夢のような人だから
夢のように消えるのです
その定めを知りながら
捲られてきた季節のページ
落ちては溶ける粉雪みたい
止まらない想い
愛さなくていいから
遠くで見守ってて
強がってるんだよ
でも繋がってたいんだよ
あなたがまだ好きだから
出典: http://j-lyric.net/artist/a000671/l019571.html
石神へのレクイエムがテーマとなっており、最愛の人は手に入らないから「夢のように消える」と表現しているのかもしれません。
石神は花岡が犯した行為を知りながら、手を貸している。
でも愛する想いは止まらない、という心情が直球に綴られています。
「愛さなくていいから」の以降は、素直な気持ちが比喩などを使わず、分かりやすい歌詞になっています。
分かりやすいからこそ、胸に熱くくるものが感じられます。
サビ「もっと泣けばよかった〜」
もっと泣けばよかった
もっと笑えばよかった
バカだなって言ってよ
気にするなって言ってよ
あなたに ただ逢いたくて
出典: http://j-lyric.net/artist/a000671/l019571.html
石神は本作で、花岡母子に手を貸すことになりますが、手を貸している間はほとんど会えなくなります。
アリバイを作るために、花岡母子に離れたところから指示を出します。
その時の逢いたいけど逢えない辛い心情が感じられる歌詞です。
2番「初めてでした これまでの日々」
初めてでした これまでの日々
間違ってないと思えたこと
陽だまりみたいな その笑顔
生きる道を照らしてくれました
心の雨に傘をくれたのは
あなたひとりだった…
出典: http://j-lyric.net/artist/a000671/l019571.html
石神が住んでいたアパートに、花岡母子が後から引っ越してきました。
引っ越しの挨拶に来た花岡母子が石神にとってはとても眩しく見えました。
その時、暗く沈んでいた石神の心に光が差し、生きる道を照らしてくれた心情を綴っているのだと思います。
まさに心の雨に傘をさしたのがこの花岡靖子だったというわけです。
手を貸す理由もそこに行き着くのですが、ネタバレに近くなってしまいますね。
2番サビ「同じ月の下で 同じ涙流した」
おなじ月の下で
おなじ涙流した
ダメなんだよって
離れたくないって
ただひとこと ただいえなくて
いつか生命の旅
終わるその時も
祈るでしょう
あなた憧れた
「あなた」であることを
その笑顔を 幸せを
同じ歌詞が続いて終わり
出典: http://j-lyric.net/artist/a000671/l019571.html
花岡に手を貸し、アリバイ作りのために大きな罪を背負った石神。
その心情が「同じ月の下で 同じ涙を流した」となり、その後の別れを思うと、離れたくないと一言だけ言いたかったのかと感じさせます。
石神の辛い想いが伝わってきます。
最後は最愛の人の「憧れ」のまま、「幸せに」と祈っているようです。
「献身」の在り方
献身の意味とは
献身とは言葉の通り、自分の身を捧げて大切なものに尽くそうとする行為です。
石神にとっては花岡への行動がまさに献身と呼べるものでした。
自分自身が罪を犯し、相手の為に力を尽くそうとする。
まさに自分の持つもの全てを投げ打ち、大切だと思う相手からの好意すら犠牲にして。
相手の姿を見ることさえできない状況になっていく石神。
しかし留置場で天井に四色問題を描く石神は幸福にさえ見えました。
献身の本質。
それは本当に愛するものに対して自分を投げ打つことはその人にとっては不幸ではない。
むしろ幸福なことなのだと感じられることなのでしょう。
それは、端から見れば愚かな行為にも見えます。
だからこそ慈しむ鎮魂歌のような歌として「最愛」が歌われたのです。
「容疑者xの献身」というタイトル。
これは物語そのものの本質を指したタイトルだと言えるでしょう。
物語の、そして事件のトリックの核となるのが「献身」なのですから。
「献身」と「最愛」。
このふたつのタイトルはまさに、この物語を動かしていった感情を示しているものだといえるでしょう。
四色問題
「容疑者xの献身」の物語の中に、「四色問題」という数学の問題が登場します。
これはあらゆる隣り合った図形を塗り分ける時、四色あれば全て塗り分けることができるか否か、というものです。
現在ではコンピューターを使って解析され、可能であることが証明されています。
しかし石神はその証明が「美しくない」として四色問題の研究を続けているのです。
この問題では重要なルールがあります。
それが「隣り合った色は同じになってはいけない」ということ。
隣同士を同じ色で塗ることはできないのです。
石神はその言葉をつぶやきながら、留置場の天井を見つめます。
その染みを結んで図形を作り、それを塗り分けていく石神の空想。
そのシーンは美しく、けれど切ないものでした。
石神と花岡親子は「隣人」です。
隣同士は同じ色になることはできない。
あたかもその問題を表現するかのごとく、石神は自分を犯罪者という色で塗りつぶします。
最初に罪を犯したのは花岡母子。
そしてそれを守ろうとして大きな罪を犯した石神もまた「同じ色」となってしまったのです。
同じ色である以上、隣にいることはできない。
それでも大切な親子を守ることができるのなら、そばにいられなくてもかまわない…。
石神はそんなことを思いながら、空想の四色問題を描いていたのかもしれません。
花岡母子を守るために自分が犯罪者となり、罪の全てを背負う。
大切な人の隣にはもういることができないとしても。
自分がどんなに苦しい目に遭ったとしても。
ただただ、大切な人たちの幸せを願う。
そんな切ない決意が、四色問題というモチーフには隠されていたのです。
石神という男
そんな石神という男。
学生時代は湯川が一目置く程の頭脳の持ち主でした。
しかし研究者の道に進むことは叶わず、しがない高校の数学教諭という道を選ぶこととなります。
自分が愛した数学を教えても真面目に学ぼうとしない生徒たち。
自分が生きている意味を見失い、まさに自ら死を選ぼうとしていたときに現れたのが花岡母子でした。
石神の人生を救ってくれた存在。
石神にとって花岡母子はまさに日だまりのような暖かさ、雨の中の傘。
そんな存在だったのでしょう。
救ってくれたからこそ、自分の人生を投げ打って相手に尽くしても惜しくはない。
それを依存と呼ぶ人もいるかもしれません。
ですがこの思いは信仰に近いもののように感じられます。
元来、石神は「美しいもの」を愛する面があります。
数学の四色問題の美しい解を求めるように。
美しく、正しい生き方をしてきた花岡母子の存在は、石神にとってどうしても守りたいものだったのではないでしょうか。
湯川と並ぶほどの天才でありながら、研究者として何も残すことができなかった石神。
そんな石神が自分の人生をかけても守りたいと願ったもの。
それこそが花岡母子という美しく正しい存在だったのです。