リアーナ【マン・ダウン】歌詞和訳&解説！酷い男に対して主人公が起こした行動とは？女性は共感できる？

「私がこんなことをするなんて自分でも予想だにしなかった

あんなことをするなんて決して思いもしなかった

こんなことをするなんて思ったことすらなかった オー、なんてことだろう

いったい私に何が起きたというの

私に何が起きたというのかしら 私に起こってしまったこと

なぜ私は銃爪を弾いたのだろう

銃爪を弾き、銃爪を弾いて、ブーン！」

この間にリフレインが含まれますが、内容は繰り返しになるので割愛しました。

私の告白はもはや繰り言のようになってきました。

リアーナの歌唱もヒートアップしてゆきます。

過去が生々しくフラッシュバックしている状態です。

言葉は繰り返しが多くなります。

それは何度も自分に対してあの事件は何だったのかを問うている瞬間です。

この問いかけを自分に向けているうちに私の心は高揚しています。

こうした描写にこの「マン・ダウン」の怖さがうかがえるのです。

私はこの先も銃に依存してしまい人を殺しかねないのではないでしょうか。

未来はまったくないように描いているので実際は分かりません。

私には語るべき未来は逃げ惑うことしかないのです。

一生逃げ切る気でいるのかもしれません。

しかし現実はそれほど甘くはないような気がします。

ただし、銃での殺人事件が日常的に起こる地域では捜査する警察官の数が足りないのかもしれません。

とはいえ逃げても私には絶えず殺人の瞬間がフラッシュバックします。

私は自分の記憶からは逃げられません。

いつか本当にその罪と罰と向かい合わなければいけなくなるでしょう。

「そして一瞬のうちに友だちの生命を、ダチの生命を終わらせてしまった

私が銃爪を弾いたら、銃爪を弾いたら、あなたに照準を合わせて銃爪を弾いたら

誰か私に教えて 私はどうすればいいのか、私は何をすればいいのかを」

私は冷静な思考ができません。

殺してしまった彼を親しげにダチ（友人）と呼びます。

自分がそのダチの人生を一瞬で終わらせてしまいました。

私が銃の銃爪を弾いたこと自体が真の動機になっているのではと錯覚させられるほどの混乱ぶりです。

銃は殺人のためにあるのに、自己防衛のために身に着けていると嘯くアメリカ合衆国の現実は怖い。

私の罪の意識というものは「とんでもないことをした」という朧気なものです。

私自身が逃げてゆく過程の中で疲弊したときに朧気だったその罪がクリアに晴れるかもしれません。

ダチはもう生き返りはしないですが、罪を償うことはできるようになるかもしれないでしょう。

「マン・ダウン」はアメリカ合衆国とその他の国では受容のされ方が違うかもしれません。

銃への依存を捨てきれない社会の反応は日本社会に生きるリスナーのものとは違ってくるのです。

しかしアメリカ合衆国でも銃規制強化を謳う市民は多くなりました。

「マン・ダウン」を二分された世論の中に放り込んでみたらどんな反応が生まれるのか。

制作チームはそのような実験的精神を持ち合わせているようです。

私はついに誰かこの事態が何を意味するのか教えて欲しいと乞い願います。

赦されたいという想いは私の中にもあるのです。

しかし現実では街から逃げる準備しかしていません。

混沌の中で引き裂かれるような想い。

殺人者の内面を覗くとこのような混沌とした世界が見られるのかもしれません。

「ルンパパパン、ルンパパパン

ルンパパパン、男は倒れる

ルンパパパン、ルンパパパン

ルンパパパン、私がダウンタウンに向かうとき

なぜっていまや私は犯罪者、お尋ね者、凶悪犯だから」

簡略な意訳にいたしました。

そろそろ終盤です。

相変わらず軽さが伴っていますが、犯罪者になってしまったことの自覚がうかがえます。

リスナーは自首することを求めるかもしれません。

殺人というものはフィクションの中でも肯定できないからです。

「罪と罰」のラスコーリニコフよりも浅薄な智慧しかない私。

ラスコーリニコフが一端の理由を捏ね上げて自己を肯定する姿とは違うのです。

しかし両者とも犯罪を隠蔽したり、逃げ惑うことしか頭にありません。

この先で私はあるものに泣きつきます。

さて、何にすがるのでしょうか。

「オー、犯罪者になった私にどうか神のご慈悲を

男は倒れる

裁判官に私の罪を軽くするように伝えて

街から逃げ出すの

いまやもう誰も私を発見できないわ」

錯乱した私が最後にすがるのは神でした。

しかし神こそこの罪を見過ごしません。

それでも罪人でさえ神に祈ることはあるのです。

人間存在というものが罪と向き合ったときにする懺悔というもの。

それはどこか根源的な感情なのかもしれません。

自分では背負いきれないものを神と共有してしまうのです。

私は裁判官に減刑を願いますが、それならばすべきことは自首であるはずでしょう。

しかし私は逃げることしか選べません。

この浅はかさは何に由来するのでしょうか。

私のバックグラウンドはあまりに智慧に欠けたものです。

だからこそ他人にバカにされることがあるという事実にさえ気付けないのでしょう。

「マン・ダウン」はレゲエですが、この音楽の底なしの多幸感のようなものを逆説的に利用します。

本当は救われない未来だけをリスナーに提示しているのです。