メガ・ヒット曲「地獄へ道づれ」

温厚なジョン・ディーコンの裏の顔?

クイーン【地獄へ道づれ】歌詞の意味を和訳&解説!孤独に戦う男の過去とは?緊迫感のある世界観を楽しもうの画像

1980年6月30日発表、クイーンの通算8作目のアルバム「ザ・ゲーム」。

このアルバムに収録された「地獄へ道づれ」は1980年8月22日にシングルとしてリカットされます。

この「地獄へ道づれ」が英米チャートで最高1位を記録

売上枚数も全世界で700万枚ものセールスを記録してクイーン史上最大のものとなるのです。

しかし「ザ・ゲーム」しかり「地獄へ道づれ」しかり、クイーンらしからぬサウンドには賛否がありました。

メンバーのロジャー・テイラーもこの曲には難色を示したという逸話があります。

マイケル・ジャクソンが「地獄へ道づれ」をシングル・カットしないなんてあなたたちは狂っている。

そんなことをロジャー・テイラーに進言したといわれます。

ただし、このときもロジャー・テイラーは「あの曲は絶対にヒットなんかしない」と言い返したとか。

そんな多難な歴史がある「地獄へ道づれ」ですが上述のようにメガ・ヒットになるのです。

以前から黒人音楽、特にファンク・ミュージックへの造詣が深かったジョン・ディーコン

静かなるベーシストの会心の一撃となりました。

これほど穏やかな人物はいないと思わせるジョン・ディーコンですが歌詞を見るとかなり物騒です。

ハードボイルド小説のようなこの曲の歌詞和訳しながら解説いたします。

クイーンもディスコに挑戦

メンバーは困惑しながら

クイーン【地獄へ道づれ】歌詞の意味を和訳&解説!孤独に戦う男の過去とは?緊迫感のある世界観を楽しもうの画像

Oh, let's go
Steve walks warily down the street
With the brim pulled way down low
Ain't no sound but the sound of his feet,
Machine guns ready to go

出典: 地獄へ道づれ/作詞:John Richard Deacon 作曲:John Richard Deacon

印象的なベース・ラインはHIP HOPグループのサンプリングに使われたりしています。

映画「ボヘミアン・ラプソディ」ではジョン・ディーコンが弾き出すベースメンバーが困惑。

「ディスコなんてやってられない」

そんな雰囲気が漂う中でジョン・ディーコンが尚も弾き続ける内に「いいリフだな」と囁きあう

そのままジャム・セッションのように曲ができるというストーリーでしたが史実は違うようです。

ブライアンやロジャーの好むハード・ロックではないと謙虚に引き下がるジョン。

しかしフレディ・マーキュリーがこの曲を強く推奨したと云われています

事実、ロジャー・テイラーはこの曲を長い間、評価していませんでした。

ロック・バンドがディスコ・ムーブメントに乗っかるのはかのローリング・ストーンズが代表的。

「Miss You」などが象徴的ですが当時は賛否が分かれたものの今ではロックの古典になっています。

クイーンがディスコに挑戦したことも賛否が分かれました

喧々諤々の議論が交わされたのですがチャート・アクションの方が正直です。

全米・全英No.1、アメリカではブラック・コンテンポラリー・チャートでも最高2位となります。

結果、クイーン史上で最大のセールス。

アルバム「ザ・ゲーム」はクイーンにとっては禁じ手だったシンセサイザーを導入。

また先行してロカビリーに挑戦した「愛という名の欲望」の大ヒット。

しかしクイーンに良質なハード・ロックを求めていたオールド・ファンはこの辺りで離れていきます。

それでも大冒険であるファンク、ディスコ・サウンドへの挑戦は新しいファンを獲得しました。

アルバムの売上もクイーンの歴史の中でNo.1です

静かなる男・ジョン・ディーコンが一旗揚げました。

歌詞和訳してみます。

ハードボイルド小説の世界観

「さあ、いくぜ

スティーブは用心しながら街を歩く

帽子のつばを下げて目深に被って

彼の足音しかしない

いくつものマシンガンがいつでも発砲できるのさ」

クイーンの中でもとびきり温厚なキャラクターのジョンの作詞とは思えない不穏さがあります

ただの銃ではなく銃弾を連射できるマシンガンですからもっと物騒です。

しかし不安を誘うベース・ラインにフレディの抑制したボーカルが加わると心躍ります

探偵小説やハードボイルド小説のような物語が展開される。

歌い出しの時点でドラマが既に始まっているのは見事です。

ジョン・ディーコンは信念の人

銃社会ではリアルに響く

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Are you ready, hey, are you ready for this?
Are you hanging on the edge of your seat?
Out of the doorway the bullets rip
To the sound of the beat

出典: 地獄へ道づれ/作詞:John Richard Deacon 作曲:John Richard Deacon

日本語がロックの音に乗るか? という論争がかつてありました。

この歌詞のように原詩の音の響き具合を聴き遂げるとロックの共通言語は英語かなと思わされるものです。

それでも歌詞を和訳しました。

「準備はできている? よう、この事態に準備はできているか?

お前は死の淵にぶら下がっているよ

ドアを出れば 弾丸たちが切り裂くような

強烈なビートの音が響くぜ」

ハードな歌詞です。

とても「マイ・ベスト・フレンド」と同じ作者とは思えません

温厚なジョン・ディーコンですが信念の方は熱く頑固であったのかもしれません。

フレディ・マーキュリーの死後は殆ど隠遁状態です。

フレディ以外のボーカリストは考えられない

そう言い切ってブライアンやロジャーとも音信不通だそうです。

誰も死の準備など普段の生活の中ではできないもの。

通りを歩くだけで危険に晒される都市は近年少なくなっています。

それでも1980年はアメリカ合衆国などではリアルな感触があったのかもしれません

アメリカ合衆国では現在も銃での大量殺人事件が起こっています。

銃規制を望む声は年々大きくなっていますが全米ライフル協会と癒着する政治家がその想いを阻むのです。

「Bite the dust」というスラング

邦題の変遷

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Another one bites the dust
Another one bites the dust
And another one gone, and another one gone
Another one bites the dust
Hey, I'm gonna get you, too
Another one bites the dust

出典: 地獄へ道づれ/作詞:John Richard Deacon 作曲:John Richard Deacon