圧倒的才能を持つ歌姫「majiko」
母親はボーカルトレーナー、父親はドラマーという音楽のサラブレッド「majiko」。
その歌声を聴けば、血筋だけでは決して片付けられない圧倒的な才能に驚くことでしょう。
跳ねるリズムには一瞬のズレもなく、ハイトーンボイスは音を探ることなく一気に放たれます。
アップダウン入り乱れる旋律を確実に捉える音感には、感嘆の溜め息が漏れてしまいました。
「歌い手」から「シンガーソングライター」へ
2010年からニコニコ動画でボーカロイド楽曲をカバーする「歌い手」として「まじ娘」名義で活動開始。
彼女の歌唱力があっという間に話題となったのは言うまでもありません。
2015年の1stアルバム「Contrast」には歌い手時代のカバー曲が多く収録されています。
現在の「majiko」名義に変わったのは2016年12月のことでした。
現在は自身も作詞・作曲を手がけ、自身が歌う「シンガーソングライターmajiko」として活動しています。
「パラノイア」をピックアップ!
今回ご紹介する「パラノイア」は、2018年7月にリリースされたシングル「ひび割れた世界」に収録されています。
majikoの表現力、歌唱力、才能の全てが感じられるこの曲。
「パラノイア」の歌詞に迫る!
「パラノイア」を和訳すると「偏執病(へんしゅうびょう)」という病名になります。
自分が誰かに狙われているような妄想にとらわれたり、他人の目が全て批判に見えたりする精神疾患です。
majikoはなぜこの曲を「パラノイア」と名付けたのでしょうか。
歌詞を読み解いていくと、その理由が見えてきます。
辛いのは「パラノイア」の自分
幸せになるという選択肢が浮かばない「パラノイア」。
幸せにしたいと思う「誰か」にも、幸せの選択肢を与えません。
辛いフリはお見通し
ちょっと待って
笑っちゃうよパラノイア
今だけはしばし
思い出さないでいて
出典: パラノイア/作詞:majiko 作曲:majiko
ここで歌われる「待って」は、誰かを呼び止めるためのものではないようです。
「待って」は、思考を整理して心を落ち着かせるためにも使われます。
「えっ、待って、意味がわからないんだけど」
例えばこのような形ですね。
この曲では後者の意味あいが強いように感じます。
今は偏執病・パラノイアにとらわれている自分のことを考えないで欲しい。
もし相手が自分のことを考え、自分に視線を向けたら、パラノイアの自分はどうなるでしょうか。
「あの人は私を嫌っている」「私に文句があるんだ」
そんな思考に陥ってしまうでしょう。
裏を返せば、嫌われたくないという心の現れなのかもしれません。
待って、だって
辛いよってパラノイア
くそくらえだろ
ぶん殴って終わらせてよ
出典: パラノイア/作詞:majiko 作曲:majiko
「辛いよ」と言ったのは誰なのか。
自分自身が辛いのであれば「辛いよパラノイア」となるはずです。
しかし「辛いよってパラノイア」と歌われていることから、辛いよ「って誰かが言った」のだと推測できます。
パラノイア的思考の自分に「批判」「嫌悪」の疑いをかけられることが辛い「誰か」。
批判なんてしていないということを信じて欲しいのでしょう。
でもパラノイアの自分は疑い続け、「辛いよ」という言葉も嘘に聞こえます。
嫌いならはっきり言葉にして欲しい。気に入らないならぶん殴って欲しい。
そうしてくれたほうがいっそ清々しいということです。
ここには「好きなら抱きしめて欲しい」という甘やかな希望がこれっぽっちもありません。
「誰か」に許されているのは、否定だけなのです。