少し癖のあるあなたの声 耳を傾け
深い安らぎ酔いしれるあたしはかぶとむし
出典: カブトムシ/作詞:aiko 作曲:aiko
「彼の匂いが好き」に続きシリーズ第2弾。
今度は「彼の声が好き」「彼の声を聞くと落ち着く」です。
そんな女性もやはり多いのではないでしょうか。
ここで面白いのは「匂い」ではなく「声」という別の視点に切り替えて彼氏の頼もしさを表現していること。
彼氏を「樹木」に喩えると、このフレーズから夏の風に揺れてざわめいた音を立てる樹木とカブトムシが想像されます。
非常に爽やかかつ壮大であり、そんなどっしりした樹木に安心して身を預けているカブトムシという夏の風景です。
この夏の風景の中に男性に身を委ねて全てを預ける女性の美しく素敵な恋模様が読み込まれているのです。
表面上シンプルで大人しい言葉でありながら、とても味わい深く奥深い恋物語がaiko視点で紡がれています。
生涯忘れられない恋
琥珀
琥珀の弓張り月 息切れすら覚える鼓動
生涯忘れることはないでしょう
生涯忘れることはないでしょう
出典: カブトムシ/作詞:aiko 作曲:aiko
「琥珀」とは樹液の化石のことですよね。色味は黄金色をしています。
ただ単純に色を歌詞に盛り込まず「琥珀」と表現してしまうところがaikoらしいです。
さらに樹液というところからも「かぶとむし」に繋がりますし、琥珀の英名「アンバー」はアラビア語で「香気を放つ物質」が由来だそうです。
ここも1番のサビ「甘い匂い」に繋がってきます。
そして、月を「弓張り月」と表現するところにも文学的な一面が垣間見得ます。
そして、この胸のドキドキを「息切れすら覚える」と書いています。
息切れからはもうこれ以上ドキドキできないってくらいにドキドキを感じます。
こう書かれた方が聞き手もどんな風にドキドキしているのかが伝わりやすいと思います。
文学的な一面だけでなくちゃんと聞き手に伝わりやすい言葉選びも出来るところはさすがです。
そして、シメの「生涯忘れることはないでしょう」。
あなたと見る「琥珀の弓張り月」もこの胸のドキドキもやはり忘れることはできない大切な思い出なのです。
まとめ
主観と客観のバランス
メロディセンスはもちろんのこと、文学的な一面を備えつつ、まっすぐで健気な女性の気持ちをしっかりと表現できるaikoの歌詞は癖になります。
比喩を多用してはいますが突き放さず、しっかりと男性も女性も掴んでいく音楽を貫いている彼女に脱帽です。
そして何よりも「主観」と「客観」のバランスに優れた歌詞であるのが本作の白眉でありましょう。
総合してみると、女性の恋の葛藤を主観的に様々な言葉を駆使して表現しているように見えます。
しかし、それを最後に「カブトムシ」と男性側である樹木の視点を想起させる言葉を入れて相対化しています。
そしてそれらを「生涯忘れることはないでしょう」と俯瞰することで客観性を帯びさせているのです。
そういう意味では文学的な主観性と論理学的な客観性のトータルバランスが素敵な歌詞ではないでしょうか。
だからこそ、女性も男性も含む多くの人々の共感を呼び、魅了してやまないのだと推測されます。
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