春を目前にした雪解けの季節。

すぐそこまで迫った春を感じながら、主人公は「君」との別れを思い出していました。

別れ際、主人公と「君」とは約束を交わしていたことが語られています。

しかも再会を契るものではなく、あくまでも相手を思い出すというものです。

そのきっかけとしたものが『桜の花』でした。

このことから、お互いにいがみ合ったり、ネガティブなイメージで別れていないことが伺えます。

何かしらの理由で前向きに別れを選択したふたり。

その季節が桜の花が咲く頃だったということのようです。

早過ぎた出会い

つぼみと重なる思い出

まだ咲いてないあのつぼみは
まるで まるで あの頃にいた二人の様に

出典: 桜/作詞:yasu 作曲:ka-yu

時は経ち、季節は春へと移ろいます。

そしてついに約束の花が咲いてしまいました。

満開に花開く桜の中で、いくつか咲かずに身をひそめるつぼみの存在

そんなつぼみに自分たちを重ねてしまいました。

周りは恋を謳歌し、愛を育み、大輪の花を咲かせる中で主人公と「君」との恋愛はそうではなかったのです。

ふたりの思いに嘘はなかったのでしょう。

お互い思い合っていたことはおそらく事実だと思われます。

しかし、他の恋人たちとは少し異なる状況が、ふたりの関係に影を落として終止符を打たせたわけです。

ここでいう「影」とはいったいなんなでしょうか。

別れに至る理由とは

この曲がka-yuさんの実話を元にyasuさんが構築した歌詞であるということは前述の通りです。

では、ka-yuさんが、好きだった「君」と別れないといけない状況に陥る理由

それはおそらくデビューするために上京しないといけなくなったことによる離別であると推測できます。

Janne Da Arcは大阪で結成されて活動していたバンドです。

そんな彼らは1999年2月に東京において2000人規模のライブを成功させ、メディア露出も増え始めます。

その流れから4月に大阪でインディーズラストライブを行い、5月にメジャーデビューしているのです。

そうなると、居住地を東京に移したりするのは1998年後半から1999年1月頃の間と予測できます。

つまりは、冬の時期なのです。

そして、大阪や東京で桜が満開になるのは、だいたい3月中頃から下旬にかけて。

ちょうどこの曲『桜』で歌われる時期と重なります

これらの事実から、ka-yuさんは当時大阪で付き合っていた「君」を残して東京へと出てきたことがわかります。

メジャーデビューするとはいえ、このまま成功するかどうかもわからない。

そしてこれからどういう生活になるかもわからないという、全く不透明な将来に突入するところだったのです。

そんな不透明な状況に「君」を連れてくるわけにもいかないと判断し、別れる決断をしたのでしょう。

対する「君」もそこを押し切って付いていくという決断ができなかった

お互いに別れる以外の選択肢が選べなかったのだと思います。

活動拠点を東京に移し始める冬の間に別れを意識し始め、インディーズラストライブの約一ヶ月前。

桜が満開に咲き誇る時期に、「君」と別れたのだろうと思われます。

お互い望まない別れであり、お互いの幸せを願った前向きな別れだったのです。

忘れることなんてできない…

道ゆく人波の中 君の姿と重なる
栗色の長い髪に 僕は目を奪われ

出典: 桜/作詞:yasu 作曲:ka-yu

そんな切ない別れ方を経験した主人公はその季節が近づくとどうしても心がざわついてしまいます

似た人を見るだけで視線を奪われてしまうのです。

とはいえ、おそらく普通にしているときは心の整理がついているのだと思います。

それはなぜか。

その理由は、ふたりは前向きに別れたからです。

いつまでも引きずっていたのでは、お互いに示しがつきません。

主人公(ka-yuさん)も、音楽に集中しないといけない時期でした。

だからきっと心の整理がついていて、前を見て歩いているはずだと思います。

しかし、それでも桜の時期になるとどうしてもフラッシュバックしてくる「君」の姿。

そういう、ふとしたきっかけで蘇ってくるほどに愛していた存在。

それが「君」だったのです。

愛を教えてくれた人

忘れたことなんてなかった

まだ子供の様なあどけない瞳のままで
かけぬけた季節はあまりにも綺麗すぎて
人を愛する事 君が教えてくれたから
今でも君の笑顔が胸をはなれない

出典: 桜/作詞:yasu 作曲:ka-yu

別れたからの数ヶ月。

主人公の心にはいつも「君」の存在が残ったままでした。

しかしそれを糧に、自分の将来のために邁進しているのですからクヨクヨしているわけではありません。

これまで知らなかった「愛」というものを「君」と付き合うことで初めて知ることができた。

本当にかけがえのない存在として、心の支えになっているのです。

違う人生を歩む君を想う

これだけはわかっていて欲しい