「細雪」想い出と儚く消える雪の華
女性の儚い想いを綴った、ギュっと胸が締めつけられる楽曲です。
今回は不憫な女性の心情が印象的な、「細雪」をご紹介いたします。
1983年9月に、「細雪」はリリースされました。
注目すべきは、昭和の大ヒットメーカーが作詞をしていることではないでしょうか。
多種多様な作品を世に送りだした、吉岡治氏なのです。
代表的な楽曲を抜粋しても、皆さんご存知のものばかりでしょう。
石川さゆり「天城越え」、瀬川瑛子「命くれない」、美空ひばり「真赤な太陽」などです。
演歌はもちろん、アニメ主題歌も手掛ける作詞家だったとは驚かされます。
男の嘘を大人の色気で歌い上げる「五木ひろし」
しっぽりと歌い上げる、五木ひろしです。
演出とはいえ女性と寄り添う姿が、なんともいえない大人の色気を感じてしまいます。
「細雪」のタイトルと相まって、歌詞のもつ世界観に惹きこまれてしまいそうです。
瞼を閉じると、深々と雪が降る光景が思い浮かびませんか?
女性の心情に寄り添う「細雪」を余すところなく読み解きます
雪に投影される想い
泣いてあなたの 背中に投げた
憎みきれない 雪の玉
出典: 細雪/作詞:吉岡治 作曲:市川昭介
どう考えても、楽しい光景ではないことだけは読みとれます。
しかも、主人公はすでに泣いているのです。
涙を流しながら、誰かの後ろ姿に向かって雪玉を投げつけています。
天気は晴れではなく、どんよりとした空が想像できそうです。
雪玉といえば、雪合戦など楽しげな雰囲気が真っ先に思いつきませんか。
積もる雪に子ども達がはしゃぐ微笑ましい姿や、カップルであれば仲睦まじく熱々な様子など。
とはいえ日が沈む夕刻のころには、そんな雪景色もどこか物悲しく感じてしまうのも確かです。
危険な情事
人生で、人を憎むということはそうそうあるものではありません。
この時点で、おそらく男女の情事ということは想像できるでしょう。
よほどの出来事が2人に生じているのだと考えられます。
裏切りや、男女関係のもつれからくる心の有り様。
やはりそう考えるのが自然ではないでしょうか。
最後に別れる場面の、恨み節のような心情が溢れ出ています。
まだ未練が残り、様々な葛藤に苛まれているのです。
雪玉を投げつけなくてはならない衝動に駆られた、主人公の想いとは一体...?
欲してはいけない「嘘」...
いまもこの手が やつれた胸が
おとこの嘘を 恋しがる
抱いて下さい もう一度 あゝ
外は 細雪
出典: 細雪/作詞:吉岡治 作曲:市川昭介
不条理な愛だったのでしょう。
主人公は憔悴しきり、立っているのもままならない様子がうかがえます。
もしかすると、正気ではないのかもしれません。
してはいけない情事と分かりつつも、目先の愛に溺れてしまったのでしょうか。
食がのどに通らず、痩せ細ってしまったようにも感じとれます。
嘘をつき続けた男性。主人公はやはり女性でした。
騙されるのはいつも女性の方だといっているのでしょう。
会えば辛くなるのを頭では分かっていても、心がそうさせません。