ここでもっと時代をさかのぼるならば連想されるのはこの楽曲でしょう。
みきとPによる「小夜子」です。
歌唱は初音ミクによります。
筆者の体感ではこの「小夜子」から「さユり」、そして美波でした。
ニコニコ動画の動画投稿がされたときのタイムスタンプを確認してみました。
「小夜子」は2011年8月。
さユりの「ミカヅキ」によるデビューが2015年8月。
残念ながら現在ほとんどの動画が削除されていて、それ以前については不明でした。
美波についてもニコニコ動画にはメジャーデビュー以前の公式動画がなく不明。
これによって体感と事実が合っていたことが分かりました。
さユりの時代に動画サービスのトレンドがニコニコ動画からYouTubeへ移行したことも確認できました。
2010年代のインターネットには「メンヘラ界隈」というのがあったのだと思います。
精神的に病んでしまった人々はいつの時代でもいたでしょう。
この時代はそんな若者たちとインターネット文化が強く結びつきました。
やがてその頃に学生だったユーザーたちが大人になり社会人に。
そうしてそんな文化をそれぞれが卒業していくようなムーヴメントがありました。
ですので「小夜子」の時代より美波まで来るとより具体的になっている感があります。
よくわからない状態で対峙していた時代はとっくに過ぎ去っています。
「具体的な言葉」と「具体的なスタンス」で対峙している現代の若者たちの姿。
たしかに文化は錬成され、具体的で実践的な武器となったのではないでしょうか。
さて「カワキヲアメク」に話を戻します。
この曲はこれまでの美波の作詞センスが濃縮されているように感じます。
たとえば冒頭部分よりこの言い回し。
未熟 無ジョウ されど 美しくあれ
出典: カワキヲアメク/作詞:美波 作曲:美波
1曲を通して強いワードを叩きつけるように歌詞にしている感じがあります。
本来、漢字表記とするところをカタカナ表記にしていたりします。
こういった細かいところにも美波の歌詞へのこだわりを感じます。
これが前奏もなく頭から来るので曲に対する期待感が大きく膨らみます。
もういい
ああしてこうして言ってたって
愛して どうして? 言われたって
遊びだけなら簡単で 真剣交渉無茶苦茶で
思いもしない 軽(おも)い言葉
何度使い古すのか?
出典: カワキヲアメク/作詞:美波 作曲:美波
さらにこちらは、しっかりと韻を踏みながら進行するサビの歌詞です。
個人的にはラップ調に歌う4行目の最後の部分がお気に入りですね。
言葉自体も面白いですし、サビの強いメロディーのアクセントにもなっています。
5行目の言葉遊びも巧みです。
この他にも楽曲全体を通して美波の鋭い歌詞センスに驚かされます。
これで前半が終了!
順位に関係なくご紹介したすべての曲が名曲です。
アップテンポな曲もロ―テンポな曲もあります。
さらにダークな曲もあれば女性らしい恋愛を歌った曲もあります。
それが美波というシンガーソングライターの深みであり魅力となっています。
後半もそんな独特の魅力をもった美波の名曲がそろい踏みとなっていますよ!
後半戦の第4位~第2位の発表に移ります!
第4位『正直日記』
ロックナンバーが多い美波ですが、『正直日記』はアコースティックなしっとりとしたナンバーです。
そして一番の特徴は約7分半という長めの演奏時間でしょう。
不毛な人間関係に悩む「僕」が語り手となっている歌詞。
詳しい歌詞の解説についてはOTOKAKEに記事がありますのでご紹介しておきます。
美波【正直日記】歌詞の意味を解説!傍観している主人公の本心は?愛に傷ついたあなたに聴いてほしい一曲! - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
積極的に顔出しせず、存在が謎に包まれている若きアーティスト・美波。今回は彼女の1stミニアルバム「Emotional Water」から【正直日記】という楽曲をご紹介します。この曲はタイトル通り、正直な台詞混じりの言葉で綴られ、心震えるナンバー。ぜひ7分半の世界にじっくりと浸ってください。
ですがこちらの記事でも一ヶ所だけ気になった歌詞を引用させてください。
曲の後半部分からこちらの一節です。
本当笑えるよなぁ
綿埃みたいな言葉に犯されて
気付くんだ そして 人は
熱を知って 氷みたいな冷たい寒さを知って 二人を知って
出典: 出典 正直日記/作詞:美波 作曲:美波
惹きつけられたのは引用歌詞2行目の一文でした。
表面的な人間関係のなかで取り交わされる言葉を比喩しています。
この表現はなかなか見たことがありませんでした。
美波の歌詞センスを一番感じたところです。
この一つの比喩からいろいろな解釈ができるのではないでしょうか。
例えば、「綿埃」なわけですから重さはほとんどなく「軽い」ですよね?
軽薄な人間関係を表現するのにぴったりなワードだと思いませんか。
さらに言えば、簡単にゴミであると解釈することもできます。
ゴミだから掃除しなくてはいけない、それはなぜかといえば人体に有害だからですよね?
だからそのままにして無際限に曝されているとそれに犯されてしまうわけです。
ただの歌手でなくシンガーソングライターとしての素養がしっかりとあるな、と感じたワードセンスでした。
第3位『Monolouge』
自意識と闘うような激しい内面の歌ではなく、女の子らしいナンバーです。
夏休み、本当は少女漫画のように劇的なハッピーエンドを迎えたかった私。
だけどつい本音と逆の態度を取ってしまってうまくいかない…。
だから私の恋はモノローグで終わってしまうのだ、という曲です。
こういったガーリーな曲もあるのが美波さんの魅力だと思います。
たとえばアルバムで続けて聴くときにほっと安心できるような曲になっています。
夏で青春で恋がうまくいかなくて…なんて甘酸っぱい曲なんでしょうか。
残念ながら未発表の曲のようですので、今後に期待ですね。