「いない子」の思いとは?
ロストワンの意味
この楽曲は、タイトルからすでにメッセージ性にあふれています。
まずは「ロストワン」という言葉の意味から見ていきましょう。
ロストワンとは、アダルトチルドレンという概念の一形態です。
機能不全家族で育った子どもが、自分を守るために取る行動について指摘されています。
ロスト・ワン(失われた子供、いない子)
目立たず静かにふるまい、普段はほとんど忘れられている。家族の人間関係から距離を取り、心を守るための行動である。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/アダルトチルドレン
アダルトチルドレンには他にも行動の特徴があります。
ですがこの曲で特に取り上げられているのは、「ロストワン」と呼ばれる行動です。
ロストワンは、内面まで空っぽなわけではないとされています。
むしろ彼らの内面は独創性で溢れており、他の子どもと何の違いもありません。
ただ単に、子どもの頃にそれを表現する自由を感じる機会がなかっただけです。
自分を抑えこむことが癖のようになってしまっています。
大人になっても心の傷を抱えたまま、周りと上手く溶け込めない人も多いのです。
この曲の主人公「僕」も、そんな大人の1人だろうと察することができます。
続いて「号哭」ですが、これは大声で泣き叫ぶことを意味する言葉です。
MVの中でも、主人公「僕」が顔を覆ったり、泣いたりする描写が見られます。
「僕」の葛藤
MVの中で、「僕」は学生服姿の少年として描かれています。
しかし実際の「僕」は、おそらく成人した大人でしょう。
歌詞が進むにつれ、過去を振り返っているようなフレーズが出てくるのが根拠です。
子どもらしく生きられなかった「僕」の内面は、学生のまま止まっている可能性があります。
良くも悪くも、子どもの頃の体験がその後の人間性を左右するものです。
「僕」は自分に足りないものに気づいています。
けれどそれをどうやって手に入れれば良いのか分からず、もがいているところかもしれません。
灰色の回想
不信も積もれば
刃渡り数センチの不信感が 挙句の果て静脈を刺しちゃって
病弱な愛が飛び出すもんで レスポールさえも凶器に変えてしまいました
ノーフィクション
出典: ロストワンの号哭/作詞:Neru 作曲:Neru
自分を信じられなくなると、途端に自己肯定感が低下していきます。
疑念の大きさはあまり関係がないのです。
疑念があること自体が問題になります。
「僕」は幼い頃からの癖で、疑念も不信も隠そうとしたのでしょうか。
それでも隠し切れず、自らを傷付けてからその存在に気付くこととなってしまいました。
ギターは本来、音楽を奏でるための道具。
それすらも暴力を振るう媒体になってしまう荒々しさが象徴されています。
明確な答え
数学と理科は好きですが 国語がどうもダメで嫌いでした
正しいのがどれが悩んでいりゃ どれも不正解というオチでした
出典: ロストワンの号哭/作詞:Neru 作曲:Neru
理系科目は、明確な答えがある教科だといわれることがあります。
対して文系科目、特に国語は明確な答えばかりとは限りません。
記述式の問題が多く、作文は回答者それぞれの正解が出てくるものです。
理系科目のように、決まった形の公式を使い、決まった形で答えが出るわけではありません。
ここから、「僕」の人となりが浮かび上がってきます。
自分で考えることが苦手なのです。
公式や、問題の解き方を覚えることは簡単だったのでしょう。
しかし、自分の考えを述べること、独自の思考を発展させることは難しかった。
それで国語の問題が解けず、苦手意識を持つに至ったと思われます。