どれもこれもあなたには 出来ない無理をさせたのね
そんなにいつの間にボロボロになってたの
まだ続けるつもり?
出典: 恩知らず/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
人生を捧げるほど相手に尽くせば、誰だって自分の人生は二の次になります。
あなたが私にしてくれたことはすべて、あなたに無理をさせることだった。
あなたにしてもらって、自分はいい気持ちでいたけれどふと気づくとあなたは幸せになってなかった。
むしろ不幸になってた。
これはかなりの衝撃です。
この歌の語り手は相手のことを愛しているのです。
愛する人には幸せでいて欲しいと思ってるはず。
でもそうじゃない。自分といると相手が壊れていく。
もしも2人が会わなければ
好きという気持ちや愛し合う2人にはバランスも大切なのでしょう。
片方が一方的に思っていても、思われる方は幸せとは言えないかもしれません。
『恩知らず』は、お互いの想いがアンバランスな恋人の歌です。
別れれば楽?
だからだからだから これきりです
これでこれでこれで 楽になってね
恩を仇で返します 恩知らずになりました
まだずっと好きだけど ごめん
出典: 恩知らず/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
ボロボロの相手を見て、これこそ私への愛の証!と喜べる人もいるでしょう。
しかし、この歌ではそうではありません。
別れることで、解放してあげたい。
自由になって幸せになって。そんな気持ちなのです。
だけど、振られる方からすればどうでしょう?
自分のことは二の次で、恋人に尽くして尽くしたのに。
「辛そうだから別れよう」と言われて、はい、そうですかとは言えません。
今までの努力の分返してくれって気持ちにならないでしょうか?
しかもまだ「好きだけど」って?
恩知らずになった理由は?
全力で尽くしてくれる人
心苦しいんです 申し訳ないんです
私に会わなければ あなたはどうだったでしょう
出典: 恩知らず/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
尽くされるから嬉しいという人ばかりではありません。
重く感じる人もいます。
迷惑をかけていることでよけいに寛げない気持ちになることも。
特に、普段から人に気にかけてもらえることに慣れていない人はそうでしょう。
尽くされることでかえって居心地が悪くなっています。
相手に負担ばかりかけてしまって、きっと彼は不幸なんだと思いつめてしまう。
私よりふさわしい相手がいたはずなのに、私と付き合ったばかりにこんなことになって申し訳ないと。
自分勝手な妄想ともいえます。
無理はしないで
このままあなた命懸けで 無理をさせてはいけない
どうかこれからは自分のために生きて まだ間に合うはずよ
出典: 恩知らず/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
一体2人の間には何があったのでしょうか。
どういう関係なのでしょう。
命をかけるほどに尽くすってどういう関係?
疑問だらけですが、彼女は改心し、これからは私のことはいいから、と別れを切り出します。
「今まで私のために生きてくれてありがとう」
「これからは自分のことだけ考えて」
とても親切な人に思えます。
彼のことを心配し、愛しているからこそ別れを切り出したと言えなくもありません。
ここで思い出してください。
この歌は一人称の歌だということを。
本当に楽になれる?
だからだからだから これきりです
他に他に方法が浮かばない
あなたを傷つけずに あなたのそばにいる
そんな夢も昔は見たわ
出典: 恩知らず/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
命がけで尽くした相手に「あなたがかわいそうだから」で振られる。
これはかなりきつい。
このフレーズはそんな彼女の一応の言い訳。
恋人を傷つけないで、2人とも幸せでいられる方法を考えた、けどそんなことは無理だってわかったの。
私だって辛い。夢にまで見た幸せな生活ができなくて。
私が身を引くのがあなたの幸せ。
いやいやいや…。
「なかった」「できない」じゃなくて、そこは2人で話し合うところ。
自分目線で見た彼の状態、彼の未来を1人で思いつめ、一方的に別れを告げます。