HOOKなだけに、いきなりパンチラインとも言えるハードな歌詞を乗せたメロディは、まだ夢を見つけていない若者だけでなく、夢を追い越してきた大人にも響きますね。

ただの悪ガキだった自分たちが、ヒップホップを武器になり上がってきたという事実に基づいた、彼ららしいパワーと“全能感”に溢れていて、「歌う者も聴く者も、すべてがBAD HOPだ」と言わんばかりの疾走感を見せてきます。

個人にスポット

チェインで繋がる

BAD HOP初の全員参加ということもあり、まるでリレーをするかのように一人一人Verse(ヴァース、「独唱部分」のこと)を繋いで歌っています。

先述のMVを見ると、より一層わかりやすいのではないでしょうか。

この楽曲からBAD HOPを知ったという人たちにも、クルーの違いが覚えやすいかも知れません。

歌う順番としては、

[HOOK:YZERR]

 ↓

[Verse 1:Vingo]

 ↓

[HOOK:YZERR]

 ↓

[Verse 2:G-k.i.d]

 ↓

[Yellow Pato]

 ↓

[HOOK:YZERR]

 ↓

[Verse 3:Bark]

 ↓

[Tiji Jojo]

 ↓

[Benjazzy]

 ↓

[HOOK:YZERR]

 ↓

[Verse 4:T-Pablow]

 ↓

[HOOK:YZERR]

というようになっています。

意識して聴いてみてくださいね。

BAD HOPとしての本格的な活動開始から4年、改めてクルー個人個人にスポットライトを当てた演出に、痺れるし憧れる未来のラッパーがいるかも知れません。

尻餅つかずにしっかりとMVを見てみてください。

歌詞を追う

川崎の悪ガキ全開の歌詞

全力で悪ふざけをし続けているような、心底彼ららしいパワフルな歌詞を正面から食らって、衝撃を受けたBAD HOP初心者の人も多いでしょう。

それでは、歌詞を見ていきたいと思います。

Skrr skrr
サツより先に
Skrr skrr
マフィアが動き
また呼び出し
なるphoneが目覚まし
血で血洗い
しがらむ街
不良から学んだ
シノギに礼儀
ハマってたバリから音楽にチェンジ

出典: Kawasaki Drift/Produced by Riki

経歴を知ったあとにこの歌詞を見ると、なるほどと感じるとともに、どれだけすさまじい生き方をしてきたのだろうかと考えますね。

マフィアって……川崎にいるんでしょうか……?

今じゃ監視カメラの中
飛び出し
ステージの上写真を撮られてる
俺たち
アラ探しにHaterは必死
おがめときな画面越しに
先がねぇ 猿真似 だけのfake
つるまねぇ 全てが正夢
俺らは休まねぇ

出典: Kawasaki Drift/Produced by Riki

一時は少年院で過ごしたという事実を、悪びれなく見せつけているBAD HOPらしい歌詞は、たとえどんなどん底からでもやる気になれば這い上がれるというメッセージのようです。

きっとあのEMINEMにさえ引けを取らないであろうハードな過去を乗り越えたからこそ、今のBAD HOPとこのクルー達があるのは間違いありません。

早死にしたヤツらの供え
手を伸ばす浮浪者と同じDNA
俺ら隠せねぇ
毛並みからちげぇ
ミスりゃあとがねぇ
ガキの憧れ

出典: Kawasaki Drift/Produced by Riki

今のように、音楽でビッグになったと言えども、人種が変わったわけじゃない。

ほんの数年前まで、浮浪者と変わらない野良犬みたいな瞬間(とき)を過ごしていた過去があるからこそ、現在(いま)があるのだと言っているのでしょうか。

これからも先頭に立つ人間として、後に続く子供の夢を壊すようなみっともないことはしたくないという、強い覚悟が感じられるのがカッコイイと、大人から見てもよくわかります。

道は俺らが切り開くからお前らもついて来いよ!と背中で見せる漢気はさすがの貫禄です。

パンチラインはココ

今回の「Kawasaki Drift」一番のパンチラインは、多分ここだと言えそうです。

川崎区で有名になりたきゃ
人殺すかラッパーになるかだ

出典: Kawasaki Drift/Produced by Riki

ちょっと強烈過ぎる印象もある歌詞です。

けれどそこにあるのは、ヒップホップという「音楽」に対する思いに並べられる例えとして、「人を殺す」ほどの強い勇気や強さや心構えが必要だぞ、ということなのでしょう。

あえて美しくない言葉を選ぶことで、かえってBAD HOPの情熱と真剣さを感じさせられます。

彼らがもし音楽という道を選ばなければ、その溢れすぎた情熱で川崎区を、神奈川県を、日本全国を火の海に変えていたかも知れない……そんな気にさえなってしまいます。

そうなっていたら私たちも、ヒップホップだけでなく「音楽」そのものを聴くどころの話ではなかったかも知れないので、「音楽」がBAD HOPクルーたちのハートを射止めたことを感謝すべきなのでしょう。