“事勿れ“とは昔の言葉で、相手の無事を祈る言葉です。

次のフレーズのおわりに、“おくんなまし“とありますが、これは花魁言葉でしょう。

江戸時代に遊郭で、花魁達が使っていた方言のような俗語です。

自分の音楽を安売りする主人公は、花魁のように喋ることで自分自身を売る遊女に例えているのでしょう。

蜻蛉は羽の長いトンボのような昆虫です。

昆虫に負けてしまうくらいの存在であるなら、いっそのこと忘れて欲しいといっているのではないでしょうか。

詮のないこととは、どうしようもなく報われないことを意味しています。

戯言に付き合っていられないよ、と主人公のやるせなさが伝わってくるのではないでしょうか。

言えないこと

大丈夫どれだけも吐いても
言葉は言い足りないし
どうしたんだいあんたにわかるかい
この憂いが

出典: 春ひさぎ/作詞:n-buna 作曲:n-buna

主人公に一貫して感じられる諦め感

いいから、と相手を許しているのと同時に仕方ないと諦めたのでしょう。

諦めはマイナスのことばかりではありません。

主人公の優しさも感じるのではないでしょうか。

相手も反省しているのか、主人公を気遣う様子を見せているようです。

あんたのせいで気分が沈んでいるけれどもういいよ、でも気にしてるのかい?

そんな軽妙な2人のやりとりが目に浮かんできます。

江戸時代のを体現しているような、軽さがいいですね。

泥棒である主人公は自分が自分に不誠実であるが故に、他人の不誠実に対しても寛容なのでしょう。

ある意味、良心的な人物像なのではないでしょうか。

またもや

どういうことなの?

玄関で愛を待ち惚け
囁く声で喘いで
後悔の悔を教えてほしいわ

出典: 春ひさぎ/作詞:n-buna 作曲:n-buna

この歌詞の世界観は、世の中を達観しているような印象を受けます。

誰もが、世の中こんなもんでしょ的に考えているような気がするのです。

それは悪いことではなく、だからこそ許しましょうというような明るさなのでしょう。

またもや、主人公は約束をすっぽかされているようです。

もしかして、恋のお相手はめちゃくちゃ素敵な女性なのかもしれません。

モテすぎて忙しい人だったりするかもしれませんね。

だから、主人公は忘れられてしまうのではないでしょうか。

主人公は、お相手に改めたことを教えてよと嘆いています。

語彙が怒っているような雰囲気に、“〜わ“となっているのがユーモラスな印象を受けるのではないでしょうか。

仕方ない

陽炎や 今日などどうか忘れておくんなまし
悲しい事無しの愛だけ歌っておくれ
終いは口付け一つが善いのも言わない方が増し
詮の無いことでも忘れられないわ
知りたくないわ

出典: 春ひさぎ/作詞:n-buna 作曲:n-buna

“陽炎“は先程の“蜻蛉“と違い、真夏の光の屈折現象を意味しています。

もやもやと地面に立ち上る陽炎。

そこに映る景色は幻想的なのではないでしょうか。

MVにも主人公に変化でてきます。

最初は軽快なステップで歩いていた男が、1つ目の巨人という化け物になっていくのです。

一体何があったのでしょう!?

そして徐々に、主人公の動きのベースがダンサーであることがわかってくるでしょう。

滑らかな動きが逆に不気味さを増しているのではないでしょうか。

主人公の感情がMAXになるにともなって、男の破壊衝動が盛り上がったのでしょう。

そのことを、1つ目の巨人という化け物の破壊行動で表現しているのではないでしょうか。

尋ねてみたい

マシなこと

陽炎や 今日などいつか忘れてしまうのでしょう?苦しいの
左様な躊躇いの一つが愛なら知らない方が増し
詮の無いことだって聞かせてもっと

出典: 春ひさぎ/作詞:n-buna 作曲:n-buna

主人公は、今度は陽炎に話しかけているようです。

泥棒の彼も、せつない想いに苦しんでいるのでしょう。

今日を忘れ去ってしまうのは、恋のお相手なのでしょうか。

相手に忘れられてしまうと考えると、とても辛いのだと思うのです。

意味のないことでもなんでも知りたいという、主人公の切なる願いが感じられるでしょう。

もしかしたら、恋に狂っていく主人公の感情が化け物へと変身させたのかもしれませんね。

現代では逆説的に、不誠実で無いと生きづらい世の中なのではないでしょうか。

泥棒の主人公は、繊細な心を守るため真実を知ることを拒否しているようにも思えます。

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