さて、ここまででなんとなく故郷の様子が想像出来ました。

雪が降る地方であること。

そして冬には厳しい寒さが訪れる場所のようです。

そしてこの歌詞では、広々とした大きな空が表現されています。

さらには豪快に吹き抜ける風も。

電柱や電線などの遮るものが一切ない場所なのでしょう。

雄大に広がる自然が連想できます。

風が吹き抜けることから田畑が広がっているのでしょうか。

月並みな表現でいえば、「田舎」のようです。

数々の自然の営みが、間近に感じられる「田舎」。

そこでは大地や空の広さを肌で体感できるでしょう。

そしてその雄大さに、きっと心洗われるのです。

あたたかい気持ちになれる場所

楽曲のタイトルでもある【あの頃へ】という言葉

それが再びこの歌詞でも登場します。

ここではその時代をこう表現しているのです。

あたたかい あの頃へ

出典: あの頃へ/作詞:松井五郎 作曲:玉置浩二

これは、故郷を思い出すと心温まるということを示しているのでしょう。

実際のところ、これまでの歌詞だと寒々しい表現ばかりでした。

北国でありながら、物理的に温暖であるというのは矛盾します。

つまりここで意味するのは、気持ちの上での「暖かさ」なのです。

寒い地域ながらも、主人公はそこに確かにぬくもりを感じていたのでしょう。

周囲の家族、のびのびとした環境。

生活は決して豊かではなかったかもしれません。

それでもそこには確かに愛があったのでしょう。

主人公にとって故郷とは、思い出すだけで心温まるような場所なのです。

もう1人の存在

君の存在とは

君をいつか つれて行けたら

出典: あの頃へ/作詞:松井五郎 作曲:玉置浩二

歌詞の中で「君」という言葉が出てきます。

この人物は主人公にとってどんな人なのでしょうか。

主人公は自分の体験した過去へ、相手を連れていきたいようです。

つまり自分の田舎に相手を連れて行こうとしています。

このことから連想するに、この相手とは「恋人」ではないでしょうか。

結婚において、実家へ相手を連れて行くのは定番です。

「自分のふるさとを知ってほしい。」

「自分の幼少期の話をしたい。」

このような感情を恋人に抱くのは、至極自然なことでしょう。

ふるさとの景色を見せたい気持ち

夢だけで 終わらないこと
あといくつ あるのだろう

出典: あの頃へ/作詞:松井五郎 作曲:玉置浩二

しかしながら、当然その当時に戻ることは出来ません。

タイムスリップでもしない限りは無理な話ですね。

主人公は【あの頃へ】、相手を連れていきたいのです。

それはただ故郷に連れて行くだけでは叶いません。

ではなぜ、その場所に行くだけでは駄目なのでしょうか。

それは主人公の体験や思い出があるからでしょう。

主人公は、過去にこそ温かさや美しさを感じています。

つまり郷愁の念というものですね。

自分の過ごした過去の日々そのものが輝いて見えるのです。

つまり、景色を見せたいのはもちろんのこと。

しかしそれ以上に、その土地で暮らす暖かさや心の豊かさが重要だといえます。

きっと自分の原体験そのものを、恋人にも味わってほしいのでしょう。

あの頃とは

美しい情景に囲まれていた時代

あの星は あの雲は
いつも愛を 見つめてた

出典: あの頃へ/作詞:松井五郎 作曲:玉置浩二

それでは情報を整理していきましょう。

主人公の指す「あの頃」とは一体いつのことなのでしょうか。

それはおそらく、美しい景色に囲まれていた時代のことでしょう。

今のようにコンクリートや電柱が街を埋めていない時代です。

草や木、花、そして大きな空や大地を肌で感じられた時代ともいえます。

自然が身近に感じられ、空気の綺麗な時代です。

雄大な自然は時に猛威にもなります。

しかしそんなことよりも主人公にとっては、その美しさが印象的だったのでしょう。

輝く小川の水面や、風に凪ぐ草花などがあったかもしれません。

今は失われつつある景色が、当たり前にあった時のこと。

そんな昔の情景を主人公は懐かしんでいるといえます。