SiMの生み出した傑作
彼らにとって特別な楽曲
日本のラウドロックシーンにおける代表曲「KiLLiNG ME」。
SiMが2011年10月12日にリリースした3rdアルバム「SEEDS OF HOPE」のリード曲です。
このアルバムはSiMにとって大きな節目となる時期に完成しました。
所属していた事務所を辞めることとなり、大震災による衝撃を受け、その他いくつもの騒動が起こり…。
自身の生み出してきた音楽を振り返り、覚悟を決め、完成したのがアルバム「SEEDS OF HOPE」なのです。
そしてこのアルバムが空前の大ヒットを記録。
SiMの名を世に轟かせるきっかけとなりました。
もちろんどの楽曲も素敵なのですが、その中でも特に輝いているのが今回ご紹介する「KiLLiNG ME」。
彼らの精神力が生み出した傑作を深く解釈していきましょう。
MVから伝わる激情
楽曲が表現しているのは?
![](https://img.youtube.com/vi/vyUMYYc8lxU/0.jpg)
SiMはハードコアらしい疾走感の中にレゲエの要素を取り入れた独特なサウンドが特徴のバンド。
それがついついクセになってしまうのが魅力です。
MVではリズムの特徴をしっかりと押さえた、迫力のある歌唱と演奏をする姿を見せてくれます。
演出の内容にも注目してみましょう。
まず前奏。
手に持った時計を床に投げつけてぶっ壊します。
そして口を塞いでから白目を剥き、思い切りシャウト…。
これだけで何だか楽曲の主人公の気持ちが伝わってくるような気がします。
時計が刻んでいるのは4時19分。
この楽曲における重要なキーワードであることが分かります。
そして、自分の中に溜め込んだ負のエネルギーが抑えきれず、放出してしまう。
これらのステップを辿って、この楽曲に込められた感情が歌詞として次々と吐き出されます。
毒林檎を食べてしまう
1番が終わるとふいに現れた緑色の林檎。
モノクロの映像の中に蛍光色が浮かび上がり、見るからに怪しいですね。
しかも林檎の横には「POISON(=毒)」と表記されています。
それをおもむろにかじると、服が林檎と同じ緑色になりました。
身体に毒が回ってしまったのでしょうか?
間奏になると黒い幻覚が現れ、幻覚の銃によって撃ち抜かれ、倒れてしまいます。
身体中がひび割れ消えていく…。
その最中、よく見ると女性の幻覚が上にまたがっています。
これがこの楽曲で歌われている「You(=君)」のことなのです。
「君」=「毒」?
幻覚を追い払った後、最後のサビが繰り広げられました。
緑色は消え去り、もとのモノクロの世界です。
つまり、「君」という「毒」が幻覚を見せていたということ。
具体的にどんな意味が込められているのか気になってきますね。
それでは歌詞から読み解いていきましょう。
苦しい恋愛
悲痛な叫び
Someone
(誰か)
Please cut off my wings
(俺の翼を切り落としてくれ)
Trash it
(捨てちまえ)
With my pent-up feelings
(溜め込んだ感情を一緒にな)
I don't want to fly in the air with bleeding
(血を流してまで空を飛びたいと思わない)
Because I'm not the only one
(だって俺が唯一の存在ではないんだろう)
出典: KiLLiNG ME/作詞:MAH 作曲:SiM
強い絶望感が伝わってきますね。
主人公は深く傷を負いながらも現状打破できていない様子。
この傷の原因は「愛する相手」にあると思われます。
最後のフレーズで「唯一ではない」と表現しました。
つまり、相手には他に誰かがいるということ。
不倫なのか二股なのか分かりませんが、自分が1番ではないと認識しているようです。
分かっていながらも関係を持ち続け、苦しい気持ちが爆発してしまったのでしょう。
自分ではこの悲しい恋愛をやめることができない。
愛情を求めて相手の所へと羽ばたいて行ってしまう。
だからいっそ、身動きが取れなくなるように翼を捥(も)いでほしい。
ついでにこの「苦痛」も翼と一緒に切り取ってくれたのなら…。
悲痛な叫びが表現されています。