レーシングドライバー攻める 光にだってなれる
思いのままどこまでも 時空だって越えていける
僕らの未来は 僕たちの心の中にある
空に月が ぼんやり 浮かんでる
選手交代 厳かに すみやかに
出典: GET WIND 360°/作詞:EBI 作曲:EBI
書き込んだ歌詞というよりも、発想が天から「降りてきた」歌詞のように思えます。
前へゆける確信がユニコーン、EBIにあり、その前向きな気持でサラリと書き上げたような趣です。
壮年になっても素朴に「未来」を信じているのだなと感心します。
光ある未来はポップ・ソングによる啓示の中にしか現れないような世相ですがポップ音楽は裏切らない。
夜空の月などの森羅万象の描写と人間の業がひとつの世界の中で交錯する姿を歌います。
ボブ・ディランのように転がる歌
「うなぎ4のやきとり1」
ボブ・ディランのように音空間をロールしてゆく曲調になっています。
とても短い歌詞です。
自由であることの誇りに満ちています。
奥田民生らしい曲調と歌詞、そして少し謎なタイトルににんまりするリスナーも多いはず。
歌詞を見ていきましょう。
自由な大人であることを誇る歌詞
いいころに それぞれに いいと思うとこに 座ります
いまだに 生き残り いいと思うやつを順番に やります
支えあうこの頃 満面の笑み でかい窓の部屋
フリー フリー フリー 3拍子の曲だからスリーだ
そう俺たちは自由
老いて 笑って 泣いて 歌ってー
出典: うなぎ4のやきとり1/作詞:奥田民生 作曲:奥田民生
ユニコーンのサウンドはまだまだエバーグリーンで若々しさがあります。
しかし奥田民生をはじめとするメンバーには自分が壮年であることに何の躊躇も恥じらいもないです。
「老い」までも楽しんでしまおう。
そんな大人の遊び心がいまのユニコーンの動力と基軸です。
大人であるということは自由であること。
この社会から自由がかき消されないように願います。
いつまでもユニコーンのメンバーには頑張ってもらわないといけませんから。
醒めないラジオへの愛
「OH! MY RAD10」
奥田民生による作詞でABEDONによる作曲です。
アルバムに先行して2018年に発表された「OH! MY RADIO」。
今回、アルバムに収録するにあたって「OH! MY RAD10」と改題いたしました。
この曲はYouTubeのユニコーン公式チャンネルにMVがアップされています。
ぜひご覧ください。
ユニコーン100周年を祝うアルバム「UC100V」のラストに相応しい名曲です。
冒頭のシンセサイザーの音から弾けるようなギター・ポップへと変化します。
忌野清志郎のスワン・ソング(生前最後のシングル)は「OH! RADIO」。
古今東西、音楽家はラジオに多大な恩義と期待を抱いています。
歌詞を見ていきましょう。
ラジオは音楽を裏切らない
もう すぐには まわりにダマされないが
今夜も 魔法にダマされている
音や声に 左右されたいな
心も カラダも 左右されたい毎晩 ダマされたいや
眠たくないや ダマされていたいや
出典: OH! MY RAD10/作詞:奥田民生 作曲:ABEDON
ラジオからかかる音楽への期待。
すでに音楽的な趣味嗜好を確立してしまった後ではラジオからかかる音楽が甘いものに感じられます。
音楽家に共通する音楽への「慣れ」がもたらすラジオ・ポップスへの不信感のようなもの。
しかしラジオから流れる曲がいくら軟弱なものであれ、身体自体が反応して左右に揺れてノッてしまう。
それも音楽家の性(さが)です。
そんなマジカルな魅力がラジオにはあります。
テレビやインターネットの浸透で年々寂しくなるラジオのシェア。
しかしradiko.jpなどのサイマルラジオの普及で新しい躍動をしているのも知ってほしいことです。
ラジオ文化は根強く生きています。
そしてラジオは音楽を捨てません。
2011年3月11日の東日本大震災で都内のライブ・ハウスは公演を自粛しました。
「自粛」ムードの中で街から音楽が消えたのです。
そんなときTBSラジオから流れたビートルズの「Let It Be」に救われたという音楽人がいっぱいいました。
ラジオへの偏愛。
音楽を愛するならばYouTubeでMVをチェックするだけでなくラジオ局へリクエスト・メールを送りましょう。
それが音楽を広くシェアする一番効果的な方法です。
ラジオはまだまだ魔法使い。
奥田民生がこの歌詞に寄せた想いは熱いです。
そしてラジオ愛、ひいては音楽愛を華々しく歌ったこの曲でユニコーン100周年アルバムは閉幕します。
アルバムのコンセプトは数字へのこだわり
100周年というマジックだけでない数字への偏愛
ユニコーンのアルバム「UC100V」の全曲解説を終えたいま、まだまだ解き明かさないといけない謎。
このアルバムの各曲のタイトルをすべてもう一度振り返ってみてください。
あらゆる曲のタイトルに何かしらの数字が使われています。
無理やりな計算式で導き出した100周年記念アルバムですからとことん数字にこだわろう。
それが今作「UC100V」でユニコーンのメンバーが共有したコンセプトです。
歌詞も仔細に点検すると数字が浮かび上がります。
数字を使ってなにか数学的に高尚な計算をしているわけではまったくないのです。
ただ数字にこだわるのが楽しかった。
ユニコーンの大人の遊び心がここに極まります。