個性とミスiD
後ほどご紹介しますが、この曲は「個性的で何が悪い」という主張で、出る杭が打たれる日本に疑問を呈する歌詞になっています。
個性的な面々が受賞してきたミスiDにピッタリの曲だと思います!
大森靖子も「出る杭」として活躍してきた女性シンガーソングライターですから、この曲に共感したのでしょう。
それでは歌詞を見ていきます。
個性を失わせる社会
人が溢れた交差点を
どこへ行く?(押し流され)
似たような服を着て
似たような表情で…
群れの中に紛れるように
歩いてる(疑わずに)
誰かと違うことに
何をためらうのだろう
出典: サイレントマジョリティー/ 作詞:秋元康 作曲:バグベア
Aメロで切り取られるのは日本人の一般的な姿。みんな社会に出れば同じ服を着て、目立たぬように生きていきます。
目立てば後ろ指を指されて陰口を言われるのが、今の日本です。それで君は満足なのか?そんなふうにこの曲は始まっていきます。
社会をつくる大人たち
先行く人が振り返り
列を乱すなと
ルールを説くけど
その目は死んでいる
出典: サイレントマジョリティー/ 作詞:秋元康 作曲:バグベア
日本はなぜこうなってしまったのか。秋元康は年長者にその原因を見ています。ここで想定される「先行く人」は教師や上司でしょう。
教育や社会が、若者をみんな同じにしているんだと主張するのです。
教育は失敗し続けてきた
ここまでの主張とほぼ同じことを1989年に発表した人たちがいます。ロンドンの至宝ピンク・フロイドです。
彼らが1973年に発売したアルバム『狂気』は、マイケルジャクソンに次いで歴代世界2位の売り上げを誇るアルバムだと言われています。
教育なんていらない!と子供たちに叫ばせる大人
ほんとうに怖いMVです。前半では授業中に詩を書いていた生徒を、教師がバカにしています。
「こいつ詩なんて書いてるぞ!詩人だな!」そういって生徒の書いた詩を読み上げます。
そして2:30~あたりで生徒たちは個性的な目鼻立ちを失い、どんどん見分けが付かなくなっていきます。
歌詞は以下のようなことを言っています。
We don’t need no education
We don't need no thought control
No dark sarcasm in the classroom
Teachers leave them kids alone
出典: Another Brick in the Wall(Part.II)/作詞:Roger Waters 作曲:Roger Waters
「僕たちは教育なんていらない。僕たちの思想を変えないで。教室で暗い皮肉なんて聞きたくない。先生、子供をほっといて。」
こんなことを子供に歌わせる強烈さが、秋元康と欅坂46の関係性に似てきませんか?
そしてこのあとの歌詞には、現代日本にも通ずる強烈な比喩が出てきます。
Hey Teachers
Leave them kids alone
All in all it’s just another brick in the wall
All in all you’re just another brick in the wall
出典: Another Brick in the Wall(Part.II)/作詞:Roger Waters 作曲:Roger Waters
「なぁ先生!子供をほっといてくれ!だってみんな壁の中のレンガでしかないんだから。あなたたちも壁の中のレンガなんだから。」
この2節がこの曲の歌詞の全てです。言いたいことを簡潔にまとめるのがかっこいいですよね。
教育された子供たちが、みんな同じ形のレンガになって、社会という壁の一部になるという姿。
特筆すべきことは教育している側の大人もレンガでしかないということです。個性を奪うのは無個性な大人たちという地獄のスパイラル。
ピンク・フロイドも秋元康もこのスパイラルから祖国を抜け出させようとして、歌詞を書いたのかもしれません。
それでは「サイレントマジョリティー」に戻っていきましょう。