自分自身を保てないほど追い詰められていたのではないでしょうか。
夢の中で君を求めて...
Day of joy,days of sadness slowly pass me by
As I try to hold you,you are vanishing before me
You're just an illusion
出典: ENDLESS RAIN/作詞:YOSHIKI 作曲:YOSHIKI
その疑問に応えるように展開されるのがサビの後に続くポエトリーリーディングです。
まずはその部分の和訳を見てみましょう。
“喜びに満ちた日々、そして悲しみに暮れた日々はゆっくりと過ぎ去っていく
この手で抱きしめようとするけど、君は俺の前から消え去ってしまうんだ
君はただの幻想なんだね”
朗読部の前半部を見ると作中のあるパートの歌詞との共通項が見えてきます。
2度目のAメロでの眠りに関する記述です。
この英文の素晴らしい所はdream(夢)という単語を使わずに主人公の夢の中を具体的に表現していることでしょう。
掴もうとしても消え去ってしまう、決して手に入らない幻想であることを上手く示すことで「夢」を表現しています。
夢というと、多くの歌では基本的に前向きかつ肯定的なものとして用いられることが多いのですが…。
ここでは否定的な意味です。
中々よく練られた立体感のある英文の構造ではないでしょうか。
砂漠に咲き誇る薔薇
When I'm awaken,my tears have dried in the sands of sleep
I'm a rose blooming in the desert
出典: ENDLESS RAIN/作詞:YOSHIKI 作曲:YOSHIKI
以下は後半部分の朗読部の和訳です。
“目が醒めると、砂のような眠りの中ですでに涙は枯れ果てていた
俺は沙漠に咲き誇る薔薇の花なんだ”
無意識下で主人公が求めていたのは君との安寧の日々でした。
しかし主人公にとってそんな暮らしは夢の中でも手に入れることができないものなのです。
自らの手で君を犠牲にしてしまったことへの悔恨の念に苛まされます。
夢の中ですべての涙を流し尽くした主人公。
その涙は水の一切ない沙漠に薔薇の花を咲かせるほどに膨大な量だったのです。
まるで「終わらない雨」のように...。
It's a dream,I'm in love with you
まどろみ抱きしめて
出典: ENDLESS RAIN/作詞:YOSHIKI 作曲:YOSHIKI
悲しみのあまりに涙も枯れ果てた主人公。
自らの手で捨て去ってしまった愛の本当の意味での大切さに気付いてしまったのです。
しかし時すでに遅し...。
これからの人生を後悔の念とともに生きていくしかないのです。
だからせめてもう一度夢で逢いたいと願いつつ夜毎眠りにつくのでしょう。
傷ついた身体を「終わらない雨」に晒し続けながら。
『終わらない雨』の正体が明らかになる
ギターソロの旋律が意図するのは?
I awake from my dream
I can't find my way without you
出典: ENDLESS RAIN/作詞:YOSHIKI 作曲:YOSHIKI
再度のサビの後、さらなる感情の爆発を表現するようなCメロが展開されます。
“俺は自らの夢から醒めて気付いた
君の存在なしでは自分の進む道さえも探すことがということに!”
その後に続くのは永遠に終わる事のないような美しい旋律で奏でられるギターソロです。
このギターソロはYOSHIKIの懇願を受けHIDEが作曲をしています。
このパートを任されたHIDEはCメロから次なる展開への橋渡しをするような旋律を生み出したのです。
爆発した感情は天高く舞い上がり空を自由に舞い踊り、遂には燃え尽きてしまいます。
自分が大切にしていたはずの「君」なくして主人公は決して前に進むことは出来ないといっているのです。
人間が何かを得るためには何かを捨てなければならないという「トレードオフの法則」が存在します。
しかしそれはどうしても必要な決断に迫られたときであって、中には捨ててはいけないものもあるのです。
ここ数年特に「断捨離」の重要性が叫ばれているせいか、あらゆるものを捨てることが推奨されています。
しかし、捨てればそれでいいのではなく、捨て去ったその後に対価として得るものがなければいけません。
その対価として得るものがないという絶望に主人公は気付いたのでしょう。