一つだけ願いが叶うとしたならば
「いくつでも叶いますように」
僕はそういう人です
だけどもできたよ こんな僕にでも
たった一つの願い事
この僕のと君のがなぁ
同じならいいのになぁ
少しずつ世界は 変わっていくけれど
変わらぬものを見ようとして それはそれで幾つもあって
出典: メルヘンとグレーテル/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
「一つだけ願いが叶うとしたならば」と言われたら 「いくつでも叶いますように」 という「願い」を一つ言うようなひねくれた性格の「僕」。
自分でそう自己分析している「僕」ですが「君」と出会って「たった一つの願い事」を抱き、その願いが「君」と「同じならいい」という歌詞。
その「たった一つの願い事」とは「僕の願いはたった一つ 昔のあなたと一緒に いつまででも話し 笑いあいたい」ということでしょう。
「変わっていく」「世界」の中で「変わらぬもの」、それは「僕」の想いであり、「君」も「昔のあなた」のままでいいということなのでしょう。
世の中が変わって、自分も成長して少しずつ変わって、自分を取り巻く環境も変わって行くと、自分を見失いそうになります。
変わって行く中でも、変わらない本質のようなものを見抜いている「僕」だからこそ「君」を好きになった。
そして、「君」も本来の自分を取り戻し、「僕」のことを信じることができたのですね。
「君」と「僕」という言葉に新たに付けた「意味」
「君」と書いて「恋」と読み 「僕」と書いて「愛」と読もう
どこかの誰かが いつか決めた意味に迷わぬように
「人」と書いて「嘘」と読み 「嘘」と書いて「人」と読む
こんな時代だからこそ見える意味を なくさぬように
出典: メルヘンとグレーテル/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
この部分が「ふたりごと」から来ている歌詞ですね。
「君」が「恋」で「僕」が「愛」なら一緒にいるだけでそこには「恋愛」があるとしたら、ずっと一緒にいられるということですね。
「恋」だけでは激しいながらも心許ない、「愛」だけでは深く大きくても忘れてしまうこともあるから、両方が欲しいということでもあるのでしょうか。
また、「人」と書いて「嘘」と読むような、誰も信じられないような「時代だからこそ」、「僕」は「見える意味」も無くさないと言っているのですね。
なかなかこの感覚を伝えるのは難しいのですが、「ふたりごと」で「君」の両親が失っていった挨拶も「見える意味」。
「君」が自分のことを「愛の証」と言ったのも、「愛」という見えないものを「見える意味」として伝えたかったからと解釈できますね。
つまり、この歌詞も「ふたりごと」から続いていて、自分は見えるものも見えないものも大切にする、君を不安にさせないと言っているのでしょう。
見えない意味だけでも、見える意味だけでも、足りないから
「君」は7画で 「僕」は14画で
恐いくらいよく出来てる
僕は僕の半分しか
君のことを愛せないのかい
日曜がお休みで
3の次は4で
このメロディーは
ド・ミ・レ・ド・ド
決まりきった世界で 僕はちゃんと生きてるよ
だから一つくらい僕にだって 決める権利は僕にだって
あるでしょう?
出典: メルヘンとグレーテル/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
前の歌詞で「見える意味」を大切にしたいと言った「僕」でしたが、逆にそれだけだと「僕」の本意ではないということを明かすのがこの部分の歌詞です。
例えば、文字だけでいうと「「君」は7画」で 「「僕」は14画」で「僕の半分しか君のことを愛せない」ことになってしまう。
全身全霊をかけて「君」を愛していると伝えたい「僕」にとっては不都合な話ですね。
また、「日曜がお休みで 3の次は4で このメロディーは ド・ミ・レ・ド・ド」とこの世界は「決まりきった世界」だという「僕」。
しかし、曜日や数字の順序、音階など、「僕」も「決まりきった世界」に従っているんだから「一つくらい」新しい意味を決めてもいいだろう。
そうやって「僕」が定めたい新しい意味が、この後に続く歌詞ということですね。
「君」と書いて「恋」と読み、「僕」と書いて「愛」と読むということ
「君」と書いて「恋」と読み 「僕」と書いて「愛」と読もう
どこかの誰かが決めた決まりに惑わされぬように
「人」と書いて「嘘」と読み 「嘘」と書いて「人」と読む
こんな時代だからこそたやすく 僕は君を見つけた
「君」と書いて「恋」と読み 「僕」と書いて「愛」と読もう
どこかの誰かが指す道しるべに 流されぬように
出典: メルヘンとグレーテル/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
「君」と書いて「恋」と読み 「僕」と書いて「失」うとは読ませやしないよ
だって だって だって
「君」と書いて「恋」と読み 「僕」と書いて「愛」と読もう
どこかの誰かがいつか決めた意味に迷わぬように
いつか 今ここで決めた意味が当たり前になるように
出典: メルヘンとグレーテル/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
誰も信じられないような「こんな時代」だからこそ、「僕は」たったひとり信じるべきだと思える「君を見つけた」。
だからこそ、社会のルールや常識よりも、「君」を信じて、「君」とともにあり続けることを示したいのですね。
そこで「僕」が決めた新しい意味が、「君」が「恋」、「僕」が「愛」。
「僕」と「君」ではこの世界からすればただの個人と個人でも、二人そのものが"恋愛"ならば誰にもきっと邪魔されないということでしょう。
そして、一度決めたからには、「君」が「恋」し続けてくれているのに、「僕」だけが変わって愛を「失」うなんてことは一生ない。
「今ここで決めた意味が当たり前になる」くらい長い時間、つまり、一生をかけて「君」への愛を証明し続けるということですね。
おわりに
「もしも」、「さみしい僕」、「ふたりごと」という3曲の歌詞が紡ぐ背景を解説した上で、「メルヘンとグレーテル」の歌詞を解釈しましたが、いかがでしたか?
そこには「僕」を振った「君」の背景である心の傷と、それを克服して二人が付き合うことになっていくストーリーがありましたね。
また、タイトルの意味も、この物語から推測することができます。
グリム童話の「ヘンゼルとグレーテル」でも「ヘンゼル」が男の子であることからも曲名の「メルヘン」の部分が「僕」を指していると考えるのが妥当でしょう。
そして、「メルヘン」の概念の基となったグリム童話の特徴の一つとして、ヒーローとなる人物は弱く貧しい人物(動物)であることが挙げられます。
つまりこのタイトルには、おとぎ話の世界のように、「君」に夢中の「周りの人」の中の一人だった「僕」が最後は「君」を救う。
そして、「ヘンゼル」を「グレーテル」が助けたように「君」も「僕」を救ってくれた。
そんな二人の関係性が表現されていると言えるのではないでしょうか。
考えれば考えるほど深い野田洋次郎さんの歌詞の世界。
その才能が詰め込まれた歌詞でした。
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