日常から逃げ出し、楽園を目指して旅する「ブレーメンの音楽隊」。

そんなイメージから着想を得た今回のアルバムでは、米津玄師らしい言葉で、現状に苦しみを感じている人たちへの救いが投げかけられています。

そんな中にあって、今回紹介する「Undercover」はそれを象徴するような曲。

「内密に行う」という意味のこのタイトルですが、言ってみれば夜逃げの歌です。

逃げ出すことを肯定する、そんな歌は、現代の息苦しさを象徴するようにも感じるのです。

歌詞

それでは細かく歌詞を見ていきましょう。

逃げ出すこと

どうやってあがいたって 逃げられやしないもんだって
理解してみたってどうしようもない
さあ今夜逃げ出そうぜ ありったけのお菓子もって きっと役に立つと銃も携えて

出典: Undercover/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

この曲の冒頭を聴いて一番最初に思い出したのはいじめ問題」でした。

いじめといえば学生時代に濃厚なものですが、いくつになっても人間の集団では必ずと言っていいほどついて回る問題ではないでしょうか。

いじめに遭うと、どんな世代のどんなひとも、なぜか「これは仕方ないことだ」と認めてしまう傾向があります。

そうやって、辛く悲しい現実について考えることから自分を守ろうとするのでしょう。

自分だけが耐えれば済むとか、理解した振りをするのです。

しかし米津玄師は、理解なんてなんの意味もないと笑い飛ばします。

逃げるが勝ち、そんなことはこの世に溢れているのです。

ハッピーなエンドがいいんだよ 誰だって喜べるみたいなさ
そんなことを思いながら僕はずっと生きていくのか
いつかもし僕の心が 完全に満たされたとしたなら その瞬間に僕は引き金をひきたい

出典: Undercover/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

いじめを苦に自殺、パワハラを苦に自殺。

この国にはそんなニュースが溢れています。

しかし、終わりこそ幸せなものでなければと、彼は歌います。

心満たされる最高に幸せな瞬間こそ死に時で、苦しみの果てのエンドなんてなにも魅力的じゃない。

だから今は逃げ出して、生き延びろ。そう歌うのです。

どんな今も呑み込んでいけば過去に変わっていく 進む方はただひとつ
いつだってさ この退屈をかみちぎり僕は 駆け抜けて会いにいくんだ
あのトンネルの先へさ

出典: Undercover/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

「どんな今も呑み込んでいけば過去に変わっていく」、どうせ過ぎる今なら、自分に都合の良い今に変えてやり過ごしたって良い、そんな意味でしょう。

進むほうは、幸せな終わり。

苦しみのトンネルを抜けた先には、今よりもいい日々が待っているはずなのですから。

生きるという険しさ

簡単に思えたって 上手くはいかないんだって もう散々確かめたことだったのに
もういいやなんて言って 引き返そうとしたって 一体全体どこへと帰るのですか
ラッキーなヒットでいいんだよ こんな苦しみを味わうより
そんなことを思いながら僕は きっと生きていくんだな
いつかもし僕の心が 完全に満たされたとしたなら?
その瞬間へ辿り着くにはどうすれば?

出典: Undercover/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

二番で少し毛色が変わります、こちらは生きることの難しさを描いているよう。

どんなに適当に生きている人にも、矜持はあり、目標はあります。

それゆえに苦しみ、悩んで生きています。

しかし引き返そうにも、帰る場所はもうありません。

未来にしか続かない、それが数少ない人生の大原則です

苦しみの日々の中で、ああ誰か、この窮地を救い出すヒントをくれないかと願います。

そんなものはそうそう落ちていませんが、願ってしまうのです。

そうしていつかは、そんな願いも目標も、完全に満たされた自分になれないかと願ってしまうのです。

どんな今も笑っているうちに錆び付いていくんだ 後戻りは無理なもんだ
いつだってさ 不安の腹にナイフを突き刺して 闇雲に手を伸ばした
何を掴むや知らずに

出典: Undercover/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

生きることは苦しく、不安も多いものです。

時には逃げ出し、時には抗い、時には泣き喚いて、それでも進むしかない一本道です。

限りのない不安を黙らせて、未来のために自分の中からアイデアを掘り起こすのです。

消し去ってよ この憂いも全て木っ端微塵にしてさ 行ける方へ ただ向こうへ
そんじゃ今は 何もうたわない夜に沈もうか やがて来る朝を待って

出典: Undercover/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

米津玄師さんは表現者ですから、日々、自分自身と向き合い新しいものを生み出し続けなければいけません。

そんな日々の中で、時にはスランプや苦しみに悩まされる夜もあるでしょう。

そんなときは、“何もうたわない夜に沈む”のです。

それは毎日を闘うみんなも同じ。

苦しい日々には、苦しみを放棄して、ただ休む時間も大切です。

やがて来る朝のためにね。

終わりに

いかがでしたか?

逃げることも肯定しながら、現実の大変さも突き付けてくるあたりリアリストですよね米津玄師さん…。

ではまた次回!

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