“すばる”の素敵な響き
星を眺めて何を想う?
プレアデス星団。動詞「すばる(統ばる)」に由来して「すばる」といい、枕草子にも見られる。同じ星団を指す漢字「昴」をあてる。別名、六連星(むつらぼし)。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/昴
“すばる”という日本語の響きが素敵でいいですね。
夜空に輝く星や星座を眺めて人は様々なことを考えていたでしょう。
ある人は星に願いを込め、またある人は辛い現実を忘れたくて星を見上げていたのかもしれません。
谷村新司が歌い上げる「昴」の主人公は、何を想って夜空を眺めていたのでしょうか。
その理由を考える前に、この曲を語る上で欠かせないアリスについても触れてみたいと思います。
個性的なメンバーが揃ったアリス
谷村新司の愛称は“チンペイ”
ギター&ボーカルのチンペイとベーヤン、そしてドラムのキンちゃん。
3人の個性的なメンバーが揃ったアリスのリーダー、谷村新司は“チンペイ”の愛称で親しまれていました。
軽妙なトークでラジオのDJとしても人気だった彼は、“歌の上手い隣のお兄ちゃん”的な雰囲気があったのです。
ソロとして成功してからの落ち着いた姿からは想像もつかないだろうと思います。
アリスがブレイクしたのは、まず谷村新司と堀内孝雄というソロでも通用する2人の歌唱力があったからです。
さらに彼らはソングライターとしても優れていて、「冬の稲妻」など数々のヒット曲を生み出しました。
アリスのジャンルは?
今ならJポップで一括りにされそうですが、アリスはいったいどのジャンルなのか迷うところがあります。
フォークソング・ポップス・ロック、或いは歌謡曲なのでしょうか。
そんな分類に迷う多様性も、彼らの特徴のひとつだったのです。
谷村新司がグループ在籍中の80年にヒットさせた「昴」は、強いて言えば歌謡曲路線かもしれません。
しかし、この曲にはそれまでのアリスの作品には感じられないスケールの大きさがありました。
孤独が漂う歌い出し
荒野を前に退路を断つ
目を閉じて何も見えず 哀しくて目を開ければ
荒野に向かう道より 他に見えるものはなし
出典: 昴 -すばる-/作詞:谷村新司 作曲:谷村新司
最初は後半の盛り上がりに向けて、谷村新司らしい低い声で始まります。
迫力があって少し割れたようにも聞こえるのが、低いパートを歌う時の彼の特徴でもあるのです。
歌い出しの歌詞には既に孤独が漂っています。
目を閉じたのはこれから先どうするべきか、どこへ行けばいいのか自分自身にも分からないからでしょう。
答えが出ないまま開いた目の先には誰もいない荒野が広がっています。
しかし主人公は前に進むしかありません。
最後を“なし”と結ぶことで彼は退路を断ったのです。
バックに流れる優しいアコースティックギターのアルペジオにも、孤独が漂っているような気がします。