会えると信じ生きてゆく

出典: 涙そうそう/作詞:森山 良子 作曲:BEGIN

兄を失ったとき、彼女は生きる希望も失ってしまったのかもしれません。

身内の死は何よりも大きなショックを受けるといわれています。

まして、いつも一緒にいた大切な兄であり、辛い時も支え合ってきたはずです。

いつか兄にまた会える、彼女はそのことを励みに今を生きているのではないでしょうか。

涙が止まらない

想い出は色褪せるもの

晴れ渡る日も 雨の日も
浮かぶあの笑顔
想い出遠くあせても
さみしくて恋しくて 君への想い涙そうそう
会いたくて会いたくてて 君への想い涙そうそう

出典: 涙そうそう/作詞:森山 良子 作曲:BEGIN

晴れと雨は天候のことを指すと共に、彼女の心模様を指しています。

天候を歌詞に織り交ぜることで、日々がどんどん移ろっていくことを感じるのではないでしょうか。

また彼女の感情も、山あり谷ありという具合に色々あるようです。

この歌を聴くと、森山良子がいかに苦労を重ねてきたのかを感じます。

いつも笑顔で人前に立つ彼女ですが、人生においては色々な辛い思いもしたはずです。

彼女の笑顔は、兄である森山晋(もりやましん)と共に作り上げて来たものなのでしょう。

そして、歌詞にもあるようにどんなに大切な想い出でも時間がたてば色褪せるものです。

想い出が色褪せる…、甘く切なく心に響いてくるフレーズではないでしょうか。

兄にもう一度会いたい

彼女が上手くいっている時も、落ちこんでいる時も心に浮かぶのは兄の笑顔です。

きっと兄は彼女を笑顔で励ましていたのでしょう。

彼女のめっくたアルバムも、想い出のようにあせていたのかもしれません。

薄くなりかけた写真に、消えていく時間が重なります。

しかし、過ぎていく時間が兄との想い出を遠いものにしてしまっても、兄を失った悲しみは消えません。

兄の笑顔が恋しくて、とても会いたいという想いが伝わってきます。

今でも兄を想うと涙が勝手に流れてくるのです。

彼女が兄を想い涙することで、兄はずっと彼女の心の中に生き続けています。

この歌は彼女の兄が見守っているかのような、どこか温かい気持ちになる歌です。

この曲との出会いが森山良子の人生も変えた

「涙そうそう」は森山良子?BEGIN?誰の曲?名曲の誕生秘話は?!カラオケ定番曲の歌詞の意味に迫る!の画像

森山良子自身がこの曲について、心の奥深いところに仕舞っていた兄への想いを、一気に綴った、と語っています。

自分の内に閉じ込めていた感情を歌詞にすることで、とりとめのない想いを言葉にすることができ、心の中が整理されたということです。

そして、もしこの曲に出会うことがなかったら兄への想いはいつまでも未消化で自身の内にあったのではないか、偶然ではない必然の出会いが、この曲を生んだということを語っています。

この曲との出会いによって、森山良子は2002年の第44回日本レコード大賞 最優秀歌唱賞、作詩賞、金賞、の3冠を達成しています。

また、2006年の第48回日本レコード大賞でも「涙そうそう」が特別賞を受賞。

さらに2008年には、日本の芸術文化への貢献が認められ紫綬褒章(しじゅほうしょう)が贈られています。

森山良子の想いはBEGINへ・・・

人のつながり

「涙そうそう」は森山良子?BEGIN?誰の曲?名曲の誕生秘話は?!カラオケ定番曲の歌詞の意味に迫る!の画像

BEGINメンバーは、ボーカル・ギターの比嘉 栄昇(ひが えいしょう)、ギター・コーラスの島袋 優(しまぶくろ まさる)、電子ピアノ・コーラスの上地 等(うえち ひとし)の3人。

BEGIN自身はこの「涙そうそう」を18枚目のシングルとして2000年3月23日に発売。2002年6月26日には、『島人ぬ宝(しまんちゅぬたから)』とのカップリングでカセットテープとしても発売しています。

タイトルの「島人」とは沖縄の言葉で沖縄の人々を意味し、「沖縄の人々の宝」という意味です。ちなみに、この歌の中で「宝」は1番では空、2番では海、3番では歌とそれぞれ歌われています。

そして、夏川りみへと受け継がれた

この曲がさらに世に広まるきっかけとなったのはBEGINと同郷の夏川りみが「涙そうそう」をカバーしたことからでした。

夏川りみは沖縄県石垣市出身。一度、別の名前でデビューした後、1999年5月に夏川りみとして再デビュー。1999年に「夕映えにゆれて」を発表しましたが、しばらくはヒット曲には恵まれませんでした。

そんな中、2000年7月21日~23日、名護市の万国津梁館(ばんこくしんりょうかん)で開催された沖縄サミット(第26回主要国首脳会議)のテレビ中継でBEGINがこの曲を演奏しているのを観て、自分も歌いたいとBEGINに直訴したということです。

BEGINは夏川にいったんは別の曲「あなたの風」を提供するのですが、夏川の熱いリクエストに応えてとうとう「涙そうそう」を夏川りみのカバー曲として発表することが決まりました。

当初、BEGINが夏川りみが歌った歌に「それじゃ想いが伝わらない」と苦言を呈した話は有名です。

BEGINはこの歌への森山良子の想いをしっかり伝え、突然の不整脈でこの世をさった兄のことを教えました。

その思いを夏川りみが受け止め、完成したのが「涙そうそう」なのです。

人を想う心がしっかりと受け継がれていった歌、といえるのではないでしょうか。

そして伝説となって日本を代表する楽曲に

夏川りみの「涙そうそう」は各賞を総なめに