ここでは2人で過ごした時間を、主人公が思い返している様子が描かれています。

彼が思い出しているのは2人で歩いた雨の日の出来事。

相合傘をしながら仲睦まじく歩く2人は、今はもうここにはいません。

2、3行目は特に2人の物理的にも精神的にも距離の近さを感じる表現となっています。

この頃はまだ感情も幸せも2等分することができていたのだと感じられる歌詞です。

しかし今では2人は離ればなれとなり、同じ景色を見て感情を共有することさえできなくなってしまいました。

物理的にも精神的にも、2人の距離は遠ざかってしまったのだと分かります

今はもうその頃に戻れないということが、彼に対して切なさを与えていると考えられます。

恋の終わり

久保田利伸【その人】歌詞の意味を徹底解釈!もう恋は終わっているのか?あなたとのいまの関係性を紐解くの画像

恋が 終わってく
もどらない 時の中で

出典: その人/作詞:Toshinobu Kubota 作曲:Toshinobu Kubota

彼はこうして思い出を振り返ることによって、2人がもう元の関係には戻れないのだということを再確認したのでしょう。

そして元に戻れないということは2人の関係性が終わりに向かっているということを指しています。

幸せな時間が過ぎて今ではその残り香だけが主人公の胸を掠めます。

時間というものの不可逆性を私たちにこれでもかと突きつけてくる表現です。

愛した人と別れるということは必ず悲しみを伴うものですが、ここにはまだそれほど涙や悲しみの気配はありません。

どちらかというとここまでの歌詞には、今の状況への戸惑いと戻らない時間への切なさが滲んでいるように感じます。

別れと未練

別れの時

久保田利伸【その人】歌詞の意味を徹底解釈!もう恋は終わっているのか?あなたとのいまの関係性を紐解くの画像

最後のさよなら 離れない手と手が
胸の真ん中を急に 染めてしまうけど
夢中で愛した あなたを愛した
どこにも隙間はないくらい 恋に打たれた
それでいい 出会えてよかった

出典: その人/作詞:Toshinobu Kubota 作曲:Toshinobu Kubota

ここでは2人の別れのシーンが描かれています。

1行目ではまだ別れを受け止め切れていない2人の姿が描かれているようです。

このパートでは、どちらが別れを切り出したのかは分かりません。

しかしながら何らかの事情によって別れざるを得なくなってしまったのでしょう。

2行目の歌詞は別れることへの未練を表しているのかもしれません。

別れることを決心したけれど、幸せだった2人の時間に後ろ髪を引かれている様子が伝わってきますね。

3行目以降では、愛しあえたことに対しての感謝が綴られています。

特に4行目の「隙間」という言葉が登場する1文は、それが忘れられない時間であることが伝わる表現です。

1日中恋人のことを考えてしまうような、燃え上がる恋愛を表現しているのでしょう。

そんな熱い想いを自分に対してもたらしてくれた相手に感謝の気持ちを伝えています。

恋人への未練

久保田利伸【その人】歌詞の意味を徹底解釈!もう恋は終わっているのか?あなたとのいまの関係性を紐解くの画像

せつなさが呼ぶ 涙よりも
温かくつたう 雫を
もっともっと その頬に
輝かせてあげて いたかった

出典: その人/作詞:Toshinobu Kubota 作曲:Toshinobu Kubota

ここでは主人公の恋人への未練が描かれていると考えられます。

この1、2行目で表現されているのは、切なさよりも幸せをもっと与えてあげたかったという気持ちでしょう。

今までの自分が彼女へもたらした感情を振り返って申し訳ない気持ちを抱えているようです。

このパートから伝わってくるのは、別れを選びながらも恋人に対してまだ愛情が残っていること。

愛情ゆえに2人は別れを選ばなければいけなかったのかもしれません。

それは例えばどちらかが遠くへ行ってしまうような事情によってもたらされた別れだと考えることもできます。

もし別れが待っていたとしても、もっと幸せにしてあげたかった。

そんな主人公の心情が伝わってきます。

彼女との最後の時間

想いを胸に

久保田利伸【その人】歌詞の意味を徹底解釈!もう恋は終わっているのか?あなたとのいまの関係性を紐解くの画像

消えない 残り火は
静かに ここに宿そう

出典: その人/作詞:Toshinobu Kubota 作曲:Toshinobu Kubota

この2行は主人公に恋人への好意がまだ残っていることを表しています。

もしかしたらここで表しているのは好意だけではないかもしれません。

そこには2人でやり残したことや、今までに相手を傷つけたことへの申し訳なさ、幸せな思い出など。

2人の関係が彼にもたらした多くのものが込められているのかもしれません。

この言葉は主人公にとってこの恋がかけがえのないものであったことを証明しているといえます。

もし2人の終わりが当人たちの意に沿わないものであったとしたらこのように思うことはないかもしれません。

2人は納得して別れたからこそ、綺麗な形で想いを自身の心に繋ぎ止めておくことができるのでしょう。

終わりを受け止める彼女の姿