中森明菜【飾りじゃないのよ涙は】
記念すべき10枚目のシングル
1982年にシングル【スローモーション】で華々しくデビューした中森明菜。
それよりも少し前にデビューした松田聖子と共に、80年代を彩ったアイドルとして伝説的存在となりました。
そんな彼女のデビューから2年後の1984年。
記念すべき10枚目のシングルとしてリリースされたのが【飾りじゃないのよ涙は】です。
彼女のシングル曲の中では、第3位の売上を記録。
14年ぶりに紅白に出場した際にもこの曲を歌っています。
ファンにとっても、本人にとっても、思い入れのある曲と言って間違いありません。
また、この曲は1988年・1998年・2008年・2014年にもアレンジを加え、再販売されています。
それぞれの時代で曲の雰囲気も違い、彼女の変化した歌声も楽しめるようになっています。
作詞・作曲は井上陽水
【飾りじゃないのよ涙は】の作詞・作曲を担当したのは、自身もシンガーソングライターとして活躍する井上陽水。
彼が描く歌詞は、まるで1つの小説を見ているかのようなストーリ性を持ちます。
それは、この曲でも例外ではありません。
彼の才能が十分発揮されているのです。
この曲は、簡単には涙を流さない強さと純粋で繊細な部分を合わせ持つ女性を描いた作品となっています。
この2人のタッグについてWikipediaではこう書かれています。
『CDジャーナル』は中森の「飾りじゃないのよ涙は」について「井上陽水と中森明菜の幸福な出逢いは、日本の歌謡史に残るほどの歴史的な名曲を作り上げた。」と批評した。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/飾りじゃないのよ涙は
私は泣いたことがない
恐いもの知らず
私は泣いたことがない
灯の消えた街角で
速い車にのっけられても
急にスピンかけられても恐くなかった
出典: 飾りじゃないのよ涙は/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水
歌い出し、歌詞の中にいる女性が語り出します。
夜道を歩いていると、ナンパでもされたのでしょうか。
女性が不良と呼ばれるような男性の車に乗った場面が想像できます。
すると、思いもよらず車のスピードが出ていることに気づきます。
それどころかカーレースのようにスピンをかける車。
普通の女性だったら恐くて、「今すぐ降ろして!」と泣いてしまいそうです。
しかし、この女性は泣きません。
我慢しているのではなく、ちっとも恐くないのです。
そのクールな様子には、カッコ良さよりも少し危うさを感じてしまう程。
何故、彼女はそこまで冷静でいられるのでしょうか。
過去を振り返ったりしない
冷たい夜のまん中で
いろんな人とすれ違ったり
投げKiss 受けとめたり投げ返したり
そして友達が変わるたび
想いでばかりがふえたけど
私泣いたりするのは違うと感じてた
出典: 飾りじゃないのよ涙は/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水
ここでは過去の出会いについて描かれています。
女性は、いわゆる夜遊びが得意なのかもしれません。
だからこそ、夜の街には仲間がたくさん。
親友になった友達、喧嘩して別れた友達、一度は恋人関係になった人…。
女性の頭の中で、そんな思い出が蘇ります。
きっともう会えなくなった人もいるのでしょう。
夜の中で一人黄昏ていると、涙が出そうにもなります。
でも女性はここでも冷静にグッと泣くのを堪えるのです。
「別れた人たちは自分にとって本当に泣くほど必要だったのか?」
そんな風に女性は考えてしまったのかもしれません。
ここで泣いてしまったら、それは自分のエゴ。
簡単には涙を流さないようにする女性の強さに心打たれます。