Flowerが歌う切ない桜ソング
春は名曲が生まれる季節
桜ソングにはたくさん名曲があって、もはやひとつのジャンルになっています。
森山直太朗の「さくら(独唱)」、いきものがかりの「SAKURA」、河口恭吾の「桜」などたくさんありますね。
思い浮かぶ歌を挙げていけばきりがないし、みなさんにも好きな桜ソングがあるでしょう。
桜の花が咲く頃はまだ少し肌寒くてポカポカ陽気はもう少し先のことです。
学校は卒業シーズン、会社では転勤もあって人生の節目を迎えるのがこの季節ですね。
また会えるならいいのですが中には二度と会えない人たちがいるかもしれません。
透けて見えるような薄いピンクの桜の花は儚げで、満開を迎えたと思ったらすぐに散ってしまいます。
哀しく切ない想いをしている人はヒラヒラと散る桜の花びらに自分の想いを重ねてしまうのでしょう。
南から北へと動いていく桜前線とともに日本中のあちこちで毎年たくさんの物語が生まれているのです。
そんな季節こそ歌にするにはふさわしく、たくさんの名曲が生まれてきたのも当然だと思いますね。
2012年にリリースされたFlowerの「SAKURAリグレット」は大ヒットとまではいきませんでした。
だけどじっくり聴いてみるとこれがとてもいい曲なのです。
Flowerの世界観を表す映像と音楽
雰囲気満点の美しいPV
まず「SAKURAリグレット」のPVをご紹介しておきましょう。
たいへん凝った作りの美しい映像と哀愁あふれる切ないメロディをお楽しみください。

大きな時計の針は時間を巻き戻すように反時計回りに動き出します。
きっとこの曲の主人公もあのときに戻れるのならと思っているのでしょうね。
散っていた桜の花びらも下から上へと舞い上がり、そこへ哀しげなピアノのイントロが…。
ピアノのメロディはまさに花びらが散る様子を表しているようで、歌が始まる前から見る人を惹きつけるのです。
ボーカルを担当しているのは鷲尾伶菜と武藤千春ですが、ふたりの声がまた素晴らしくいいですね。
この曲に限らずFlowerのPVはどれも綺麗で制作する側も力が入っているのが分かります。
どの楽曲の水準も高く彼女たちの世界観を表現するように努力しているのだなと思いますね。
ふたりで見る桜と、ひとりで見る桜
後悔を抱えたまま見る桜は…
桜に色づく目黒川 わけもなくずっと立ちつくしてる
去年はとなりに君がいた あの春をまだ終われないまま
出典: SAKURAリグレット/作詞:松尾潔 作曲:中野雄太
歌詞の最初に出てくる目黒川は東京の桜の名所として有名なところです。
具体的な地名が出てくると行ったことのある人や知っている人にとってはより感情移入しやすいかもしれません。
恋人とふたりで行ったことのある人ならばなおさらですね。
曲名にある「リグレット」は英語のregret、日本語で後悔という意味です。
ひとりで寂しく見る桜はどんなに綺麗でも心が落ち着くことはないのでしょう。
美しければ美しいほど切なさや哀しさは募るばかりなのでしょうね。
主人公はまたふたりで一緒にこの桜を見たかったはずです。
別れなければよかったという後悔を抱えたまま見る桜は残酷なくらい美しいのかもしれませんね。
あの穏やかな春はもう戻らないと後悔しているのです。
心は去年の春で止まったまま
舞い散る桜は終わった恋?
初めてのキスのあと ふたりは
ふるえたまま言葉さがした
ごまかすように 肩をよせたね 夕暮れまで
帰り道をなくして ただ 想い出をもてあます19時
君がいないこの街 気がつけば 桜色 all over
笑いかたをわすれて ただ さみしさを飲みこんだ20時
君がいたこの街じゃ 哀しみは舞い散る桜のようです
出典: SAKURAリグレット/作詞:松尾潔 作曲:中野雄太
ここはふたりの純粋な愛情を感じるロマンチックなシーンと、対照的に寂しさが募るひとりの夜を描いています。
家へ帰る気にもなれずライトアップされた桜並木の下を、あてもなくさまよい歩いているのかもしれません。
時間だけが過ぎて夜は更けてゆくのに自分ひとり。
ここはスマホで時間をちらっと見るよりも、腕時計を見るほうが雰囲気がありますね。
デジタルの時刻表示よりも少しずつ動いていくアナログ時計の針のほうが過去と現在をつないでくれそうです。
デジタルの数字よりも巻き戻せそうな時計の針のほうが主人公の心情にも合っているような気もします。
時計の針は先へ進んでゆくのに心が去年の春で止まったままだとしたら悲しいことですね。
主人公には舞い落ちる桜の花びらが終わった恋のように見えるのでしょう。