『チュープリ』

チュープリ/ZOC
2019年4月30日平成最後の日、ついにデビューシングル『family name』をリリースしたZOC(ゾック)。
今回ピックアップするのは『family name』のカップリング曲『チュープリ』です♪
まずは衝撃的すぎる『チュープリ』のMVをご覧ください。
ZOCは“共犯者”ことZOC-000の超歌手・大森靖子が2018年に結成したアイドルユニットです。
しかし『チュープリ』のMVをご覧いただければ彼女は主役ではないことがよく分かります。
ZOCの主役は超個性的なメンバーたちであると同時にすべての「カワイイ」を追及する女の子たち。
そして『チュープリ』ではZOC-006の兎凪さやかが現場を完全にジャックしています。
“CHU”しまくりのMV
ファンの間では“さやぴー”の愛称で親しまれる妹キャラの兎凪さやか。
しかし彼女は自身の「カワイイ」力を発揮するためなら手段は選びません。
しょっぱなの「CHUして♡」が音源にもしっかり入っていることから大森靖子の意図は明らかです。
『family name』はZOCの主題でもある「呪縛からの解放」を表現する曲。
そして対となる『チュープリ』は人類1人1人に備わった「カワイイ」を全肯定する曲なのです。
『チュープリ』のMVに数えきれないほど登場するキスシーン。
そしてTiktokに代表される「自撮り文化」はすべて「カワイイ」文化の象徴として用いられています。
数回立てられる中指も、変顔もZOCにとっては「カワイイ」の対象として肯定されるのです。
今回はそんな『チュープリ』の歌詞を徹底的に分析。
楽曲に込められた意味を様々な角度から解説していこうと思います。
『チュープリ』徹底解説!
タイトルに込められたWミーニング
ねぇ~ “CHU”して♪
出典: チュープリ/作詞:大森靖子 作曲:大森靖子
兎凪さやかのこんなおねだりで始まる『チュープリ』。
まずこの不思議な曲名について触れておきましょう。
『チュープリ』という曲名にはいわゆるダブルミーニング、つまり2つの意味が込められています。
それは「CHU-プリクラ」と「CHU-Princess」です。
チュー、つまりKISSとは「相互愛」の確認のために用いられるコミュニケーション。
『チュープリ』のメインテーマはずばり、この「相互愛」なのです。
それでは「相互愛」を確認すべき相手とは誰なのでしょう?
それは後の歌詞で明らかにされますのでご安心ください。
ご法度の多いアイドル業界に物申す!
チュープリ 撮りたいな
ネットで炎上しちゃうかな
有名になったとき
彼氏がいたら ヤバイかな
出典: チュープリ/作詞:大森靖子 作曲:大森靖子
古くは80年代、アイドル黄金期より受け継がれる負の遺産。
それがアイドルに対するご法度の存在です。
アイドルは清く・正しく・美しく。
恋愛なんてご法度という慣例が今でも一部のアイドル業界では深く根付いている現状。
しかしアイドルだって、芸能人だって人間であり憲法で保障された「人権」を有しています。
こんな当たり前の常識が非常識としてまかり通る業界にZOCは喧嘩を仕掛けるのです。
SNSの普及により今や80年代とは比較にならないほどプライベートと仕事の境目が曖昧になりました。
その典型例がネット炎上です。
ZOCだって、大森靖子だって炎上は怖いし面倒だと思っているでしょう。
なぜここまで挑発的な行動を実行できるのか?
それは良識あるファンとの良好な関係性を信じているからです。
黒歴史上等な私だけど...カワイイ?
きれいに生きてなきゃ
応援してもらえないのかな
黒歴史上等な私じゃちょっと
ヤバイかな
出典: チュープリ/作詞:大森靖子 作曲:大森靖子
ZOC-002の戦慄かなのは自身の貧困&非行体験を。
そしてZOC-003の香椎かてぃは暴走族である実兄からの暴力体験を公表しています。
既存のアイドル業界ではこのような過去は黒歴史としてベールに包まれてきたはずです。
しかしZOCは『チュープリ』においてむしろこれらの黒歴史や内面の欲望を露わにしています。
キャッチーなメロディーと疑問形で表現される歌詞はオブラートではありません。
これら黒歴史や欲望さえも「カワイイ」の対象として歌うこと。
その方法論で消えることのない過去、そして自身のどす黒い内面も全肯定しているのです。