YUKIといえば!
さて今回ご紹介するのはYUKIの「長い夢」。YUKIといえばもう、わが青春のJUDY AND MARYがやはり印象深いですよ。
大キライだったそばかすをひとなでしてタメ息をついてた時代は、平成生まれの方はあまり触れていないであろうタテナガ8センチCDです。今や実物見たことない人もいるんだろうなぁ…くっ…
ソロになってからも15年経ちますから、本当に息が長いアーティストです。
そして冒頭にも書きましたが全然歳を取らない。昔からずっと可愛い。どうなってるんですかね。何食べてるのか知りたい。食べ物の問題じゃないか。
「長い夢」にまつわるエピソード
最愛の息子に捧げる歌
さてそんなわけで、今回ご紹介するこの「長い夢」ですが、本楽曲をご紹介するにあたり、まず避けられないエピソードがひとつあります。それは最愛の息子の死。
実は彼女の息子さん、2歳の誕生日を迎えることなく亡くなっています。前日まで元気だったのに朝起きたら亡くなっていたということで、何の心の準備もできない状態での突然の別れだったそうです。
その悲しみは到底想像することなどできませんが、そんな最愛の息子の「死」をきっかけに「産み出した」楽曲がこの「長い夢」なんです。
ちなみにこの楽曲、実は息子さんが亡くなる前に完成していたといいます。
その際のタイトルは「バイバイ」だったのですが、この出来事を受けてタイトルを変更し、歌詞も書き換え、レコーディングもし直したそうです。
PVをチェック!
おとぎ話の世界

そんな少し悲しいエピソードが元になっている本作品ですが、まずはPVをチェックしてみましょう。
観ていただいた通り、おとぎ話仕立てのアニメーションで構成されています。
ここではないどこか、ちょっと不思議な雰囲気のあるファンタジーな世界。
子供が好きそうな、かわいらしい世界が展開されています。絵もポップで可愛いんですが、セピアを中心とした配色で、登場する子供も動物も笑顔ではなくちょっと不安げな表情。
この絵に甘くて可愛いYUKIの声が乗ることで、ちょっとした違和感のようなものを観る側に与えてきます。楽しそうな世界だけれど、何故だかちょっと切ない。
YUKI自身も、亡き息子に捧げる歌だからといってわかりやすく悲しげに歌っているわけでもない。むしろ少し明るいぐらい。
悲しさを引き立てる表現手法として、敢えて「映像から得るちょっとした違和感」を。そして、声や歌い方の「明るさ」を取り入れてきた本楽曲。
根底に潜む「悲しみ」はしっかり感じられるのに、そこに真逆のフィルターをかけて魅せた表現力、構成力はさすがの一言です。
歌詞をチェック!
明るさに潜む切なさ
ベル鳴らしては 叫んで逃げた
強者の群れは 恐れをなしてた
蟻の行列を 潰し歩いた
鍵はいつでも すぐに失くした
出典: 長い夢/作詞:YUKI 作曲:蔦谷好位置
話しかけるような、優しい歌い方が印象的ですよね。
息子さんとの思い出なのでしょうか、聴き手にはわからない、もしかしたら二人だけにしかわからない思い出かもしれません。
フレーズのひとつひとつを丁寧に、大切に歌い上げているのがわかります。
淋しがりやは 誰だ?
手を叩いては 喜んでた
私達の間には 壁はもう 無いのよ
バイバイ長い夢
そこへ行くにはどうすればいいの?
迷子になるよ 道案内してね
出典: 長い夢/作詞:YUKI 作曲:蔦谷好位置
息子さんと過ごした日々が「長い夢」と解釈することもできますが、そこにサヨナラを告げつつも、そこに行くにはどうすればいいのか考えてしまう。
矛盾しているようにも思えますが、こういうことって往々にしてありますよね。
頭ではわかっていても、心が追いつかない。考えても仕方がないのに、考えずにはいられない。
そんなやりきれない切なさを感じ取れる一節です。