自分の価値観だけが頼り

BUMP OF CHICKEN【ディアマン】歌詞を徹底解説!怖がりな少年はどんどん強くなっていき…?の画像

易々と気は許さないさ 紛い物ばかりに囲まれて
まぶたのこちら側で ずっと本物だけ見てる

出典: ディアマン/作詞:藤原基央 作曲:藤原基

少年の趣味はより狭くなります。

音楽を極めようとするとどうしてもそうなりがちなのです。

音楽市場に向けて手軽な商品として作品を届けるアーティストなどを否定しだします。

この好き嫌いは音楽という趣味だけに留まりません。

自分の周囲にあるものすべてに厳しい基準を課します。

打ち解けられる友人などいません。

誰かといるときでも目を閉じて、自分の信じる価値や信条を大事に世界と対峙

孤立感がより深まるでしょうが、少年は自分の正義に従っているという自覚に背中を押されます。

自分の価値基準に見合うような「本物」だけしか愛せません。

こうした傾向は少年が強くなった証でしょうか。

反面、失ったものも多いはずです。

友人など社会の接点になるような人々から遠く離れてしまったのでしょう。

健全な成長の姿ではないのですが、後にも引けないような状態に陥っています。

社会から孤立してゆく日々

自分の未熟さに気付こう

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大勢の人がいて ほとんど誰の顔も見ない
生活は続くから 大切な事だってあるから
情報が欲しくて ドアからドアへと急いで
心は待てないから どうせ雲のように消えるから

何も知らないんだ 多分 全然足りないんだ まだ

出典: ディアマン/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

少年は強くなる一方で社会生活を疎かにします

集団行動の中には極力加わらないように殻に閉じこもる毎日の繰り返し。

他人を大切にできないのと同様に自分の生活も捨て鉢になってはいないでしょうか。

社会での立ち位置がそろそろ決まってしまう年頃になります。

手に掴めない実体のない情報というオバケを追いかけてしまう。

自分もやがて消え去るだけではないかと観念してしまうのです。

知識や知見ではない情報というものを追っているだけでは何かを知ったことにはならないのに。

これでは成長も危ぶまれるよと藤原基央は注意を促すのです。

自分がまだ到らない存在であることに気付こうと歌います。

この想いは主人公の少年に向けたものだけではないはずです。

もっと普遍的に人類へと危機感を投げかけます。

他者への理解を失くしたから

自分の居場所も狭まった

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変われなかった少年 昔のようには笑えない
そういう意味では 変わったと言えるのかも
何に勝ちたいのか どんどん自分を強くした
解ろうとしないから 解ってくれなった

出典: ディアマン/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

ある種の少年は成長するごとに悲観的でニヒルな側面を肥大化させることがあります。

無邪気な子供の頃のようには笑えなくなるのです。

自分の笑顔に自信が持てなくなったりすることで、この症状を悪化させてしまう少年もいるでしょう。

負けん気の強さだけが取り柄なのですが、そのために他人との距離を測ることばかり考えてしまいがち。

ロック・ミュージックを好きでいることに固執すると社会からは浮いてしまいます。

自分の個性を貫こうとするがために他の人との折り合いをつけることを疎かにする。

その先に待っているのは世界からの孤立です。

孤独は人を強くしますが、それが社会からの孤立に結びついてしまっては強くなった意味もなくなる。

他者への配慮を疎かにする人に、この社会は居場所を与えません。

「ディアマン」の主人公はちょっと「こじらせてしまった」のでしょう。

ロック・ミュージックへの没入は実際にこうした事例を生みやすいのが残念です。

日本では特にその傾向が強いかもしれません。

中二病と呼ばれる症状と相関性があるように感じます。

ボーカリストは還ってくる

ギター・アンプの咆哮で元通り

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変われなかったシンガー 同じ事しか歌えない
それを好きだった頃の自分は きっと好きだった
5Wのアンプが 小さいながらも絶叫した
目を開けたら 全て側にいた 未だに

出典: ディアマン/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

好きだったボーカリストは結局変われないまま少年に歌を届けます。

若干、マンネリズムに陥ったようで新しいものには欠けるでしょう。

少年が布団を頭から被ってラジオの深夜放送に浸っていた頃なら好きであったような曲調にまた戻る。

少年はエレキ・ギターを爪弾いてみます

相変わらずの練習用の小さなギター・アンプが咆哮しました

まだ音楽への情熱は褪せていません。

その情熱に気付いたとき、世界をありのままに感じ取ることができたというのです。

懐かしい友だちがまた自分だけに語りかけてくれるよう。

音楽は人を裏切らないっていう確信に目を醒ますのです。

藤原基央の感動的な歌詞はここからクライマックスにかけてピークを迎えます。

他の誰にもなれなかった