「失くした1/2」とはどんな曲?
「失くした1/2」は尾崎豊の3枚目のアルバム「壊れた扉から」に含まれている曲で、A面の2曲目に位置する曲です。
実は筆者、尾崎豊がデビューするほんの少し前に見かけたことがあります。
その当時筆者は、夜はバンドマン昼は大学生という生活をしていて、たまたま大学の軽音コンサートの打ち合わせにペニーレインを訪れていた時に偶然尾崎豊を見かけたのです。
その時の尾崎豊は、ジーンズに白いワイシャツと飾り気のない姿でギターを持ってリハをしていました。
確か「15の夜」を歌っていたと思います。
CBSソニーに所属が決まった後、デビュー前にいろいろなところでミニコンサートをして、一般の反応を見ていたのだと思います。
一見した尾崎豊はごく普通の高校生のように見えましたが、歌い始めるといきなり爆発したようにシャウトし、狂気ともいえる雰囲気を漂わせていました。
このスタイルが若者を魅了し一気に人気が爆発したのです。
デビューアルバム「十七歳の地図」の後は、ちょっと間をあけて2枚目「回帰線」を発表しました。
この時尾崎豊は19歳でした。
3枚目のアルバム「壊れた扉から」は「回帰線」と同じ年に出されたアルバムで、当時は間を開けずにアルバム出すなんて勢いあるな~!と感心したものでした。
後で聞いた話ですが、10代のうちにもう一枚アルバムを作っておきたかったのだそうです。
確かにそのころの尾崎豊は10代の若者の気持ちを代弁しているというイメージでした。
「失くした1/2」はその10代最後に出したアルバムの中の曲なのです。
細かい説明は後ほどたっぷりと見ていただきたいですが、まずは実際の曲を聴いてみてください!
「失くした1/2」を聴いてみよう
まずはアルバムの1曲目「路上のルール」と2曲目の「失った1/2」を連続で聞いてみてください。
「失くした1/2」の歌詞を検証!
よく聞いてみると気が付くのですが、アルバム「壊れた扉から」はある共通したイメージに沿って作られています。
いわゆるアルバムのテーマってやつですが、大まかにとらえると、現在の自分への憤り、閉塞感、絶望感が中心となっています。
ただ、A面とB面では別シリーズみたいに分かれていますので、今回は「失くした1/2」が入っているA面を重点的に検証します。
尾崎豊の詞にある共通点とは?
尾崎豊が作る歌詞には一つの共通点があります。
それはある特定の言葉が頻繁に使われ、現状の閉塞感を表現しています。
どのような単語かファンの方なら気づいているでしょうが、「街」という言葉が繰り返し使われている場合が多いのです。
「失くした1/2」はどんな曲調か?
「失くした1/2」はこのアルバムの中でも特異な感じのする曲になっています。
A面に入っている曲を順番に並べると「路上のルール」、「失くした1/2」、「Forget-me-not」、「彼」、「米軍キャンプ」の5曲です。
これらの5曲のシチュエーションは時間帯によって分けられており、①夜→②夜明け→③朝→④昼過ぎから夕方→⑤夜という流れで作られています。
全体の曲調はやや暗く重めに作られていますが、「失くした1/2」だけは4分音符を強調したシャッフル風の曲で、明るく爽やかな曲調となっています。
「失くした1/2」には「街」がない?
さらに不思議なのは「失くした1/2」以外の歌詞には「街」が出てきますが、「失くした1/2」だけは「街」という言葉が使われていないのです。
つまりほかの曲は、過去から現在についての自分への憤り、閉塞感、絶望感を表現していますが、「失くした1/2」だけは現在から未来に向けての希望につなげるストーリーとなっているのです!