進展しないこの時間が無駄であると悟った主人公。
“別れを告げることも大変なのだから、いっそ相手から別れを告げてほしい。”
いよいよ相手を見切った気持ちになっています。
あんな約束 もう忘れたよ 指輪も返すから 私のこころ返して
I have to go without you
出典: Movin'on without you /作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
約束、指輪と幸せな思い出を思い出しつつも、それらと断ち切りたい主人公。
PHSがあってもつながりにくい時代だからこそ、指輪というモノでのつながりに今より価値を置いていたかもしれません。
でも、もうその指輪もいらないという主人公の強い決意を感じさせます。
にも関わらず、私のこころを返してほしいともいっています。
まだ気持ちは相手にある、つまりはまだ好きであることを自ら認めていますね。
本心は…
とまどいながらでも いいから 愛してほしい
そんなこと言わなくても わかってほしいのに
出典: Movin'on without you /作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
相手に対して自分の気持ちをぶつけてきた主人公が唯一素直な願望を相手に伝えています。
相手に惑わされたくない、もう別れたいといった強気な言葉がたくさん散りばめられていました。
なのに、結局出てきた本心は「愛してほしい」。
頭で考えていることや言葉で伝えていることと、心の中で願っていることは違うことが切ないですね。
そして、切なくなっていることに1番戸惑っているのは、何より主人公自身。
自分から別れを切り出すつもりでいたのに、本当に伝えたいことに自分で気づいてしまったのです。
でも、伝える勇気は怖くて持てない。
言わなくても分かってほしいという歌詞が、傷つくことが怖い幼さ残る女の子のわがままさを感じさせます。
いいオンナを演じる真意とは?
くやしいから 私から別れてあげる
いいオンナ演じるのも 楽じゃないよね
出典: Movin'on without you /作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
主人公は、くやしいから別れてあげるといっています。
決して本心から嫌いになったわけではないことを、自分でも痛いほど認識しているのです。
PHSを使いこなせれば恋愛を楽しむ余裕が持てると思っていたのに、逆にPHSによって相手に振りまわされている自分。
相手より自分の方が好きになっている自分。
そして、相手から別れを切り出されることを何より恐れている自分。
それらの自分を隠すために、いいオンナを演じて別れを告げようとしているのでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか? 約20年前の宇多田ヒカルの歌詞をどのように感じましたか?
恋人からの電話を夜中まで待つなんてことは、最近ではあまりないのではないでしょうか。
でも、どんなにSNSが発達しても、自分の気持ちは伝えなければ伝わらないですし、人の気持ちを正確に読み取ることはできません。
私ばかりが好き、会いたい気持ちを素直に伝えられない、別れたくないけど別れたい…。
恋をすると抱える葛藤や矛盾、気持ちの余裕のなさはいつの時代も同じだと感じる歌詞でした。
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Automatic
今回の記事でも紹介しました、宇多田ヒカルのデビュー曲です。
「Movin'on without you」で気になった方は、まず「Automatic」を聞いてほしいです。
この曲がデビュー曲だという彼女の非凡さを感じることができます。いつ聞いても斬新。
歌詞について解説されている記事になります。
宇多田ヒカル「Automatic」の歌詞を紐解く - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
国民的歌姫、宇多田ヒカル。2016年には活動再開し、さらに進化した表現力と才能で見事復活しました。今回はデビューシングルで大ヒット曲「Automatic」の歌詞を解説しながら、彼女の人を惹き付ける才能と魅力について紹介します。