現実の世界では我慢をして、辛さや心の中にたまったうっぷんを声に出すことができない羊。

夢の中ではそのような苦しみから解放されて自由に言いたいことを言いながらのびのび過ごしています。

ここでは聞きたくないこともなければ自分の意見に反発する人もいません。

日頃の自分の想いを存分に口にすることができるのです。

このように現実では声を出せなくても、夢の中では自由に声を出して欲しいという米津玄師の祈りが込められているのでしょう。

現実の辛さも無い夢の中では、自由な世界が広がっていることがわかる一節です。

そしていつか夢のように現実でも声をあげられることを願っているのかもしれません。

価値観が同じ人と繋がる

君が望むなら その歌は
誰かの夢に繋がるだろう
あんな人には解らない
物語の裏 隠れたままそれじゃ
また明日

出典: ゆめうつつ/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

夢の中では普段は出会うことができない価値観が同じ人達と繋がることができます。

歌詞の「あんな人」というのは煌びやかな世界にいる価値観の違う人のことを指すのでしょう。

自分のことなんか全く知らない世界の人です。

世界は広く、誰にも目をかけて貰えないような裏の世界の人たちもいます。

メディアも報道しないような世界の人々はどう生きているのかさえ知られていません。

そんな煌びやかな表の世界から零れ落ちた人達は誰にも見つからないような場所で楽しく踊っているのです。

夢の中で楽しく過ごした後、彼らは目を覚まして暗い現実に戻ります。

夢と現実の反復によって、迷える羊は救いを求めることができるのでしょう。

最後のフレーズに注目してみてください。

夢の中がどんなに居心地が良くても明日はまた必ず現実の世界に戻ってこなければいけないことを示唆しています。

戻りたくない現実だとしても、夢の中にずっといることはできないのです。

ただ夢が人々の救いになっていることは間違いありません。

人間が眠る理由はつかの間の幸せを感じるためのようにも思えるフレーズですね。

ニュース報道

毎日辟易とするようなニュース

ゆめうつつで生きていく 一つずつ愛し合う
躊躇わず渡っていく 君の元へ
やるせなくて嫌んなる 面影は遠くなる
疲れたら言ってよ 話をしよう

出典: ゆめうつつ/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

この部分からは現実と夢の間で生きている現代人の姿が浮かんできますね。

毎日のニュースには辟易とするような嫌なものも目にします。

現実のニュースは黙っていても勝手に耳に入って来るので時折嫌になることもあるかもしれません。

ニュースを知ることで世の中の現実を知ると夢を無くし、子供の頃のピュアな面影も遠くなっていきます。

そうやって人々はだんだん声に出さない大人になっていくのでしょう。

ただもし嫌なことがあるなら全部吐き出して欲しいというのが米津玄師の願いです。

誰にもわからない心の傷

誰も知り得ない傷が 癒えずに増える
どうせいつかは 風に溶け消える
ならば 今夜くらいは

出典: ゆめうつつ/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

世界が分断されていく中で傷つき、誰にも言えずわかってもらえない迷える羊です。

その傷は時が経てば経つほど癒えずに増え続けてしまいます。

そしていつかその命も消えて亡くなります。

だからせめて夢の中では誰も傷つかない世界であって欲しいという想いが感じ取れるフレーズです。

生きているだけで知りたくないニュースや聞きたくない戯言が自分のもとへ飛び込んできます。

知らず知らずのうちに心がすり減って、暗い気持ちに引きずり込まれてしまいます。

夢の中ならばたとえ傷は癒えなくとも、心がすり減ることは避けられるでしょう。

再び夢の中

夢の中では身軽になれる

羽が生えるような身軽さが
君に宿り続けますように
むくれ顔の蛇も気づきはしない
日々の隙間でおやすみ

出典: ゆめうつつ/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

迷える羊には誰にもわかってもらえないようながどんどん増えていきます。

ですが夢の中では羽が生えるように身軽になって、受けた心の傷を癒すことができるのです。

そんな羽が生えたような状態がずっと続いてほしいという願いが込められています。

暗いニュースや翻弄される人々も自由な羊の姿には全く気付きません。

夢と現実の間で回復することができ、安心して休むことができます。

夢の中では子供のように無邪気に