「寒い夜が続きますが
君は元気にしていますか?」
まだ僕はふたりでいた日々から
全く抜け出せずにいる

出典: コンタクトケース/作詞:石原慎也 作曲:Saucy Dog

「君」に向かって語りかけるかのように、かぎ括弧付きの歌詞です。
しかし、括弧の中に入っているのは前半の2行だけ
後半、自分が「君」のことを忘れられずにいるということは、語りかけることすらもできずにいます。
どのみち「君」に届くことはないのにも関わらず、です。

空のコルクボードには
無数の小さな画鋲の穴
あれから随分写真も撮ってないな
テプラのシールがやたらと
しつこく貼り付いて
綺麗に剥がれてくれないよ

出典: コンタクトケース/作詞:石原慎也 作曲:Saucy Dog

本当に仲の良いカップルだったのでしょう、2人で過ごした日々の写真を飾っていたようです。
ですがそれも、今となっては名残だけになっています。
「あれから随分」という歌詞から窺えるのは、2人の関係が終わったのはある程度前の出来事だということ。
「僕」はもう、かなり長い間「君」への想いを断ち切れずにいるようです。

自問自答を繰り返す「僕」

なぁ教えてくれよ 君とふたりで
過ごした事には理由がいるのか?
なんか楽しくて なんか幸せで
それだけでずっといられる気がしていた

出典: コンタクトケース/作詞:石原慎也 作曲:Saucy Dog

この曲では、「僕」が彼女から別れを告げられた理由は明記されていません。
おそらく、「僕」自身にもはっきりとは分かっていないのでしょう。
だからこそ「僕」は、一緒にいたことには理由なんて無いんじゃないか?と自問自答します。
ヴォーカル・石原が張り上げる歌声は、泣いているかのようにも聞こえます。

愛し方がさ ひとつじゃないのは
当たり前なんだよ ありふれていたとしても
この日々はやがて昔話になるけど
決して嘘なんかにはならないよ
僕ら嘘なんかにはならないよね

出典: コンタクトケース/作詞:石原慎也 作曲:Saucy Dog

自分の愛し方が間違っていたのだろうか、いや、愛し方はひとつじゃないはずだ。
そんな風に自らを振り返る「僕」。
一緒にいたこと、別れたこと、そして彼女への未練を断ち切れないこと…どれもいつかは、過去の出来事になります。
嘘になることはないよね…と何度も繰り返す様子は、確認や自省というよりは「そうであってほしい」という願望なのでしょう。

君のコンタクトケースを
今でも捨てられずにいる
君の帰りを待っている

出典: コンタクトケース/作詞:石原慎也 作曲:Saucy Dog

再び、視点が「コンタクトケース」に戻ってきました。
彼女が洗面所に置いていったコンタクトケース。
いつの日か、何事もなかったかのように取りに帰ってくるのではないか…そんな想いを断ち切れぬまま、この曲は終わっていきます。

曲中に出てくるアイテムの意味は?

ここまで一通り、歌詞の解釈をお届けしてきました。
最後に、この曲に出てきた「コンタクトケース」「うさぎのテールみたいなピアス」の2つのアイテムに着目します。
それぞれのアイテムが持つ意味を考えると、この曲はより深みを持って響いてくるのです。

「コンタクトケース」

【コンタクトケース/Saucy Dog】儚げで美しいMVとは?!歌詞に迫る!ミニアルバムに収録♪の画像
この曲は「コンタクトケース」というアイテムから始まり、再び同じアイテムで終わっています。
視力の良い方にとって、コンタクトケースは馴染みのないアイテムでしょう。
中には「どうしてそんなものを置いていったのだろう?」「無いと困るんじゃないか?」と思った方もいるかもしれません。
実は(と言ってもコンタクトレンズを使用したことがある方ならご存知だと思いますが)、コンタクトケースはそもそも、それほど長く使うべきものではありません。
一般的なソフトコンタクトレンズの場合、衛生面を考えて、だいたい3ヶ月程度で新しいものと取り替えるべきとされています。
つまり「君」はコンタクトケースを忘れていったわけではなく、「どうせ交換しなきゃいけないし、ちょうどいいか」と意図的に置いていった(捨てていった)と考えることもできるのです。
曲の最後、「僕」はコンタクトケースを捨てることができず、いつか彼女が取りに来るのではないかと待ち続けています。
しかし彼女にとっては、「僕」もコンタクトケースもすでに必要ないものですから、決して帰ってくることはないでしょう。
いらないものだから置いていかれたんじゃないか…そう捉えると、「僕」の切なさがより際立ちます。

「うさぎのテールみたいなピアス」

【コンタクトケース/Saucy Dog】儚げで美しいMVとは?!歌詞に迫る!ミニアルバムに収録♪の画像
曲中にはもう一つ、彼女が「うさぎのテールみたいなピアス」を外して眠っていたことを回想する場面があります。
ふわふわとしたピアスを想像することができますが、このピアスが「僕」の部屋に残されているという描写はありません。
なぜなら、ピアスは彼女にとって捨てるべきものではなかったから。
今も彼女はきっと、そのピアスを愛用しているのでしょう。
あるいは、別の誰かの隣でピアスを外して眠っているのかもしれません。

まとめ