あの娘の元へ今すぐにでも走って行きたい!
と、思うけど、行動に起こせないのが14歳。深夜3時に家を出るわけにもいきません。
あえなくあの娘の唇ではなく、自分の布団のシーツに飛び込みます。
でも、あの娘の笑顔は頭から離れない。
むしろ、会えないとわかるとどんどんその笑顔が大きくなってくる。
振り払おうと思っても、頭から離れない。
14歳の小さな心があの娘の笑顔で破裂寸前になってしまいます。
稚拙だけど必死な言葉
あなたが欲しい!
誰かが どこかで 祈ってる
「神よ どうか 私の大事な人に伝えて欲しい」
それは
アイ ウォント ユー ユー ウォント ミー?
アイ ニード ユー ユー ニード ミー?
出典: ラブメッセージ/作詞:岡村靖幸 作曲:岡村靖幸
ただただ思い悩むしかできない少年にとっては、神に祈るしか術はありません。
どこかの誰かがしているように、少年もいるかどうかもわからない神に対して祈ります。
「あなたが欲しい あなたは僕が欲しい?
僕はあなたが必要だ。あなたは僕が必要?」
少年は必死に心の中で叫びます。
ここであえてカタカナ表記をしているところにも注目です。
「I want you」なんていう流暢な英語ではありません。
14歳の習いたての英語で必死に叫びます。
カタカナ表記からはそんな純粋な幼さが読み取れます。
しかし、同時に恋に対する必死さも伝わってきます。
背伸びをして、英語で恋心を叫ぶ。
あの娘に聞かれたときに少しでもかっこいいと思ってくれるように。
現実から逃げ出したい…
何故泣けるの? グッと堪えてるの?
パラシュート絡まったら 真っ逆さまに落ちるだけじゃん
現実と対峙してりゃ 色々感情湧くこともあるよね
誰か助けてって
出典: ラブメッセージ/作詞:岡村靖幸 作曲:岡村靖幸
少年の心の中にはいろんな感情が湧き上がります。
あの娘に対する恋。あの娘に対する欲望。
もし、自分があの娘に必要されてなかったらどうする?
もし、自分の片想いだったら?
欲望と期待と不安が入りじまったもののせいで、少年はもがき苦しみます。
あの娘と一緒にいられない、という現実に立ち向かっているとこんな苦しみを味わうのです。
もし、これがパラシュートだったらどうでしょう。
もし、少しでもパラシュートの紐が絡まれば、地面に向かって真っ逆さまに落ちてしまいます。
少年の感情もいろんな箇所が絡まっています。
しかし、少年は真っ逆さまに落ちてはいかない。
本当なら落ちてしまった方が楽かもしれない。
落ちてしまえば、苦しまなくて済むから。
少年は紐が絡まりながらも、落ちることなく、あの娘を求め続けるのです。
ついにあの娘のもとへ!
駅から10分 電車から降り ソワソワするさ
電信柱の 剥がれかけた 紙のような気分さ
頼む! 頼むから今度
星座達よ 僕にチャンスをどうか
出典: ラブメッセージ/作詞:岡村靖幸 作曲:岡村靖幸
ついに少年は意を決して、あの娘のもとへ向かいます。
電車に揺られている少年の心の中にはどんな波が押し寄せていたのでしょうか。
自分が電信柱に貼ってある、色褪せてしまったポスターのような頼りない存在に思えてくる。
しかし、想いをぶつけなければならない。
夜空に浮かぶ数々の星座の後押しを受けて、あの娘のもとまで走っていくのです。
走っているから心臓の鼓動が高鳴るのか、それとも恋心ゆえのドキドキか。
少年は複雑な心境で夜の街を駆けるのです。
このときの経験が、曲の最後の歌詞に繋がっていきます。
想いを伝えに行った少年の心情は、人生においてどんな意味を持つのでしょうか。
人生の中で大切なものは
最高の恋の存在
君がいた青春は あの頃のまま輝ってる
いつまでも人生は きっと 大事なのは最高の恋
アイ ウォント ユー ユー ウォント ミー?
アイ ニード ユー ユー ニード ミー?
出典: ラブメッセージ/作詞:岡村靖幸 作曲:岡村靖幸
ここでテーマが一転します。
今までは思春期の純情を描いてきましたが、ここで「いた」という過去形が飛び出します。
時間は過ぎて、大人になった、なってしまった少年。
少年は、あの娘に想いを伝えられたのか。
伝えた結果、結ばれたのか。それはわかりません。
そして、結ばれたか結ばれていないかは、重要ではないのかもしれません。
あの娘の笑顔を真剣に想っていたあの頃の時間はいつまでも輝いているのです。
中学生・高校生のときに経験した恋愛はいろんな意味で輝いて見えませんか?
嬉しいことばかりではないし、むしろ恥ずかしいこととか苦しいことばかり覚えている。
でも、その経験が人としての成長にとっては非常に重要な役割を持っているのです。
挫折と苦しみは人を大きくします。
恋心が大きければ大きいほどその苦しみは大きくなる。
でも、苦しみが大きければ大きいほど、輝いて見えるものなのです。
そして、「あなたが欲しい!」と繰り返す。
過去の時間の中にいる、美化されたあの娘は永遠に生き続けるのです。