ビヨンセの神曲「Halo」
2009年1月20日に発表されたビヨンセのシングル「Halo」について解説いたします。
ビヨンセの「神曲」と評される美しいバラードです。
神々しいまでに高められた至上の愛に恵まれたふたりを描きます。
生ピアノと重いビートに合わせたハンドクラップが印象的なバックトラック。
シンプルなサウンドのようですが歌詞の方が豪華ですので絶妙なバランスです。
ゴスペル・シンガーのような神々しい歌唱が圧巻でしょう。
しっとりと落ち着きたいときに聴きたいラブバラードになっています。
ずっとこの世界に浸っていたいのですが意外なほどに短い曲でもあるのです。
こんなカップルは本当に存在するのかなと思うほどに清廉なふたりの姿。
男女の諍いを描くことも上手なビヨンセですが、ここでは真実の愛を歌い上げました。
ビヨンセの傑作にして代表曲である「Halo」。
それでは実際の歌詞をご覧ください。
心を開かせてくれた人
心の壁が消え去った
Remember those walls I built?
Well, baby, they're tumblin' down
And they didn't even put up a fight
They didn't even make a sound
出典: Halo/作詞:E. Kidd Bogart, Ryan Tedder & Beyoncé 作曲:E. Kidd Bogart, Ryan Tedder & Beyoncé
「私が築いた壁たちのことを覚えているかしら?
ベイビー その壁たちが崩壊してゆくの
壁たちは抵抗すらしないでね
ひとつの音すらさせないの」
歌い出しの歌詞です。
ビヨンセにしてはオーソドックスなスタイルの楽曲構造ですから耳馴染みがいいかもしれません。
語り手の私があなたに話しかけます。
かつて私は人間不信のために周囲の人をシャットアウトするような人物だったようです。
しかしそうした傾向があなたと出逢ったことでガラリと変化しました。
人間不信で人見知りなのにあなたとは壁を感じることがなかったのです。
鎧のようにまとっていたバリアのようなものが武装解除されます。
あなたが相手ならばもうオドオドすることもなく気楽に過ごせるというのです。
私たちは初めて出逢った人に対して心を閉ざすこともあります。
他者からの干渉というものに敏感になりすぎて相手との距離ばかりを大切にしてしまうのです。
これではくつろいだ関係には中々なれないでしょう。
コミュニティ能力の高い人であっても本当の心までは晒さない人もいます。
心の壁というものはコミュニティ能力の優劣とはまた別の次元の問題なのかもしれません。
守りたいものを必死に抱いているのですから、こうした傾向自体が悪いこととはいえないです。
しかしそのように心を閉ざしている中にそっと手を差し込んでくるような人と出逢えるとホッとします。
この曲「Halo」ではそうした運命の出逢いが描かれているのです。
あなたは私の天使でさえある
I found a way to let you in
But I never really had a doubt
Standin' in the light of your halo
I got my angel now
出典: Halo/作詞:E. Kidd Bogart, Ryan Tedder & Beyoncé 作曲:E. Kidd Bogart, Ryan Tedder & Beyoncé
「私はあなたとやってゆく道が分かったわ
でも、私は本当に疑問を持ったことはなかった
あなたの栄光の光の中で立ち尽くして
今、私は天使を手にしたの」
歌い出してすぐにタイトルを回収します。
「Halo」は色々な訳語が考えられますが、ここでは「栄光」といたしました。
他には「天使の輪」「後光」などの意味があり、神聖で光り輝くものと思っていただければ大丈夫です。
私はあなたと出逢ってから割とすぐに一緒に生きてゆくことを決めます。
ビヨンセの歌詞は意地悪に書くとあまり恵まれた恋愛は書きません。
しかし「Halo」などの幸せな恋愛はそれこそ手の届かないくらいに優美な愛を描くのです。
他には「Love On Top」なども同じ系統かもしれません。
ビヨンセがこれほどの信頼を寄せる男性は珍しいと思ってしまいます。
彼女は愛を至上の価値と考えている人です。
その愛の実相もこれほどに神々しいものを理想としているのかもしれません。
あなたが如何に完璧な人間であるかをこのラインから思い知らされます。
日常で普通に暮らしていているだけではめったに出逢えないタイプの人でしょう。
ビヨンセの相手をするくらいの男性はこうしたオーラを感じるタイプの人でないと務まらないのかも。
順調な社会活動ができていて、なおかつ私生活でもすきのない人。
あなたが実際にどんな人なのかは詳細に語られる訳ではありません。
それでも威厳と風格のある人なのだろうと想像します。
ビヨンセは愛に関して非常に厳しいモノサシを持っているアーティストです。
彼女の鋭い視点からOKをいただける男性はめったにいません。
あなたはそれだけ特別な人であり天使に例えられるのも無理がないのでしょう。
あなたの「超越性」
It's like I've been awakened
Every rule I had you breakin'
It's the risk that I'm takin'
I ain't never gonna shut you out
出典: Halo/作詞:E. Kidd Bogart, Ryan Tedder & Beyoncé 作曲:E. Kidd Bogart, Ryan Tedder & Beyoncé
「それは私が覚醒めたときのような感じ
私が作ったルールすべてをあなたは破ってゆく
それが私の負っているリスク
あなたをシャットアウトするなんて決してしないわ」
私の常識をことごとく超えてゆくあなた。
あなたのそうした「超越性」のようなものに私はどんどんと惹かれてゆくのです。
あなたの「超越性」が男女の序列に敏感なビヨンセをも惑わせます。
もしかしたら自分なんか敵わない相手なのかもしれないと畏怖の心さえ抱くのです。
新しい出逢いによって人生が大きく変わるのは男女ともに「よくあること」かもしれません。
ただ、「よくあること」とはいっても当事者にとってはかけがえのない出逢いになります。
一瞬一瞬が貴重であると思えてしまうパートナーとの時間。
私たちは小さな幸せを人生の基軸として生きています。
ビヨンセもこうして神々しい出逢いを描いていますが、実際は他のカップルと変わらない幸せなのかも。
恋愛では当事者だけが主人公であって、他の誰にも邪魔されることはありません。
私たちは私たちなりのささやかな幸せに希望を見出します。
大切なことはビヨンセのようにパートナーの「Halo」に気付ける心ではないでしょうか。
こうして力強く結ばれたふたりはお互いを排斥することなどなく幸せな人生をともに歩みます。
「Halo」は恋愛が充実している人にとっては福音のように響く歌なのです。
あなたの栄光に抱かれて
夢物語ではない楽曲
Everywhere I'm lookin' now
I'm surrounded by your embrace
Baby, I can see your halo
You know you're my savin' grace
出典: Halo/作詞:E. Kidd Bogart, Ryan Tedder & Beyoncé 作曲:E. Kidd Bogart, Ryan Tedder & Beyoncé