あなたと一緒にいられる時間は、たったの5分。
その5分が、主人公にとっては何よりも大切で幸せな時間でした。
しかし、それも今日で終わり。
主人公は恋人と隔たりを作るように、右手にカバンを持ちます。
2人の間に流れる不穏な空気。
恋人は無意識のうちに口数が多くなっているようです。
けれど鈍感な恋人は自分の変化にすら気づかない。
そんな恋人のことを、主人公は最後まで愛おしく思っていたのかもしれませんね。
過去の自分に向けて言いたいこと
“あなたの為”
それを愛だと思って
“これが大人になる”
ずっとそう信じてきた
ねぇもういいよ
ねぇもういいよ
好きなままで
離れよう あなたから
出典: 哀図/作詞:ミオヤマザキ 作曲:ミオヤマザキ
「あなたの為」その言葉で、主人公はいったいどれだけのことを我慢してきたのでしょう?
あなたの為なら、傷ついてもいい。
あなたの為なら、本当の自分を殺してもいい。
主人公が注いでいた愛情は、どこか自己犠牲的なものでした。
恋人に不満があるのは、自分がまだ子供だから。
はやく大人になって、あなたと並んで歩きたい。
そんなふうに背伸びする気持ちもあったのでしょう。
「もういいよ」という言葉は、主人公が過去の自分に向けて言った言葉でもあるのかもしれません。
変わってしまったのは自分
肌が触れることよりも
ココロが繋がっていたなら
どんなことだって
平気だったはずなのに
変わってしまったのは私だ
だってあなたはいつも笑ってた
出典: 哀図/作詞:ミオヤマザキ 作曲:ミオヤマザキ
「変わってしまった」それはつまり、「気づいてしまった」とも言い換えられるでしょう。
自分たちが上手くいかないこと。
自分の愛情が間違っていたこと。
そして、自分が無理をしていたこと。
それらに気づいた主人公は、恋人よりも自分自身を責めているようです。
気づかないままでいられれば、もう少し幸せな時間が続いたかもしれない。
何も気づかず笑っている恋人の姿が、主人公の胸を締め付けます。
届かない“哀図”が切ない
あなたに言いたかったこと。
あなたにしてほしかったこと。
今さら言っても遅いと分かりながら、それでも主人公は考えずにはいられません。
ちゃんと自分の気持ちと向き合っていたら、結果は変わっただろうか?
そんな後悔もあるのでしょうね。
もう苦しい想いはしなくていい
あなたにずっと変わって欲しかったの
たまには「好き」て言って欲しかったし
“気遣うこと”
“あなたの為”
それは愛でも何でもないんだね
ねぇもういいよ
ねぇもういいよ
好きなままで
出典: 哀図/作詞:ミオヤマザキ 作曲:ミオヤマザキ
主人公は恋人に”好き”の一言も言ってもらえなかったようです。
それでも我慢するのが「あなたの為」だと思っていた。
常にあなたを気遣って、自分の気持ちには蓋をする。
そんなのは愛じゃない。
恋人に対して抱いていた感情が愛ではないと気づいたとき、主人公は急に肩の力が抜けたのかもしれません。
今まで抱え込んでいたものが無くなり、口を衝いて出た言葉が「もういいよ」だったのではないかと思います。
もうこんな苦しい想いはしなくていいんだ。
きっと主人公の心はすでに限界を迎えていたのでしょう。
SOSを送ったのに...
肌が触れることよりも
ココロが繋がっていたなら
どんなことだって
平気だったはずなのに
“私の哀図”届かないまま
きっと変わらない明日に手を振るよ
出典: 哀図/作詞:ミオヤマザキ 作曲:ミオヤマザキ
タイトルでもある「哀図(あいず)」はその漢字からも分かる通り、主人公のSOSだったのでしょう。
自分が苦しんでいること。無理をしていること。
主人公は最後にそれを「哀図」、すなわち「合図」にして恋人に送りました。
しかし恋人はやはり何も気づきません。
主人公の「哀図」は、「また明日」と手を振っただけに見えたのかも。
最後まで通じ合うことのできなかった2人。
そのことに気づいているのも主人公だけというのが、余計に切ないですね。
あなたと違う道を歩いていく
すれ違ってばかりだった2人。
分かりあえない虚しさを抱きながら、主人公は恋人と違う道を歩き始めます。