根強いファンを持つ人気ロックバンド「BUCK-TICK」の楽曲「堕天使」。
独特の世界観にあふれた彼らの新境地といえます。
曲全体に流れるギターリフが、ポリリズムを多用することにより、より一層の緊張感を醸し出しているのです。
繰り返されるギターのフレーズに乗せて語られる歌詞は、印象的かつ妖艶な歌唱法で聴く人に迫ってきます。
抽象的で短い歌詞の中で、彼らは何を表現しようとしているのでしょうか。
どうやら行間には多種多様な意味が含まれているようです。
韻を踏んだ愛のフレーズ
邦楽には、英語の歌詞に韻を踏む表現がよく使われます。
冒頭から繰り返される英語の部分も例外ではないようです。
私の愛とあなたの憂鬱(ゆううつ)
I know, you know 愛の呪文を
I know, you know 愛の悦びを
出典: 堕天使/作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿
冒頭の英語の歌詞。
「I」を「愛」に、「You」を「憂」に置き換えてみました。
楽曲の最初の部分。
直訳すれば「私は知っている、あなたも知っている」ですが、韻を踏むことでより深い意味になります。
主人公の愛する思いが強いほど、愛する人の憂鬱(ゆううつ)が大きくなる。
「know」は、そんな互いの気持ちが十分わかっています。
愛に縛られて止まることができないジレンマに苦しんでいるのです。
愛に縛られて身動きできない
英語の後に続く歌詞は、愛のすばらしさを表現しています。愛を体中に感じて、悦びを分かち合いたい。
そんな、儚い願いや憧れをいつまでも追い続けていたいのでしょう。
魔法にかかったように、愛に縛られても良いと覚悟しているのかもしれません。
愛がほしい
I want, you want 愛を身体中
I want, you want 愛を I want you baby
出典: 堕天使/作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿
同じように考えると、「愛」が「愛」を欲しがっていると表現できます。
皮肉にも「憂」も愛を欲しがっているのです。
自分の意志とは関係なく、愛が一人歩きして相手の愛を欲しがっている。
そう解釈すると、後に出てくる歌詞につながります。
わたしは誰?
出典: 堕天使/作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿
自分でもわからない自分。その正体は愛する気持ちではないでしょうか。
自分の感情でありながら、愛を支配できなくなっているのです。
「憂」が愛を求める意味も考えてみました。
主人公には、愛する人が憂鬱(ゆううつ)を感じているとしても、愛を求めてほしいという願望があると考えます。
あなたは誰?
出典: 堕天使/作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿
相手にも愛の一人歩きを要求していると思われます。
体から離れた純粋な感情同士なら、しがらみを脱ぎ捨て、夢中になってお互いを求めることができるのです。