つめたい雨が僕の目の中に降る
君の事以外は何も見えなくなる
それはいい事だろう?

出典: https://twitter.com/lovelyricbot/status/488739203778244608

行かなくちゃ 君に逢いに行かなくちゃ
君の町に行かなくちゃ 雨にぬれ

行かなくちゃ 君に逢いに行かなくちゃ
君の家に行かなくちゃ 雨の中を

行かなくちゃ 君に逢いに行かなくちゃ
雨にぬれて行かなくちゃ 傘がない

出典: https://twitter.com/lamp_de_lamp/status/654238563366629376

雨で傘がないのをいいことに会いに行くのをやめたいのに、会いたくないとはっきり言葉にするのは罪悪感があって言えないのでしょうか。――――暗い歌です。とにかく、どんな状況であろうが、自分勝手な考え方をさらりと言ってのけるのです。「社会問題なんかそんなの関係ない。とにかく君に、今は会いたくない。それを傘がないせいにして会いに行かない」といった感じですかね。

オダギリジョーが陽水に扮して出演しているPV。『傘がない』

評論家の語るこの楽曲のすごさは

この楽曲に関して語られるのは「ミーイズム」。ミーイズムとは自分の幸福や満足を求めるだけで他には関心を払わない考え方をいい、まさに自己中心主義のことです。

楽曲の発表される前までの激しかった学生闘争は、世論を分断するほど激しく盛り上がっていたのに、それに関わっていた人達のほとんどが「ミーイズム」にのみ込まれて、いつしか無関心になっていくのです。

この時代の「ミーイズム」というか、自分の抱えている問題と現実の社会問題との乖離(かいり;結びつきが離れること)を描いたというのなら、最初に思い浮かべるのは三田誠広の『僕って何』という小説です。学生運動の前後から1970年代の頃までの若者の心のゆらぎを感じとってもらえるかも。芥川賞受賞作品ですが、現代の若い世代には今となっては何となく歴史小説っぽい臭いがするものかもしれません。

当時はそのミーイズムなるものに取り込まれ、無関心・無感覚になっていく若い世代を初めて歌に表したということが画期的だとする向きもありました。

しかし、『傘がない』はある一定の時代にしか許容されない一発屋的な楽曲では断じてないのです。ほかに何かあるから引き付けられる。それは、この曲をカバーしているアーティストの層の厚さに表れています。

カバーしているメンツがすごい!

この曲、とにかく多くのアーティストがカバーしているのです。Wikipediaに明記されているアーティストだけでも14組がカバーしています。カバーアルバムに入ってはいませんが、何かの歌番組で中島美嘉が床にひれ伏す格好でこの曲を歌っていたのを見たことがあります。・・・・・・歌いたくなるのでしょうかね。 年代別に代表的なメンツを3組ほど挙げてみました。

オフコースもカバーしていた。

オフコース1974年、ライブアルバム『秋ゆく街で』に収録。小田和正井上陽水はほぼ同世代。この時は同世代の共有意識的なものがすごく強かったのではないでしょうか。

中森明菜もカバーしていた。

中森明菜この曲がかなり気に入っているのか、2003年の『歌姫3 〜終幕』以降、2004年に『歌姫 Complete Box Empress』で、2005年『Akina Nakamori Special Live 2005 Empress at CLUB eX』にカバー曲を収録しています。 さらに2007年の『歌姫ベスト 〜25th Anniversary Selection〜』にも収録し、とどめの一発として2014年リリースのカバーアルバム『オールタイム・ベスト -歌姫(カヴァー)-』にもしっかり収めています。

傘がない
中森明菜
Universal Music LLC

ダイアモンド✡ユカイもカバーしていた。

2016年にはダイアモンド✡ユカイ がアルバム『Respect III』でこの曲を収録しました。 このアルバムを作るに当たり、彼は”泣ける男歌の完結編にふさわしいもの”、”作詞・作曲・プロデュースの全ての面でリスペクトできるもの”、”自分に合った曲”の3つの観点から選曲したものだと、「『Respect III』 リリース・スペシャル・インタビュー」の中で語っています。

傘がない
Diamond Yukai
Universal Music LLC