冒頭部分では夜の空から星が地上に落ちてきます。

この「星」は「私」ということにしましょう。

「私」は男性か、女性かはわかりません。

この後に登場する「きみ」という二人称も中性的ですね。

(歌謡曲に比べて平成のラブソングは「きみ」という二人称が男性を指すことも多くなりました)

落ちてくるうちに、夜の闇に溶けていきそうな感覚に襲われます。

まるで、大気圏に突入した隕石が大気との摩擦で燃え盛り、消えていくような表現です。

「私」の精神状態が、負の方向に向かっているように読めます。

何とか地上に降り立った星ですが、そこで経験するのは大きな「孤独感」です。

誰の姿もなく、風の吹く音すらもしない。

静寂と孤独だけがある世界。

そして落ちてきた空を見上げれば長い長い夜が広がっている。

まるで、朝なんて永遠に来ないかのような長い夜です。

「私」がいかに苦しい状況に立っているかということが冒頭の歌詞からもわかります。

夜に向かって手を伸ばす

ねごと【カロン】歌詞の意味を解釈!月に見立てる”きみ”との関係を考える!タイトルがヒントに?!の画像

はだしのまま飛び出たベランダで
見上げた空に両手を伸ばした

出典: カロン/作詞:蒼山幸子 作曲:沙田瑞紀・蒼山幸子

「私」はどうにか夜の空に戻ろうと、ベランダに出て空を見上げます。

空には数多くの星がきらめいています。

しかし、そこに「私」はいない。

いてもたってもいられず、空に向かって手を伸ばします。

手のひらをいっぱいに広げて、両手を突き出す「私」。

その手の先には一体何がいるのか。

それが「カロン」つまり「月」です。

近くて遠い場所にいる「月」=「きみ」

涙を超えて月へ

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何度夢をくぐったらきみに会えるの
いま いま 涙の国を越えて
近くて遠い月が きみみたいだな
この気持ちを信じたら会えるのかな

出典: カロン/作詞:蒼山幸子 作曲:沙田瑞紀・蒼山幸子

「私」の手の先にあるもの、それは「月」でした。

その月と「きみ」を「私」は重ねます。

手を伸ばせばそこにある月に手が届きそうになります。

でも、絶対に手が届かない。そんな存在が「月」です。

「私」と「あなた」がどんな理由で離れ離れになっているかはわかりません。

「私」が片想いをしているのか。

結ばれているが、織姫と彦星のように遠距離恋愛をしているのか。

とにかく「私」は「きみ」に会うことを熱望します。

しかもこの夜に浮かんでいる月はただの月ではありません。

「moon」ではなく「カロン」なのです。

私たちが見ている月よりも、もっともっと遠くにある「月」。

「カロン」というタイトルがあるおかげで、「私」と「きみ」の距離の長さが際立ちます。

「私」にできることはただ一つ。

「きみに会いたい」という気持ちを信じ続けるということだけです。

遠く離れた星と月を結びつけるものは、この強い想いだけなのです。

平安時代から続くモチーフ

ねごと【カロン】歌詞の意味を解釈!月に見立てる”きみ”との関係を考える!タイトルがヒントに?!の画像

月、そして離れ離れになる、というモチーフは日本に古くからあります。

皆さんもお気づきだと思いますが「竹取物語」、つまり「かぐや姫」です。

世の男性を虜にしたかぐや姫が月に還り、離れ離れになっていく物語。

この物語が書かれたのは平安時代です。

「月」が手が届きそうだけど届かない存在である、という想いは平安時代からあったのです。

しかし、今回は地球の衛星ではなく冥王星の衛星。

その遠さは、かぐや姫がいる月までの遠さを遥かに凌駕します。

愛のうたと別れの朝

愛のうたを歌いながら

ねごと【カロン】歌詞の意味を解釈!月に見立てる”きみ”との関係を考える!タイトルがヒントに?!の画像

何度夢をくぐったら きみに会えるの
いま いま 涙の国を越えて
確かなものはなにもここにはないけど
当たり前な愛のうた 歌って
でこぼこな胸の奥 あふれそうだよ
いま いま いま信じたい すべてを

出典: カロン/作詞:蒼山幸子 作曲:沙田瑞紀・蒼山幸子

最後のサビの部分です。

「月」に手が届かないような地上には、確かなものなんて存在しない。

孤独に覆われた「私」にとっては確かなものは「きみ」しかいません。

だったら、自分の中にある「愛」の気持ちを確かなものにするしかない。

だから「私」は愛のうたを精一杯に歌うのです。

夜空に向かって、遠い月に向かって、自分の愛を必死に絞り出すのです。

愛は言葉にしなければ他者には伝わりません。それも、相手は遠くにいる「きみ」。

孤独と寂しさで涙を流す「私」の胸には、月の表面のようなクレーターが空いています。

そんな凸凹も含めて、愛をぶつける。

そして、その愛を信じる。

遠く離れている「きみ」に会うまで、「私」は愛のうたを歌い続けるのです。

切ない…!!

そして、別れの朝

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