とある街の小さな教会で 優しい長生きおばあさんが 眠りについた
ろくに動けなくなってからも 毎朝 何かを呟いて 微笑んだ

出典: Ever lasting lie/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

長い年月の果てに、女は教会で息を引き取ります。

歌詞の表現から随分と永く生きたようです。

年老いてからも彼女は男の嘘を忘れることなく、昔と同じ様に呟いていました。

女を最後まで支えてきたものが男の嘘であったことがここからも伝わってきます。

男は目的を忘れてもなお、夢を掘り続ける

砂の海で 折れたシャベルを持って 作り話の様な 夢を掘る人
刻まれた皺の奥の 瞳は未だ
必死で ただ 必死で
掘り出したのは?……
「Sir Destiny. アンタ、俺を見てるか
「もう飽きた」なんて 言わせないぞ
今にも 夢を掘り出して 見事悔しがらせてやる」
「Sir Destiny. 俺の夢って何だったっけ?
何が ここまで俺を動かしていたんだっけ?
大事な何かを待たせていた様な…」
夢を掘る人 それを待つ人
幾つもの夜を 乗り越えた嘘

出典: Ever lasting lie/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

男は年老いてもなお、昔と同じ様に砂を掘り続けます。

長く使ったシャベルは折れ、顔はもう皺まみれ。

彼の生きがいは「運命」との戦いになってしまった様です。

何故砂を掘っているのか、夢とは何だったのかも忘れてしまった男。

彼が砂を掘り続ける描写を最後に一つの嘘が生み出した物語は幕を閉じます。

それは叶うことがなかった約束、優しい嘘が繋いだ二人の男女の切ない物語でした。

嘘をついたのは誰だったのか

永遠の嘘

Ever lasting lie」。

everlastingは「永遠の」という意味を持つ言葉です。

では改めて、そんな永遠の嘘をついたのは誰だったのでしょうか。

それは前述した通り、待っていてくれと女に告げたです。

男は女の元に戻ってくることはなく。

女は死ぬまで男を信じ続けました。

男は女を助けることができなかった。

2人は再会して幸せになることもできなかったのです。

その点から言えば、男の言葉は嘘以外の何物でもありませんでした。

女に希望を見せて信じさせ、けれど二度と帰ってくることがなかった男。

その事実だけを見れば、ひどい嘘をついた存在です。

ですが本当に男の言葉は嘘だと言えるのでしょうか。

女にとってのその嘘とは

客観的な結論から言えば、男の言葉は嘘となりました。

男が大金を手にして女を助け、2人で幸せに暮らす。

2人が共に夢見た嘘は最後まで叶うことなく終わります。

そして女は、男の言葉が嘘に終わることも感じ取っていました。

それでも、愛を売る仕事をさせられる間もおばあさんになるまでの長い年月も。

女は男の言葉を信じ続けました

それが優しい嘘だと知っていて、です。

2人は大丈夫。信じて待っていてくれ。

その言葉を信じて、男を待ち続けたのです。

そして信じ抜いたまま、永遠の眠りにつきました。

叶わなかった嘘。

けれど最後まで信じ抜いた嘘。

ここで考えてみたいのです。

果たして、この言葉は嘘だったのでしょうか。

客観的には嘘だったとしても。

女にとっても、そして目的を見失った男にとっても。

この言葉は、嘘ではなかったのではないでしょうか。

女が信じて心の支えにしてきた約束。

それは女が生きている間に果たされることはありませんでした。

けれど女は信じ続け、待ち続けました。

大丈夫。明日を信じて。

その言葉は、確かに優しい嘘でした。

けれど女はその言葉をお守りのように呟き、信じることで長い人生を生き抜きました。

そんな女の生き方は、男の言った言葉そのもの。

男を信じる女の想いが、嘘を真実に変えたといえるのではないでしょうか。

嘘を真実に変えるのは自分自身

女が男を信じる想い。

それは結果的に、嘘だった言葉をひとつの真実に変えました。

女の男への想いは大切に消えることなく在り続けたのです。

優しい嘘は、最後まで信じ抜くことで真実へと変わった。

客観的な正しさではなく、信じる心の在り方で決まる。

グングニル」という1曲があります。

Ever lasting lie」と同じアルバム「THE LIVING DEAD」に収録されている1曲。

うさんくさい、誰も信じていない宝の地図。

それを信じてたった1人果てしない航海に乗り出す男の物語を歌った1曲です。

この「グングニル」でも「嘘を信じる」というテーマが描かれています。

初めは誰もが嘘だと思った宝の地図

けれどそれを一心に追い求める男にとって、それは嘘ではなく真実でした。

そしてその信念が周りの人をも動かしていくのです。

それと同じテーマが「Ever lasting lie」にも描かれています。

ひとつの物事が嘘か真実か。

それを決めるのは客観的事実でも、周りの人の意見でもない。

ただひたすらに、それを信じる人間の想いの強さ

それがある限り、どんな嘘も真実になりえるのです。

女にとっての男の嘘。

それは女が最後まで信じ抜いた、かけがえのない真実だったのでした。

おわりに

目的と手段のすり替え

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