吹けば青嵐
言葉も飛ばしてしまえ
誰も何も言えぬほど
僕らを呑み込んでゆけ
出典: 又三郎/作詞:n-buna 作曲:n-buna
青嵐というのは、青葉のころに吹く、やや強めの風のことです。
青という字にさわやかさも感じられます。
その青嵐なら、上っ面の言葉で取り繕うだけのありきたりの日常を吹き飛ばしてくれるのでしょう。
誰かが文句を言いそうなものなら、それすらも吹き飛ばしてほしい。
今ある当たり前の生活を当たり前にせずに、全部ひっくり返してみせてほしい。
これはきっと、もやもやしたものをすべて一掃して、もう一度まっさらなところからやり直したい。
そんな社会の閉塞感全部を、突風のような存在に覆してほしいと切望しているのです。
できあがった社会全体を新しい秩序で組みなおせばいいじゃないかという思いがあるかもしれません。
童話の一節が巧みに曲に織り込まれて
どっどど どどうど
どっどど どどうど
どっどど どどうど
出典: 又三郎/作詞:n-buna 作曲:n-buna
不思議な歌詞ですが、これはそのまま宮沢賢治の『風の又三郎』に出てくる風の表現です。
そよそよした感じではなく、どどどっという激しい風が耳元をゆきすぎるのでしょう。
ちょっとしたさわやかな風ではなく、力を持った風の音が表されています。
童話の中でも印象的に使われている文章ですが、まさかこんな風に曲に組み込まれるとは。
100年前の文章をも今っぽく曲の中にまとめてしまうn-bunaの音楽センスを感じますね。
主人公にとって又三郎とはどんな存在か
2番は、出だしから少年同士のあどけないやりとりのようなシーンから始まります。
主人公と又三郎、ひょっとしたら友達のような存在なのでしょうか。
少年ぽさが感じられる出だしに、懐かしさも覚えて
風を呼ぶって本当なんだね
目を丸くした僕がそう聞いたから
ぶっきらぼうに貴方は言った
「何もかも思いのままだぜ」
出典: 又三郎/作詞:n-buna 作曲:n-buna
風を呼んでくれるなんて本当なんだね、と主人公が尋ねるシーンです。
目を丸くしたという表現から、なんだか少年のような主人公を思い描けます。
そんな彼のひとことに、相手もぶっきらぼうに応えるのです。
「そんなの朝飯前だよ」とでもいうような感じで、なんだか頼りがいのある友達に思えます。
まるでどこにでもいる少年と、ちょっと無骨でガキ大将チックな少年とのやりとりのよう。
社会を根底から変えてくれるような人は、気負わずひょうひょうとしているのかもしれません。
窮屈な世の中を変えたい、そんな思いが迫る
風を待っていたんだ
型に合った社会は
随分窮屈すぎるから
それじゃもっと酷い雨を
この気分も飛ばす風を
出典: 又三郎/作詞:n-buna 作曲:n-buna
「こうあるべき」を求められる社会はとても窮屈だと感じている主人公。
それを存在感ある誰かの力でぐるりと変えてほしいと望んでいます。
本当は徐々に窮屈な世の中が変わればいいと、他力本願で考えているのでしょう。
でもそんなゆっくりさでは世の中はちっとも変わらないこともわかっているのです。
それならもっとひどい雨を降らせてもいい。
雨風のようなインパクトで、窮屈さを吹き飛ばしてほしいのです。
風に飛ばしてほしいものがどんどん増えていく
2番のサビからは、主人公が青嵐に吹き飛ばしてもらいたいものが増えていきます。
世の中は変えてほしいけれど、もっとすべてが変わってしまってもいい、という切実な思いなのです。