6thアルバム「BOLERO」
5thアルバム「深海」との関連性
当時の雑誌インタビューで桜井和寿は「(『深海』と『BOLERO』)は3Dメガネの青と赤のようなもの。両方揃って初めて立体に見える」と述べた。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/BOLERO_(Mr.Childrenのアルバム)
「BOLERO」が発表された約8か月前リリースされた5thアルバム「深海」。
このふたつのアルバム「深海」と「BOLERO」は全く異なる様相のものとなっています。
収録曲も「深海」が陰だとしたら「BOLERO」は陽です。
そして、「深海」が桜井自らの内面世界の開放だとしたら。
「BORELO」はそんな内面世界を持っている自分が今生きている世界への問いかけと挑戦状。
ふたつの作品がまるで当時のミスチルと桜井を象徴するかのような作品です。
活動停止という充電期間を経て、今も人々の心に感動を贈り続けているミスチル。
彼らの転機ともいえるふたつのアルバムは切っても切れない表裏一体の2枚です。
表題曲「ボレロ」
アルバムの最後から2曲目に収録されている「ボレロ」。
恋の病に侵された心の様をボレロのリズムにのせて表現しています。
重苦しくも軽快で、熱い歌詞によって恋の病をリアルに描き出すのでしょう。
恋に溺れる高揚感と、溺れてはいけないと自分を抑制しようとする苦悩。
演奏が進むにつれて様々な楽器の音色が重なり合ってゆくのがボレロの特徴のひとつです。
単調な毎日の中で複雑に絡み合う情愛の感情はまるでボレロそのもの。
恋の苦悩からボレロを連想させ、歌詞を載せたのは天才的な桜井の感性といっても過言ではないでしょう。
それでは、歌詞を紐解いていってみましょう。
求めてやまない、恋
曲の始まりは静かに始まっていきます。
ピアノとパーカッションだけで刻むリズム。
恋の始まりと同じように、ただ好きという感情だけをボレロの演奏で表現しています。
その感情の中身がどんなものだとか、質量とかそんなことどうでもいいのです。
ひたすらに求めて止まない、欲して仕方がない。
今の自分を突き動かしているものは、行き場のない恋のエネルギーのみなのでしょう。
放熱できないエネルギーはやがては恋の苦悩となってさらに彼を蝕んでいきます。
恋の病
まるで病 もう神も仏もない
紛れもなく これが恋って言うもんです
出典: ボレロ/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
もう頭から相手の事が離れません。
寝ても覚めてもその人の事ばかりを考えているのです。
何をしていても、どこにいても、誰といてもその人の事ばかり。
思い出すほどに心臓をわしづかみにされているように苦しいのでしょう。
まさにそれが「恋の病」ってやつです。
神の手と呼ばれるほどの名医も治せません。
どんなに高価な薬でも、癒されるものではないのです。
本能が求めているんだ
心なんてもんの実体は 知らんけど
身体中が君を 求めてんだよ
出典: ボレロ/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
どのくらい好きかどうかの心の奥までは分からないのです。
ただ、君に恋をしている、恋しくて恋しくて君のどんな小さなかけらも持っていたいのでしょう。
気持ちというものは、重さも大きさも深さも測ることのできるものではありません。
本当のところの心の中は、自分自身でも知ったことではないのです。
もちろん、相手の心の中も見えません。
そこにあるのは、恋に恋しているひとりの人間。
全身で君を欲して苦悩している恋の病にかかったひとりの男がいるということなのです。